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【キリンカップサッカー2009 日本 vs ベルギー】レポート:大量4発で快勝するが指揮官とピッチとに温度差も。この試合を前向きにとらえ、ウズベキスタン戦に向けて気を引締め直して欲しい。(09.06.01)

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5月31日(日) キリンカップサッカー2009
日本 4 - 0 ベルギー (19:20/国立/42,520人)
得点者:21' 長友 佑都(日本)、23' 中村 憲剛(日本)、60' 岡崎 慎司(日本)、77' 矢野 貴章(日本)
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 日本が前半からベルギーを圧倒していたのはシュート数を見れば一目瞭然である。前半だけで16本。試合を通じて24本のシュートを放った日本に対し、ベルギーは前半わずかに1本。多少盛り返した後半に2本を放つのがやっとだった。

 個人技に勝る日本に対しベルギーが引き気味にならざるを得ない状況に陥った事も日本代表の攻勢を強める結果となる。そういう点では非常にいい内容の試合ができていたと考えている。アウェイで行われるウズベキスタンとの一戦に向けて弾みをつけられる試合になったのではないかとも思っている。しかし、岡田監督は内容についての不満を表明する。「前半20分くらいまでは非常にいいリズムだったが、そのあと徐々にペースダウンして『8割くらいの力でいいだろう』というような」試合運びになったのだと。

 前半を通した15分単位での日本のボール支配率が常に65%を越えるような状況であれば、コンセプトに従った相手ボールへのアタックだったり、連動した囲い込みといった勤勉さが見えやすい場面は少なくなってもおかしくない。キープできるのだから、無理はせずにキープしよう、と考えてもおかしくはない。それが慢心と紙一重のものであり、そうした試合運びに危機感を覚えたのであれば岡田監督のハーフタイムの「なんのためにこの試合をやっているのか?ウズベキスタンに勝つためにやっているんだ。もう一度考え直して欲しい」という叱咤は良くわかる。この試合で走りまくり、ピッチに倒れこんだとしても、ウズベキスタン戦までには時間があり回復は可能である。だからこそ、ひたむきさを岡田監督は見たかったのだろう。

 いずれにしても、日本代表は試合をコントロールできるだけの強さを見せ付けた事になる。そんな試合運びの原動力となったのは、ほぼ安定していた最終ラインとボランチのセットの守備力である。自作自演の場面を除けば最終ラインが働く機会はほぼなかったが、それは遠藤保仁と長谷部誠が陣取るボランチのコンビが相手ボールを絡め取り続けていたから。特に長谷部の守備での献身的な働きは出色の出来で、それと同時にタイミングを見計らったドリブル突破は攻撃のアクセントとなっていた。ちなみに最終ラインにこぼれてきたボールは、闘莉王が練習するがごとく、ことごとく前線へのロングレンジのパスにしていた。闘莉王は今年の2月に行われたフィンランド戦でも同じようなプレーを見せていたが、違和感で出遅れていただけにキックの感覚を戻すいい機会になったのではないだろうか。

 背後からの力強いバックアップを受け、のびのびとプレーしていたのが前線の4枚である。特にチリ戦から引き続いてトップ下に入った中村憲剛や、右サイドで起点を作り続けた中村俊輔らが激しくポジションをチェンジさせ、ベルギーの守備陣を切り裂き続けた。その中でも前回のチリ戦とは明らかに違うプレーを見せていたのが中村憲である。「前回シュートが少なかったので、狙いたいというのはありました」という言葉どおり、ゴールが見えたら即シュートという姿勢を見せており、前半だけで5本のシュートを放つほどだった。

 先制点はその中村憲が絡んで生まれる。前半21分。中村憲を起点としたパスによってペナルティエリアの手前のエリアで岡崎慎司と大久保嘉人が絡み、中村憲へパスがつながる。大久保が中央に絞っていたスペースに長友佑都が走りこんでおり、タイミングを合わせたラストパス。角度のないところから長友が蹴りこんだ。

 このゴールで勢いづいた日本代表は、直後の23分。闘莉王の4〜50mはあろうかというライナー性のフィードを受けた大久保が中村憲につなぐ。「ヨシトがもった瞬間にフリーランニングしたんですが相手がついてこなかった。もう少し付いてきてればシュートではなかったんですが、あれは切り返してシュートを打つというのは思っていた」という中村憲の、イメージどおりのゴールで点差を2点に広げる。

 岡田監督にしてみればこの2ゴールで安心した後の試合運びがどうにも不満があったようである。実際のところ、日本はボール支配率で相手を圧倒しており、気が緩んでしまったのは事実であろう。さらに言うと、もしかしたら指揮官と選手たちの間に、この試合に対する捕らえ方でずれがあったのかもしれない。つまり選手たちは状況に応じて試合をコントロールすればいいと考えており、実際にそうしていた。ところが岡田監督はあくまでもウズベキスタン戦を見据えてプレスをかけ続けて欲しかったと。そういう意識のズレが生じるという経験をできたのがこのタイミングだったのはもしかしたらよかったのかもしれない。いずれにしても、日本は内容でベルギーを圧倒したまま試合は後半へ入る。

 ハーフタイムに中村俊から本田圭佑。長谷部から橋本英郎へと選手を交代し後半がスタート。本田の力強いプレーはそれはそれで日本代表の武器となるものだが、ボールを引き出し、リズムを紡ぎ出していた中村俊が退いた事で、起点が一つ消えたのは事実であろう。後半開始からの15分間のボール支配率は54.7%にまで低下しており、日本はポゼッション率を下げている。本田は起用されるポジションがかぶる中村俊とのレギュラー争いに意欲を燃やしていたが、中村俊のリズムを作るという才能は捨てがたいものがある。そういう点では、偉大な先輩の後姿を見ながら、この代表の中で自分に何ができるのかを本田は見つけて欲しいと思う。

 中央にブロックを作る相手に対してはサイド攻撃がセオリーとはよく言われるが、後半に生まれた2得点は共にサイドを破ってのもの。60分の岡崎のダイビングヘッドも、77分の矢野貴章のスライディングシュートにしても、クロスに対しピンポイントで合わせたスピード感のあるものだった。そういう攻撃の使い分けができていたという点でも評価したい得点だった。

 後半は6枚の交代枠をフルに使ったことでチームとしての組織性が多少低下。さらに矢野のゴールの直後に、大久保が負傷しピッチを退くというアクシデントもあって試合の熱気は多少薄れてしまう。85分過ぎから場内にウェーブが発生したのは、そういう意味ではお客さんが積極的に試合に関わろうとする姿勢が見えて面白かった。

 海外組が不在だったチリ代表と同様、今回のベルギー代表もベストメンバーではなかった。ただ、直近のW杯予選に出場していた選手のうち、5選手が先発出場。また4位に入った北京五輪世代の選手も、4人(2人はW杯予選出場選手と重複)が先発している。そういう意味では、ポテンシャルは秘めているチームなのだろうとは思う。ただし、コンディションの問題やコンビネーションの問題などもあって、日本の一方的な試合になってしまった。大勝はしたが、ここで気を緩めてはならないのはだれもがわかっている事である。この勝利が慢心を生むとしたらそれはまさに本末転倒。ウズベキスタン戦に向けて気を引締め直して欲しいと思う。ちなみにそうしたメンタルコントロールの部分について中村俊は「ウズベキスタンでの一発目の練習で、ミスしたときに笑いが出ないようにしたい」と話していた。ピリピリとしたムードを出せるのかどうか、決戦までの練習も含めて現地からレポートしていくので楽しみにしていて欲しい。

以上

2009.06.01 Reported by 江藤高志
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