8月29日(土) 2009 J2リーグ戦 第36節
甲府 1 - 0 富山 (18:33/小瀬/10,527人)
得点者:83' 國吉貴博(甲府)
スカパー!再放送 Ch183 8/31(月)18:30〜(解説:堀井岳也、実況:吉岡秀樹、リポーター:横内洋樹)
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いつの頃から「ズボン」を「パンツ」と呼ぶようになったのか知らないが、今シーズンは「勝利」が「エンターテイメント」になるのかなぁとずっと思っていた。常に昇格圏内を射程に入れていたから、米軍の核の持ち込みみたいに判断をあやふやにしていたけれど、やっぱりいいものはいい。クラブ経営のことを考えれば、「勝利」と「エンターテイメント」のバランスは求めないといけないのだろうが、富山戦のようにボールを大事にして人とボールが動き続けるサッカーは面白い。ゴールの数は「1」だが、「甲府のサッカーに情熱が戻ってきた」と叫びたくなるような内容だった。退屈は飼い慣らせないが、1点しか取れないゲームでも90分間面白いと思えるゲームもある。
前半開始からよく走り、よく動いて躍動感と活力で主導権を取った甲府。早い時間帯にマラニョン、松橋優が決定機を作った。シュートは決まらなかったが、単純に見ていて面白かった。点が入らないことにイライラすることもなかったし、いつかはゴールが決まるだろうという楽観もなく、「これが甲府のサッカー」なんだという思いを持って試合を見ることが出来て、幸せな気分だった。ここ暫くは「J1昇格」という目標がサッカーの内容の足枷になっていた側面は否定できなかった。それを「勝利」と「順位」を理由に仕方がないことと心の中で納得させていたが、やっぱり人もボールも動いて躍動感を感じさせるサッカーは素晴らしい。攻守の切り替えも速く、45秒くらいで1分が過ぎていくように感じた前半だった。
そう思えたのは富山が素晴らしいサッカーをやるチームだからでもある。愛想で書いているのではない。試合後に話をした甲府の選手の誰もが富山の選手とサッカーを称えた。サッカーは相手をやっつけるためだけのスポーツではない。相手が自分たちの能力を引き出してくれるという側面がある。素晴らしい相手であればより引き出してくれる。だから相手を尊重して戦う。富山の攻守の切り替えの速さ、バイタルエリアで見せるワンタッチパスの連続があるから、甲府の選手も速く動くことを求められて、普段から求めているサッカーを発揮できた。富山の前半は28分の姜鉉守のシュート以外は決定機がなかったが、その一歩手前の場面は少なくなかったし、後半はセットプレーから決定機は作った。もちろん、富山の選手が納得いく内容ではないが、流れの中でなかなかチャンスを作れないときにセットプレーという武器を持っているのは勝つための必要な要素。後半開始直後の駒野友一(磐田)似の小田切道治のヘッド、59分の舩津徹也のヘッドは決定的だったし、キッカーの姜のボールも怖いほどよかった。ともにマーカーが吉田豊だったので、高さのないところを狙われたのかもしれないが、富山は主導権を取れないときはセットプレーという武器があることを見せ付けた。舩津が「それを決められるチームが勝つチーム」と自戒するコメントを残したのは当然だが、流れの中とセットプレーの両方の武器があるからビッグネームのいないJ2ルーキーの富山が一桁一歩手前の順位にいることが出来るのではないかと思う。
「残り15分まで0-0でもいい。富山は崩れないチームだから、最終ラインにプレッシャーを掛け続けないと隙は見せてくれない」と安間貴義監督は選手に言っていたが、この感覚で自信を持って90分間戦えるのは自信の深さが出てきた証しだと思う。普通なら主導権を取っていながらもゴールが決まらないと焦りが出てくるものだが、主導権を取られても最後の部分で粘るチームは少なくない。富山はその典型で、ディフェンスラインは我慢強かった。そこで、甲府が根負けして焦れてしまえば今度は富山がカウンターやセットプレーで盛り返す番になるが、甲府の選手は焦れることなくやり続けてそれを出来るだけ防いだ。
片桐淳、森田浩史と投入していく中で、今節の甲府はバランスを崩すことなくフレッシュな選手が効果的に富山のディフェンスラインにプレッシャーを掛け続けることが出来た。そして、若い真打が81分に登場する。「次に動くスペースが見えてくるようになった。『ここにボールが出たときは、あそこに入ればディフェンダーは付いてこられない』ということが分かるようになった」という、決定力王子の國吉貴博。今シーズンは3試合にフル出場したのとほぼ同じ、287分の出場時間しかないが4ゴールを決めている。数字を挙げるまでもなく、印象では終盤に降臨する勝利の神様。彼は登場から2分でデカイ仕事をやってくれた。森田がクサビとなって落としたボールを受けた杉山新がドリブルでディフェンダーを引き付け、その空いたスペースを決定力王子は見逃さず、杉山が出したボールをワンタッチでゴールに蹴り込んだ。森田は「ワンタッチで蹴るか?」と瞬間的に思ったそうだが、同時に小瀬はドカーンと沸いた。これぞ、ノッてるストライカーの自信が成せるシュート。素晴らしい。「無回転シュートではなく、ちょっとシュート回転になった(國吉)」ということだが、富山のGK・中川雄二は殆ど反応できなかった。
湘南が福岡に勝ったために30分間の暫定首位だったが、今季クラブ初の首位をチョットだけ楽しめた甲府。記者会見で、「前からプレスを掛けられるようになって、もう1回確認出来たことはよかった」と安間監督が話したが、小選挙区比例代表並立制みたいに「勝利」と「エンターテイメント」の両立を果たした勝点3がどれだけの情熱と活力をもたらせるのかを確認出来たこともよかった。これが甲府の生きる道だし、小瀬に多くのサポーターが来てくれるようになった原点でもある。山梨県の誇りの頂点にヴァンフォーレ甲府が立つための道筋は見えた。奢ることなくこの道を進み続ければ絶対にJ1に昇格出来るし、J1でも一目置かれるサッカーが出来ると思えた素晴らしい夜だった。
以上
2009.08.30 Reported by 松尾潤
J’s GOALニュース
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