8月3日(日) 2008 J2リーグ戦 第29節
広島 1 - 0 鳥栖 (18:04/広島ビ/12,303人)
得点者:48' 森崎浩司(広島)
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サッカーとは、90分で考えるスポーツである。しかし、それをプレーで体現できる選手は意外と少ない。目の前で起こる出来事に一喜一憂し、局面がうまくいかないと全体にダメ出しをして焦りだす。よく見る光景だ。
前半、鳥栖がコンパクトな陣形でゴール前を固め、広島に決定的なチャンスを与えない守備を展開していた。こんな時にありがちなのは、「サッカーは90分のスポーツ」という大前提を忘れ、人数を前にかけすぎてこじ開けようとすること。サッカーにおいて、ボールをもたれている側の方が苦しいはずなのに、ボールを支配している側が攻めているはずなのに、攻めている側が逆に苦しく感じる。サッカーというスポーツの不可思議さはここにもあるのだが、しかし鳥栖戦での広島には、そういう「息苦しさ」はほとんど感じなかった。それは彼らが、90分を通した勝利へのストーリーを、しっかりと自分たちのものとしていたからだ。
「点をとりたいのは、鳥栖の方だから」
盛田剛平の言葉どおり、鳥栖にしても90分間ずっと、ゴール前に張り付いているわけにはいかない。J1昇格という悲願を前にして、ポイントは1ではなく、3が欲しい。一方、3位鳥栖に16ポイント差をつけている広島にしてみれば、相手に3ポイントを与えなければそれでいい。したがって、どこかのタイミングで鳥栖は絶対にゴールを奪いに行かねばならないわけで、その瞬間が本当の勝負になる。
広島にしてみれば、その瞬間までは無理に勝負を仕掛ける必要はない。実際、盛田と槙野智章の両ストッパーは前がかりにならず、しっかりと鳥栖の2トップをつかまえていた。攻勢に出た時も、ボランチの森崎浩司が最終ラインに入ってバランスをとる。いつものような流動的な攻撃は見られなかったが、それも気温29度・湿度69%という気候を考えれば、無理もない。
「前半は0−0でもよかった」という森崎浩の意識がチーム全体に統一され、広島は落ち着いた闘いで前半を終了した。それでも、45分で放ったシュートは11本。セットプレーから槙野智章が強烈なヘッドを放つ。鳥栖にしてみれば、チャンスはほとんどつくれず、シュートを打たれ、決定機もつくられてしまっては、「パスを回させている」という意識にもなれない。
後半、広島はギアを明らかにあげた。青山敏弘の強烈なミドルで相手を脅かし、服部公太・柏木陽介と続けて左サイドで突破を図る。48分、柏木のCKのクリアボールを拾った盛田がドリブルでしかける。パスを受けた高萩洋次郎のシュートはブロックされたものの、そのこぼれを森崎浩司が見事なコントロールシュートで流し込んだ。この分厚い攻撃に、鳥栖DFはどうしようもなかった。
後半開始早々の先制点が、互いのチームに与えた影響は、小さくない。鳥栖は得点をとりに前に出るものの、その裏を広島に鋭くつかれた。高萩のスルーパスが鋭くそのスペースをつき、桑田慎一朗がGKと1対1になるようなシーンも、その状況から生まれた。
一方、鳥栖の必死の攻勢も広島は余裕をもって受け止める。決定機は2度。65分、左サイドで山城純也が突破しレオナルドがシュートを放った場面と、79分に藤田祥史がGKのクリアボールを身体に当てたシーン。この場面がゴールにならなかったことは、鳥栖にとっての不運ではあった。しかし、「そういう幸運が生まれるのも、僕たちがしっかりと闘っているから」と森崎和幸が言うほど、広島の選手たちは自信にみなぎっている。
鳥栖にしてみれば、ケガ等によって、後半早々に内間安路や高地系治を交代せざるをえなかったことも、不運だった。90 分を見据えた広島の余裕を、戦術上の交代によって崩すことができなかったことは、岸野監督にとっても悔いが残る。また、藤田・金信泳という大型2トップを擁しながら、彼らを孤立させてしまい、うまく活かせなかったところも反省点だ。今後のJ1昇格戦線の中で、勝点3が必要になる試合が増えてくる。堅守を維持しなから、破壊力を秘めている2トップを活かす術が、これからの鳥栖の大きな課題だ。
広島は勝点を64に伸ばし、3位鳥栖との差は19まで開いた。しかし、選手たちに安心感など微塵もない。むしろ、これから続く仙台・甲府・福岡といった難敵との闘いに向けて、モチベーションをみなぎらせている。特に仙台戦に対しては、第1クールで敗れているだけに「引き分けも許されない。絶対に勝ちたい」(槙野智章)と闘志十分だ。周囲の雰囲気とは関係なく、「地に足をつけた闘い」(ペトロヴィッチ監督)を最後まで貫く。そういう意思統一が、広島の選手のコンセンサスである。
以上
2008.08.04 Reported by 中野和也
J’s GOALニュース
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