☆U-20ジャパンエイト参加メンバー
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今、日本サッカー界において、大きくクローズアップされてきている問題がある。それは、若手選手の出場機会の激減が若手の伸び悩みに直結し、ジュニア年代から続く全体的な強化の底上げがプロに入ってから途絶えてしまっていることだ。
高校時代までは、プリンスリーグの整備、トレセン強化などで、多くの実戦を経験し力を磨いている。しかし、プロに入った途端、実戦経験が激減し伸び悩むという悪循環が現場レベルで起こっている。こうした事象が、昨年のAFC U-19選手権敗退という憂き目に繋がったと言っても過言ではないだろう。
この現状を受けて、「プロに入って1、2年目は世界では年間70〜80試合やる中で、Jで出られない選手がいる現状を受けて、思う存分試合をやってもらおうと。『ゲームが一番の師』なので、そこで何かを掴んで欲しい」と小野剛技術委員長が語ったように、若手の実戦経験を積む場として開催されたのが本大会だ。各チーム、大学のU-20の選手(1989年1月1日以降生まれ、下部組織を含む)を集めて、8人制サッカーを行って、実戦経験を積ませることを目的とした『U-20ジャパンズエイト(8人制大会)』が、24日〜26日の3日間、静岡県の御殿場高原裾野グラウンドで行われた。
この大会には各Jクラブの選手だけでなく、下部組織所属チーム、JFA特別指定選手、大学生が参加し、6チームを形成。ここに合宿を張るU-18日本代表の2チームが加わり、計8チームが2グループに分かれてリーグ戦を行い、26日に最終順位決定戦を行ったが、試合の数を追うごとに目に見える『変化』が見て取れた。
初日こそ、「なかなかチャレンジしようとしなかった」(小野技術委員長)が、徐々に個々がミスを恐れずに果敢にチャレンジする姿勢が見られるようになり、試合を重ねるにつれて、積極的に仕掛けあう姿勢が真っ向からぶつかり合う、激しい攻防があちこちで見られるようになった。
この変化は彼らのメンタリティーが大きく影響していた。プロに入れるような実力はありながらも、チームでは周りに経験を積んだ選手が多い分、自分のミスはより目立ってしまう。さらにミスを犯したことにより、自分のマイナス評価に繋がってしまうのではないかと、ネガティブなメンタリティーとなって、徐々にプレーが消極的になり、無難なプレーに落ち着いてしまう傾向は実際にある。普段の練習や試合でミスを恐れずにチャレンジする姿勢が日常化していなければ、当然いざという時に自分の持ち味を出せない。こうした悪循環は若手選手に良く見られる典型的な悪循環だ。
しかし、8人制サッカーではコートも通常より狭く、すぐにゴール前のアタッキングエリアの攻防になるため、プレッシャーも激しくなかなか無難にプレーできる環境ではない。攻撃面では少しでもボールを運べばアタッキングエリアに入り、フィニッシュの態勢に入るし、ゴールを奪うためには単純にパスで崩すのではなく、1対1のマッチアップを制したり、シュートまで持っていく個の力が必要になる。そこには当然、パスか仕掛けるかの瞬時の正確な判断力も要される。守備面ではボールを奪われたら、1人が一瞬でも守備に回るのが遅れれば、たちまちバイタルエリアでの数的不利に陥って大ピンチを招く。それゆえに攻守に切り替えを早くしなければならず、頭も体も休み無く動かし続けるという作業を要求される。
一方がアグレッシブに仕掛けてくれば、相手方も守りきるという作業は非常に困難になってくる。こうした追い詰められた環境が徐々に彼らのチャレンジ精神に火をつけ、どんどんリスクを背負ったプレーを見せ始めるようになる。
実際に2日目の最後のほうの試合や、最終日の試合では、ファーストタッチからゴールに向かい、余計な横パスなど考えず、ゴールへの最短距離を果敢に仕掛ける選手たちの姿があった。局面が目まぐるしく変化し、攻守が激しく入れ替わる。そして各地では1対1のガチンコのバトルが繰り広げられ、激しいタックルや、激しいフィジカルコンタクト、身体を張ったシュートブロック。張り詰めた空気の中に、選手同士がぶつかり合う音と、全員が絶え間なく出している指示の声が響く。選手たちは8人制サッカーという舞台で、気迫を全面に出したプレーを体いっぱいに表現していた。
結果を見ても、スコアも大差がついていた試合から、徐々に1点差を争う熱戦が多くなり、決勝戦と3位決定戦は、同点で迎えた試合終了直前のゴールで勝敗が決している。
「少しでもサボると点を取られるし、1人がプレーに関わり続けられる。それにシュート数も多かった。100本のシュート練習よりも、こういう厳しい状況でシュートを打つことのほうが鍛えられる。チームとしてどう戦うかプラス、自分の武器を磨く。試合の中で選手たちが1対1、ひとつの球際や1点に対して強いこだわりを見せてくれて、自分たちでいい大会にしてくれた」と小野技術委員長も確かな手ごたえを掴んだように、選手たちの個々のモチベーション、ワンプレーのこだわり、集中力は高いものがあった。今回の試みにおいて、選手たちのこうした姿勢を引き出せたことは、大きな収穫であり、狙い通りであった。
ただ、手放しで喜んでばかりはいられない。彼らはあくまでプロの選手。こうした土壌を周りが整えないと、こうした姿勢が見えてこないのは大いに問題であるし、懸念すべきことである。この取り組みは確かに大きな意義があった。だが、今後はこれを恒例行事にするのではなくて、Jリーグ、サッカー界における1つの問いかけにしてこそ、より意義があると考えなければならない。
「こうした取り組みは1回限りではなく、今後もやっていきますが、将来的にはこれがメインにならずに、継続しながらもこの大会が不要になることが理想です」(小野技術委員長)。
こうした取り組みがいつまでも必要にならないように。これはあくまでも問題提起の一環である。選手達は自分たちはただ単にサッカー選手として強化されているだけではなく、周りからプロとしての素質を試されているのだと自覚をしなければならない。これを飛躍のきっかけにした者こそが、今回の取り組みが大きな意味を成した者となるのだから。
以上
2009.05.27 Reported by 安藤隆人
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