6月7日(日) 2009 ヤマザキナビスコカップ
広島 5 - 1 新潟 (13:00/広島ビ/9,473人)
得点者:4' 松下年宏(新潟)、7' 高柳一誠(広島)、13' 中島浩司(広島)、44' 柏木陽介(広島)、72' 佐藤寿人(広島)、86' 大崎淳矢(広島)
★ヤマザキナビスコカップ特集|チケット情報
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大崎淳矢がハーフウェイラインまで下がって守備ブロックを構成した、その瞬間である。ボランチの横竹翔が思いきったプレスを仕掛け、新潟MF酒井高徳からボールを奪った。
そのボールが、この試合既に2アシストを記録している高萩洋次郎の足下へ。そこからは、まさに「It's a Yojiro world」だ。
軟体動物のようにグニッグニッと瞬時に足首が折れ曲がり、足のあらゆる部位を使ってボールに触る。その足に連動したボールのクルックルッとした動き、さらに半身となってブロックする身体の使い方。酒井も必死にプレスをかけるが、高萩独特のボールコントロールの前に、なす術がない。
千葉和彦が高萩を挟み込みもうと前に出る。が、その時、高萩はオレンジの守備ブロックではなく、違う光を見ていた。その光とは、センターサークル付近から長い距離を一気に駆け上がってきた大崎の姿である。
千葉の鼻先をかすめるかのように、高萩は右足アウトにかけて、ボールをこすりあげた。「グラウンダーのパスだと、カットされてしまう。ここは浮き球で時間を創らないとパスは通らない」
大崎の位置を確認した瞬間、彼はDFとGKの位置、大崎の走る軌道、ゴールまでの距離などを完全に把握し、一瞬のうちに「正解」をたたき出したのである。
精密機械のよう?いや、高萩は時に、コンピュータの演算を上回るスピードで答えを導き出す。目や耳、肌感覚も含めた「五感」を極限にまで研ぎすませた時、彼は大脳の判断を待たずに筋肉を動き出させる、いわゆる「反射」に近いスピードで信号を四肢に送る。それは、誰もが持っている感覚ではない。選ばれし者だけだ。
フワリとした軌道のボール。走り込んだ大崎に通れば、失点だ。
そんな恐怖から、DF大野和成は右手を思わずボールにさし出した。ボールは確かに大野の手に当たったように見えた。
しかし、ボールはその手を弾き、大崎の走り込むコース状にピタリ。50m以上のロングランニングを敢行し、疲れはあったはずの18歳。しかし、その足首にはいささかのブレも見せず、インステップで逆サイドのゴールへと流し込んだ。
ボール奪取した横竹は、広島ジュニアユース時代にナイキプレミアカップで優勝、世界大会に出場した実績を持って、ユース・トップと昇格を果たした。ゴールをアシストした高萩は、16歳8ヶ月3日でJ2デビュー(J2最年少出場ランキング第2位)を果たし、広島史上初めて高校生でプロ契約を結んだ。そしてゴールを決めた大崎は広島ユースの現役エース。つまりこの芸術的な広島の5点目は、広島ユースの歴史を刻んだ選手たちで演出された。
「今のチームは、2003年の広島ユースみたい。楽しくて点がとれる」と高萩は言う。当時の広島ユースは、公式戦でわずか2度しか負けることなく、クラブユースとJユースの二冠を獲得。圧倒的なポゼッションと全体が連動した破壊的な攻撃力で、平山相太・中村北斗(共にF東京)や兵藤慎剛・渡邉千真(共に横浜FM)らがいた国見高を圧倒するなど、ユース年代の歴史にその名を刻む強さを発揮していた。そしてこの日の試合には、この年に端を発した広島ユースの伝統を受け継いだ若者たちが、7人も出場したのである。
一方、ルーキーの東口順昭や三門雄大、2年目の大野和成と、3人の選手がプロ初出場を果たした新潟ではあるが、その持てる力をほとんど発揮できなかった。
前半こそ左サイドからの攻撃が機能し、CKも前半だけで8本。しかし、クロスもCKも工夫に乏しく、そのほとんどは盛田剛平を中心とする広島の守備の厚さに跳ね返された。松下年宏のミドルで奪った先制点も広島の目を覚ます呼び水となり、高柳一誠・中島浩司・柏木陽介の3得点で前半のうちに逆転。後半は、広島のポゼッションの前に疲労して完全に足が止まり、佐藤寿人と大崎にゴールを許して大敗してしまった。
「レギュラーと比較すると……、もう少し頑張ってほしい」と鈴木淳監督が嘆いたように、新潟の主力と控え組の間にある大きな差を露呈した試合となった。ただ、これから厳しい夏場を迎えるにあたり、その断層を少しでも埋めておきたいのが、指揮官の本音。この試合の経験を「次につなげる」(鈴木監督)ためにも、これからのトレーニングが一層重要になることは、言うまでもない。
さて広島は、次の磐田戦を引き分け以上で終えれば、決勝トーナメント進出が決定。しかし、広島の選手たちに「引き分け狙い」という言葉はない。
「最後まで勝つために闘い、グループ1位で予選を突破したい」
この日、1得点2アシストと大活躍を見せた柏木の言葉こそ、チームの決意である。
以上
2009.06.08 Reported by 中野和也
J’s GOALニュース
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