2月11日(水) 2010 FIFAワールドカップ南アフリカ アジア最終予選
日本代表 0 - 0 オーストラリア代表 (19:20/横浜国/65,571人)
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岡田武史監督は勝ちたかったし、ピム監督(オーストラリア代表)は会見でも口にしていたように勝てればいい、くらいの考えだった。そうしたお互いの立ち位置の違いを考えると、この試合結果は敗北に等しいと言っていい。そういう意味で、岡田監督にとっても、日本代表にとっても、この結果は挫折だった。
多少の不安を感じながら、しかしこの試合を楽しみにしていた。代表チームという特性上、継続的にではないにせよ日本代表は昨年の5月からコンセプトというイメージに対してのアプローチを続け、それが一定の成果を上げてきていたからである。選手たちはコンセプトの浸透に自信を示し、それが毎試合ではないにせよ形として現れているという実感があった。
たとえばコンセプトを提唱し実践をし始めた直後の08年6月2日のオマーン戦。同じく08年の11月19日のカタール戦。後半の途中までという条件を付ければ、08年9月6日のバーレーン戦もそうだろう。これらの試合では、コンセプトという指針に従い、その枠内で選手たちが戦術の細部の肉付けを行うという戦いがある程度できていた。相手が弱かったということもあるが、09年2月4日に行われたフィンランド戦は、1月10日に指宿からスタートした合宿でトライしてきたサッカー、つまり流動性の高い攻撃を実現していたという点で希望となる試合だった。そうした成功体験の蓄積を根拠に、この試合には期待をかけていたのである。
コンディション面でアドバンテージを持つ日本は、試合前日の中澤佑二(横浜FM)の「立ち上がりの10〜15分は前から行く可能性はあると思います」という言葉通り、激しいプレスを仕掛ける。スイッチとなったのは田中達也(浦和)。ペース配分を無視しているようにも見えた激しいプレスによってオーストラリアを押し込むことに成功する。
大半の選手が試合直前の来日となったオーストラリアは、事前の予想を覆しケーヒルを1トップに据える布陣を取る。攻撃はカウンターに絞り、守備的に試合を進めることを前提としていたのである。そうしたオーストラリアのゲームプランが、日本代表の積極的な戦いと組み合うことで、試合は日本がボール支配率を高める中で進むこととなった。
基本的にボールは日本がキープ。そうした状況の中で、前線で機会をうかがう玉田圭司(名古屋)、田中達という2選手の特性を考えたとき、彼らが相手最終ラインの裏に抜け出せるのであれば、それを狙うのは間違いではない。そして実際にそうしたボールに田中達は良く反応していた。試合開始直後の5分に、裏に飛び出した田中達のクロスをゴール前、ニアに走り込んだ玉田が合わせたシュートなどは狙い通りの攻撃だったと言える。しかしこの場面を凌いだオーストラリアは、これ以降たとえ裏を取られたとしても、サイドをえぐられた後の対応を徹底することで危機管理することとなる。加えて言うと、ロングボールによるラインの裏へのパスの供給は、裏へ抜けた選手がシュートに行く場面を除けば、中で合わせる選手の絶対数が少なくなるという弊害を持つ。裏は取れるが、シュートにまでは行けないという場面が続いたのはある程度必然的な流れでもあった。
引いた相手との対戦では、相手チームが作るブロックの手前で横パスをつなぎ、相手を左右に動かし、前線の選手がボールを引き出す動きをすることで、穴を作り出すことが可能である。ところがこの試合ではそうした組み立てのためのパスワークがほとんど見られなかった。オーストラリアの選手がバランスを意識した守備陣形を取っていたこともその理由なのだが、本来中盤を作るべく投入されていた中村俊輔(セルティック)、松井大輔(サンテティエンヌ)の両選手と、彼らにパスを供給すべき遠藤保仁(G大阪)は、自らの頭上を通過するボールを目で追う場面が多すぎたのである。
この試合を振り返った玉田が「ウチのペースでできてはいたが、相手を崩せず、決定機があまり作れなかった。攻撃の迫力が足りない」と述べ、それに続けて「スピードの緩急をつけたり工夫をしていきたい。今後の課題だと思う」と反省の弁を口にしていたことからもわかる通り、この日の日本代表は縦に早すぎ、横の動きが少なかった。つまり「急」ばかりで「緩」が少なかったのである。もちろん、選手たちは相手の出方を見極めた上でロングボールを多用し、裏を狙っていたのだろう。ただ、それがケアされたときの次善の策を試合中に選手たちが、自立的に打てなかったところに現時点での日本代表の限界を感じさせられた。なぜならば、岡田監督が指向しているサッカーとは選手たちにある程度の権限を与えているからである。
話はちょっと横道にそれる。試合前の国歌独唱時のことである。オーストラリア国歌を披露したドナ・パークさんの歌声は素晴らしいものがあったが、オーストラリアサポーターは彼女の声を完全に無視し、その人数に似つかわしくない大声で、自分たちのペースで国歌を歌い上げていた。
一方、君が代斉唱時。合唱団が歌うこれまた調和の取れた君が代に、日本人サポーターはしっかりとリズムを合わせ、慎ましく歌うのである。自立的なのか、協調性を重んじるのか、という両国の国民性が象徴的に出た場面だった。
ピム監督の前日会見での「練習を見ていただければ全ておわかりになります」との発言を信じ、その後の練習を見るに、ピム監督は戦術練習を全く行っていない。それにもかかわらず、オーストラリアは状況に応じた戦いができていた。サッカーを知っているのかどうか、という部分と共に、自立的に動くことのできる選手の集まりだからこその戦いだった。
日本代表はハーフタイムを経なければ、サイドバックを押し上げ、中盤である程度ボールを回せるようにはならなかった。つまり彼らはまだ、指し示された方向性を具体的に提示してもらえなければ戦いを変化させることができないのである。それに比べると、選手たちの力で、厳しいアウェイマッチで勝点1を持ち帰ったオーストラリアの質の高さは賞賛されてしかるべきだろうと思う。
そしてそうした固い守備の相手であっても、世界のトップ4を目指す以上勝ちきる強さを見せてほしかった。内容が改善した後半に何度か決定的なシュートが枠内に飛んでいただけに、その思いは募る。ただ、こうした問題点を理由に過度に悲観することもないとも考えている。日本代表の各選手たちは今何が必要なのか、その課題を正確に把握できているからである。
残念ながらこの試合では結果は出せなかった。その点では失望させられたが、岡田監督が提示するサッカーは、それが実現したときに世界に通用する可能性を秘めていると考えている。大きな枠組みを提示されたその中で、選手たちが考え、作らなければならないという点で、完成形に到達する時期はまだまだ先になりそうだが、今は信じるしかないと思っている。
以上
2009.02.12 Reported by 江藤高志
J’s GOALニュース
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