6月21日（日） 2009 J2リーグ戦 第22節
水戸 2 - 1 草津　（15:04／ひたちな／1,822人）
得点者：6' 高崎寛之（水戸）、25' 吉原宏太（水戸）、42' 後藤涼（草津）
スカパー！再放送 Ch183 6/23（火）05:00〜（解説：都並敏史、実況：中村義昭、リポーター：高木聖佳）
☆勝敗予想ゲーム
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降りしきる雨の中、「ひたちなか」には草津サポーターが続々と詰め掛けた。開場とともにコアサポーターがゴール裏芝生席へと流れ込むと、その後もレプリカユニフォームを着たサポーターの数は増え続け、試合開始前には約５００人が「ひたちなか」のゴール裏を占拠した。水戸を圧倒的に凌駕する完全なホームジャック。だが、敵地を濃紺に染めたサポーターの期待は、試合開始わずかで落胆へと変わっていった。

　草津は、雨のピッチに戸惑った。守備陣は、ワンタッチでＤＦラインの裏へとボールを蹴ってくる水戸の攻撃に押し込まれて、いきなり不安定な状態に陥る。そして６分、ＤＦラインが裏を気にするあまり、水戸のＦＷ高崎寛之へのプレスが遅れてエアポケットが生まれる。「守備全体で集中を欠き、ボールに対する対応が遅れた」（崔成勇）。ＤＦラインと中盤のギャップをついて放たれた高崎のロングシュートが、ＧＫ北一真の頭上を越えてゴールネットを揺らす。浅いＤＦラインの裏を埋めようと前がかりになっていた北のポジショニングを見透かしたような水戸のプレーだった。ゲームが落ち着く前の失点に、草津は浮き足立つ。

あちこちに水が溜まるピッチは、草津の特長であるパスサッカーを封じ込めた。戦術に縛られる草津はそれでも必死にボールをつなごうとするが、水を含んでブレるパスを次々と水戸の中盤にカットされ、カウンターの恐怖にさらされていく。また、高崎のポストプレーをＣＢが止めることができずに主導権を引き寄せられない。ゲームのリズムをつかめない草津は25分、左サイドから上げられたクロスへの対応を誤り、最後は吉原宏太に追加点を叩き込まれてしまう。

ボールを繋ぐのか、蹴るのか。シンプルなサッカーに徹する水戸に対して、草津はチームとしての対応が曖昧で、中途半端な攻撃を繰り返してはボールを奪われてしまう。そんな状況の中、高田保則は戦い方を知っていた。スペースに積極的に顔を出して周囲をサポートすると、相手の嫌がるスペース、すなわちバイタルエリアへとボールを運んでいく。42分、高田がシンプルにゴール前に入れたクロスがファーへ抜けたところを後藤涼が押し込む。「シンプルにゴール前に入れたことがゴールへとつながった」（高田）。崖っぷちに追い詰められていた草津は、後藤のクラブ通算２００ゴールで１点を返して後半へと向かう。

草津は後半、中盤でつなぎながらサイドまで持ち込み突破口を探る。だが、サイドでのドリブルは水のピッチに阻まれ、シュートまで持ち込むことができない。後半23分過ぎには、後藤と廣山望が頭部を痛打し倒れるアクシデントに見舞われる。軽い脳しんとうで倒れた後藤には早々に周囲からバツ印が出されていたようだったが、交代選手が投入されたのは４分後。草津はその間、９人での戦いを強いられ、ベンチワークも混乱した。高田は「チーム全体で同じイメージが描けていなかった」と振り返ったように、草津は濡れたピッチに対するチームとしての明確な策を打ち出せないまま、時間だけを消費していく。そして、最後まで雨のピッチを味方につけることができずに、試合終了のホイッスルを聞くことになった。選手からは「チームにゲームプランがなく、どう戦うのかハッキリしていなかった」という声も聞こえた。敗北という事実よりも臨機応変に対策を打ち出せないチームマネジメントの方が深刻だ。

　パスサッカーを主体とする草津にとって、雨のピッチという大きなハンデを背負ったのは事実だが、「雨」というフィルターによってチームの弱点が浮き彫りになったのも確かだ。櫻田は「パス精度が足りずに相手の裏へボールを蹴り込めなかった。雨のピッチは言い訳にはならない」と話した。水戸・高崎に自由を許し続けたＣＢ、球際で劣勢となった中盤、チーム全体の切り替えの遅さ…。さらに、フィジカル、馬力、戦略で水戸に劣っていたのは明白だった。　

　草津は、水戸に敗れたことで北関東ダービー２連敗となった。通算成績は１分２敗の最下位で、２勝１分の水戸に大きく差をつけられた。北関東を勝ち抜けないチームが上位進出を果たすことは不可能だ。今季のチームは、新規参入チームやライバルクラブにあっさりと白星を献上するなど、負けられない試合での勝負弱さが目立つ。いくつの屈辱を受ければ、チームは目覚めてくれるのか。約１カ月後の７月25日に栃木グリーンスタジアムで行われるアウェイ栃木戦の結果次第では、チームは危険水域に陥りかねない。

以上

2009.06.22 Reported by 伊藤寿学