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【AFCチャンピオンズリーグ G大阪 vs 川崎F】川崎F側レポート:苦しい前半をしのぎ、後半の逆転につなげる。川崎Fが新たな一歩を踏み出す(09.06.25)

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6月24日(水) AFCチャンピオンズリーグ
G大阪 2 - 3 川崎F (19:00/万博/14,128人)
得点者:27' レアンドロ(G大阪)、33' 中村憲剛(川崎F)、39' レアンドロ(G大阪)、76' レナチーニョ(川崎F)、85' 黒津勝(川崎F)
ホームチケット情報 | 決勝戦は11月7日(土)に国立競技場で開催!
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ガンバ大阪側レポート

 川崎Fがついに壁を越えた。すさまじい打ち合いになったのは予想外ではあったが、らしいといえばらしい。いずれにしても、過去の悔しさを跳ね返す勝利だった。

 試合後の選手たちは一様に疲労感を漂わせていた。「先発のボランチは久しぶり」と話す寺田周平はG大阪の中盤の支配力の前にひたすら守備に追われ続け「疲れました」とこぼした。同じく中盤を動き回った谷口博之は「前半はチンチンにやられて、マジで疲れました。ポジションを取るのがやっとで…」と苦しい前半を振り返っていた。川崎Fが一方的にやられ続けた前半をベンチから見ていた横山知伸は「前半のガンバを見ていて、こんなにうまいんだ」と驚嘆したのだという。それくらいに、前半はG大阪のうまさが目立つ試合だった。

 前半のポイントは中盤でのミスマッチにある。川崎Fは、鄭大世をセンターに据えた3トップの布陣を採用。ビッグマッチにありがちな守備的な戦いを拒否する。ところがそれによって中盤の枚数が足りなくなり、ポジションを流動的に代え続けた遠藤保仁の動きを捕まえきれなくなる。その遠藤が27分にラインの裏に飛び出して決定機を作るなど、川崎Fの守備は後手を踏む状況となる。中盤を制圧された川崎Fは、全体的に後ろがかった布陣を取らざるを得ず、それがさらにG大阪の中盤でのフリーなスペースを作り出す事となる。遠藤のシュートミスで一息ついた川崎Fだったが、同じ27分にレアンドロに先制点を許してしまう。このゴールの起点となったのは、有り余るスペースでボールをもらった橋本英郎である。狙い澄ましたスルーパスを受けたレアンドロのゴールもすばらしいものだったが、そのレアンドロに橋本がノープレッシャーでパスを出せたという状況に、川崎Fの前半の苦戦が象徴的に出ていた。

 完全な負けパターンの試合の中、川崎Fは中村憲剛のゴールで同点に追いつく。33分。レナチーニョが個人技でためて中村へスイッチ。中村は鋭いドリブルでゴール前まで持ち込み最後は左足でのシュートをねじ込む。悪い流れの中で決まった同点ゴールに村上和弘は「失点の直後にすぐに返せたのが今までと違っていた、という感じがします」と勇気付けられたのだという。

 悪い前半を1-1でしのげれば、と考えていた39分の加地亮からのクロスの場面でレアンドロをフリーにさせてしまったのはいただけなかったが、前半に少なくとも5回の決定機を作られていた川崎Fにとっては、2失点で収まったのは不幸中の幸いだったといえる。

 少なくとも1点を追いつかなければならない川崎F・関塚監督の行動は素早かった。中盤の枚数を増やすべく3トップの一角だった鄭大世をベンチに下げ、後半の頭から養父雄仁を投入。中盤を厚くする。「90分出た大分戦よりも今日の45分の方が疲れた」と話す養父は、その言葉どおりに縦横無尽にピッチ内を駆け巡る。また、この日が謹慎からの復帰戦となったジュニーニョを65分というかなり早い時間帯で黒津勝に代えたのも、関塚監督の積極采配だった。そしてこの采配が結果を残す事となる。

 先日の大分戦で口の中を切っていたレナチーニョが自らプレーをやめて交代を申し出たのが75分ごろの事。「走るたびに衝撃で唇が痛かった」と腫れ上がった唇で試合後にレナチーニョが語る姿は痛々しいものだった。そのレナチーニョが、交代直前のラストワンプレーで大仕事をやってのける。76分。中央の中村からパスを受けたレナチーニョはフェイントをかけてマーカーの安田理大を外す。「フェイントした後に向こうサイドに蹴ろうと思いました」というシュートはファーサイドのクロスバーに当たってそのままゴールイン。これが同点ゴールとなる。結局レナチーニョの交代は撤回。そのままプレーを続ける事となった。

 どうしても勝ち越しゴールが欲しいG大阪は前にかかり気味になりながら試合を続けるが、その攻撃的な姿勢が川崎Fにとっては狙い通りの形を作る事となる。それが85分の逆転ゴールだった。

「相手が疲れていたのがわかったし、スペースもあった。一発のチャンスはあると思っていました」と試合を振り返る黒津勝は「今に始まった事ではないし、信じて走りました。パスのタイミングだったり、質だったりが、ゴールにつながりました」と中村からのスルーパスを振り返り「左のトーキックです。枠の中に入れようと蹴りました。思い切り打とうと思っていましたし、GKの位置も見えていました」と自身の逆転ゴールについて語った。

 終盤の劇的な逆転ゴールで試合をひっくり返した川崎Fは、同点ゴールを狙うG大阪の猛攻をしのぎ、そのまま試合終了。前半の劣勢を跳ね返し、G大阪を下す事となった。これまでにもあった大勝負で勝ちきれていなかった川崎Fが、その悔しさの歴史を転換する試合となった。「今日、払拭できたのかなと思うが、まだ最初の一歩」と謙虚さを忘れなかったのは中村。逆転ゴールの黒津も「一つ勝っただけでまだ何も掴んでいない。優勝したわけではない」と浮かれる様子はなかった。

 G大阪というビッグクラブを倒したのは事実だが、それでも川崎Fがたどり着いたのは07年と同じベスト8という場所に過ぎない。まだまだACLは続き、同じようにJリーグも続いていく。そうした状況の中、選手に浮かれる様子がなかったのがこのチームの成長なのだろう。いずれにしても悔しさの歴史を乗り越え、川崎Fが新たなる一歩を踏み出した。そんな意味深い夜になった。

以上

2009.06.25 Reported by 江藤高志
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