6月29日（日） 2008 J2リーグ戦 第23節
甲府 0 - 4 湘南　（18:33／小瀬／7,267人）
得点者：6' 阿部吉朗（湘南）、32' 田村雄三（湘南）、83' リンコン（湘南）、85' リンコン（湘南）
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小瀬が泣いた。連勝を期待した試合は惨めに濡れそぼった。

草津戦（第18節、●1−2）で地に落ちた甲府は、次の広島戦からハードワークで再び立ち上がった。昇格を言える順位ではなかったが、その後の3試合はもう一度期待して共に戦う気持ちになることが出来た。原点に戻ることで軸が出来たし、立ち位置も決まった。しかし、その立ち位置が根本から揺らいだのが今節の湘南戦。

立ち上がりから前への圧力を出せない甲府と前節の山形戦以上にセカンドボールを積極的に狙いに来る湘南。それは中盤の潰し合いの展開という形になっていく。そして、甲府の選手の身体の奥に眠っている「パス病」が活動を再開する。今季一番の勢いで。スタジアム中に「迷ったら前」というバナーをベタベタと貼り付けないと自己修正することが出来ないのか。横と後ろのパスばかりで、ボールを持たされているパス回しに終始する。FWからしてみれば、動いてもボールが出ない状況になり、下がって貰いに行くようになる。中盤より後ろの選手はそれを見て、「もっと前で裏に走れ」と苛立ちながら要求する悪循環。声が大きい中盤が、パスの出し所がないことを正当化して、動き直してボールを貰おうとする若いFWは萎縮する。

6分に凡ミスで、平塚から来てくれたグリーンのサポーターに1点をプレゼントし、32分にはボールと芝生が一緒に飛んでいくミドルシュートを田村に決められて、もうすぐ始まる有名な平塚の七夕祭りを盛り上げるのに一役買ってしまう。本当は、左サイドバックに入った杉山がアジエルをマークして、右サイドバックに入った石原が逆サイドからセンターバックのカバーをするはずだった。しかし、そんなことは関係ない形での2失点。対策をする以前の問題。対策するなら自分たちのサッカーを発揮してからにしてほしい。

後半は杉山と石原のポジションを入れ替えて、本来のポジションでスタート。10分間ほどは甲府らしさが戻ってきた。湘南のシュートがバーに嫌われる幸運もあり、次の1点を取ればグリーンのサポーターに肩を落として帰ってもらうことも出来た。しかし、60分に美尾から林に繋がった決定的なチャンスに、運は味方してくれなかった。お互いに選手を入れ替えて次の1点を狙いに行くのだが、有効だった甲府の交代は美尾だけ。木村もジョジマールも流れを変える能力はなかった。83分にリンコンに3点目を取られるとメインスタンドのお客さんの帰宅スイッチが入り、85分にリンコンに4点目を取られるとゴール裏のサポーターの諦めスイッチが入る。歌う気力がなくなる壊れた試合。雨が上がっても甲府の空に星は輝かない。

世界の果てまでパスを回しながら行けると思っているのか、前を向いてドリブルで仕掛けることが山梨の条例で禁止されているのか、連敗という代償で得たものが失われた甲府。J2を甘く見た結果。相手のレベルが下がると思って細かい部分を要求しても、それに応えられない選手。逆境でもしたたかに戦える増嶋（京都）を移籍させて今季に臨んだ自信は、自分たちの選手に対する過信だったと言われても仕方がない。戦術云々を言うような内容ではなかったが、3トップの限界でもあった。サイドでクローズを作って局面を突破できない、ウロウロしたパス回しではサイドバックとウィングの距離が離れ過ぎて何も出来ない。その距離をドリブルや正確なミドルパスで解消できる選手もいない。かと言って2トップなら解決できる問題でもない。猫道まで載っている細かい地図を選手に見せることで、選手は進む方向を見失う。甲府の選手の多くはそれだけのスキルやフィジカルを持っていないことを、もう認めないと駄目だ。高速道路と国道だけしか載っていない地図を見せるだけでいい。細かい部分まで見えても、細かい部分は捨てて、リスクを背負って甲府のストロングポイントを前面に出すサッカーに立ち返るべきだ。大木武がやったように。

「甲府スタイルへの誇り」。しかし、このままではそんなことは言っていられなくなる。昨夜、海野社長らフロント幹部とサポーターの代表者たちとの会合があった。現状説明と観戦ルールの問題などを話し合う予定された会合だったが、フロントが「流れを変えざるを得ない」と考えていることは想像に難くない。安間監督と「自分たちのサッカー」を続けたいのなら、ミスをした仲間を罵倒している場合じゃないことに気がつかないと駄目だろう。湘南戦を終わりの始まりにしていいのか。表面だけの仲良しチームを止めることを言い出すことが出来る選手はいないのか。6月最後の憂鬱な月曜日、選手は何を考えて過ごしているのだろうか。

以上


2008.06.30 Reported by 松尾潤