11月29日（土） 2008 J2リーグ戦 第44節
草津 0 - 4 Ｃ大阪　（17:04／正田スタ／8,096人）
得点者：19' 香川真司（Ｃ大阪）、31' 乾貴士（Ｃ大阪）、50' カイオ（Ｃ大阪）、68' 香川真司（Ｃ大阪）
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草津のホーム最終戦となった今節、スタジアムにはＪ昇格以来最多の8,096人が詰め掛けた。有終の美を飾るべくピッチへと向かう選手たちを、サポーターは最高のボルテージで迎え入れた。

しかし、草津の選手たちが主役であるはずだった舞台は、19歳の若者によって完全に乗っ取られた。日本代表・香川真司。草津の勝利を期待して集まった多くのサポーターは、90分間に渡ってピッチで繰り広げられた「香川ショー」の目撃者となった。そして試合後には植木繁晴監督が突然の辞任を発表。0-4の大敗に加えて、指揮官の退任。スタジアム全体は重苦しい雰囲気に包まれた。

草津は試合前日に秋葉忠宏、鳥居塚伸人のベテラン２選手の契約満了を発表、この日のスタメンには両選手の名前が並んだ。鳥居塚を前線に配置する変則３―３―４に近いシステムで挑んだ草津だったが、Ｃ大阪対策がハマらずに序盤から劣勢を強いられる。

草津守備陣は、キックオフと同時にトップギアで仕掛けてくる香川、乾貴士をまったく止められない。秋葉忠、松下裕樹の両ボランチは、後列から飛び出してくる濱田武、ジェルマーノらの攻撃参加にも苦慮し、防戦一方の展開となっていく。「香川と乾はボランチが見ることになっていたが、相手のボランチ（濱田、ジェルマーノ）にドリブルで仕掛けられて対応が中途半端になった」（松下）。草津は、主戦場であるはずのバイタルエリアで数的不利を起こし、守備が破綻していく。

Ｃ大阪ゴールショーの、オープニングは香川だった。19分、ドリブルでペナルティエリアに進入した香川が必死で飛び込んでくるＤＦを次々とかわしてゴールネットをせり上げる。草津はパスサッカーで応戦するが、中盤がＣ大阪のプレスの網にかかり突破口すら見出せない。そして31分、Ｃ大阪は１トップ・カイオのポストプレーから乾がサイドネットを揺らし追加点を奪う。

昇格への可能性を追求するＣ大阪の勢いは、後半になっても止まらない。後半早々の50分には、乾、香川のゴールデンコンビのお膳立てで、カイオがゴール。68分には、香川が左足で豪快に蹴り込み、ダメ押しとなる４点目を決めた。90分間に渡り攻め続けたＣ大阪は、草津に反撃の余地すら与えなかった。ＧＫ本田征治は「Ｃ大阪は１００点の内容だった。もっと点を取られてもおかしくなかった」と完敗を認めた。

試合後、クルピ監督は「今日は開始から終わりまで90分間にわたり、良い内容のサッカーができた」と選手を称えた。破壊力のある攻撃陣活躍はさることながら、豊富な運動量と激しいプレスで彼らを支えた濱田、ジェルマーノ、平島崇らの中盤、草津ＦＷに自由を与えなかった３バックの奮闘も見逃せない。Ｃ大阪の入れ替え戦進出は他力本願になるが、もし出場権が転がり込んだ場合は、Ｊ１クラブを撃沈する可能性が十分にある。

ホーム最終戦で木っ端微塵となった草津は、植木監督の電撃辞任表明によって大敗のショックが薄れた。だが、この結果から目をそらしては昇格など見えてこない。鳥栖、広島、Ｃ大阪の上位３連戦では11失点と守備が崩壊。戦術がハマらなかったときにいかに対応するか、選手たちの適応力が問われる。草津は、この試合の課題を来季の糧としなければいけない。

03年の関東リーグ時代から６シーズンに渡り草津に在籍したミスターザスパ・鳥居塚、06年のシーズン途中で加入しチームにプロ意識を植え付けた闘将・秋葉忠。草津の歴史を変えた二人のベテランは新天地を求めてチームを離れる。無念の想いで草津を去る秋葉忠はセレモニー後、サポーターに向かって「来年もこのチームをよろしく頼む」と声をかけて回った。Ｊ２昇格４年目で初の２ケタ勝利を挙げチームの成長を示した草津だが、二人の貢献度は計り知れない。ベテランとの決別と、指揮官の勇退。「チームがさらに上を目指すための判断だった」（植木監督）。草津の新たなページはめくられた。

以上

2008.11.30 Reported by 伊藤寿学