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【J2:第36節 仙台 vs 岐阜】レポート:またしても中原貴之が大仕事。岐阜を相手に内容では苦しんだが、勝点3奪取のために貫いた攻撃姿勢が、ロスタイムに歓喜を生む。(09.08.31)

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8月30日(日) 2009 J2リーグ戦 第36節
仙台 2 - 1 岐阜 (18:04/ユアスタ/11,810人)
得点者:28' 西川優大(岐阜)、42' 平瀬智行(仙台)、89' 中原貴之(仙台)
スカパー!再放送 Ch185 9/1(火)12:00〜(解説:鈴木武一、実況:松尾武、リポーター:村林いづみ)
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 エリゼウは両手で天を指しながらひざまづく。菅井直樹は腰からへたり込み、放心状態の表情。その逆サイドでは朴柱成が、つっていた足を気にしつつ倒れている。ディフェンスラインの選手だけでなく、前線の方に目をやっても同様の光景が。
 前日に3位湘南と4位甲府が、共に劇的な1-0の勝利を収めていた。仙台と同じく日曜日開催だった1位C大阪と5位水戸もしっかりと勝点3を得ていたため、仙台だけが引き分けたとなると、状況は厳しいものとなっていた。
内容は手放しで褒められるものではなかったが、勝ち方の劇的さでは、他の上位クラブを間違いなく上回った。自分たちが受けていたプレッシャーを、倍にして他クラブにはねつける勝利だった。
 それにしても、疲れたことは確かだが。

 試合の立ち上がりから、仙台は岐阜の守備に悩まされることとなった。敵陣で良い形でボールを奪い、普通ならばここからチャンスが生まれそうな場面でも、岐阜は守備ブロックの素早い構築で対応、仙台にボールを打ち込むべきスペースを与えない。
 もしブロックを作られようとも、そうであるならば逆サイドへ振るなり対策はあったのだが、その部分でこの日の仙台の攻めは、スピードとダイナミックさに欠けた。関口訓充の突破を起点に、受けた梁勇基がダイレクトでスルーパス、完全に裏を取った中島裕希がペナルティーエリア内で倒れるもののPKをもらえなかった20分のシーンを除き、仙台は決定機を得られず。
 一方で岐阜は、時間が経つ毎に攻めの脅威が増していった。西川優大、片山真人の大型2トップは、徐々に仙台の両センターバック、エリゼウと渡辺広大に競り勝ちはじめ、そこでのこぼれ球をダイヤモンド布陣の中盤が拾うことで起点を構築。さらにそこにサイドバックも絡んで、一旦は仙台を押し込むまでの攻めを見せた。そしてこのように攻めにかかっても、守備のバランスは崩れない。第2クールの同対決では、攻め上がった左サイドバック秋田英義の裏を仙台に狙われたのだが、今節はディフェンスラインが全体的に流れていくことでスペースを埋めるなど、岐阜の成長はこの辺りにも見えた。

 そんな展開の中、仙台の重なったミスにつけ込んで、岐阜が先制点を奪う。きっかけは仙台のCKから。クリアされたボールがハーフウェイライン付近へ跳ね返されるが、カバーに残っていた朴のボールへのチェックがミスチャレンジとなり、ボールを拾って入れ替わるように抜け出した嶋田正吾が長いドリブルで仙台ゴール前まで持ち込む。このチャンスは、最後尾に残っていた永井篤志が自陣ペナルティーエリアまでよく戻ってボールを奪い返したことで一旦は消えるのだが、奪った後の永井が出しどころを探している間に、再び後方から忍び寄ってきた嶋田がボールの奪還に成功。仙台ゴール前にボールがこぼれると、仙台守備陣の混乱を尻目に、最後は西川がGKもかわしてシュートを決めた。仙台としては、あまりに嫌な流れである。

 だが、内容が悪いなりに、それでも仙台は同点に追いついてハーフタイムを迎えることが出来た。42分、ペナルティーアーク内でFKを得ると、梁は意表を突いたグラウンダーでのシュート。このボール自体は右ポスト跳ね返されるのだが、ゴール前に戻ってきたボールを巡る混戦から、千葉直樹のシュートのこぼれ球を平瀬智行が押し込んだ。試合の結末を考えると、このゴールは大きな一発となった。

 後半に入っても、流れを大きくは変えることが出来ずにいた仙台。むしろ足の具合が明らかに「稼働限界時間」を迎えていた朴のいる左サイド(岐阜の右サイド)を、岐阜は嶋田を中心に積極的に突いてきたことで、岐阜にいつ勝ち越し点が加わってもおかしくない、ピッチは一進一退の状況に。
 しかし仙台には「勝ち以外、納得できない」というチームの明確な意志があった。そのことが、手倉森誠監督の采配に明確な方向性を生み、チームも結果的にそれに応えることに。最後となる3人目の交代で、足が限界だった朴を下げず、中島からマルセロ ソアレスへの交代を敢行したのだ。「ここをカウンターで狙われることは覚悟していた」と監督は試合後に語ったが、確かにリスクの高い決断。だがこうして武器となるべき駒を残しておいたことが、最後に最高な形で報われることとなる。

 目安3分のロスタイムで2分が経過していた時間、足をすでにつりながらも奮闘していた朴が左サイドで受け、少し持ち上がる。しかしこの「少し」が重要だった。ある意味仙台以上に限界を迎えていた岐阜の守備は、前からのチェックもままならず、ゴール前に張りつかざるをえない状況だったため、朴にまでチェックが及ばない。それにつけ込む形で、フリーのままクロスの「射程距離」まで持ち上がった朴が、力を抜いて前線へ狙いすましたクロスを入れる。DFとDFの隙間に落とし込むような朴のクロスに、ファーサイドから助走をつけて合わせたのは、スタメン起用が予想されながら、この日もベンチからの出場となっていた中原貴之。しかし、試合の前日に監督から起用についての説明を受け、迷いの無くなっていた中原は、この一瞬に素晴らしい集中力を発揮。しっかり合わせたヘッドが、GK野田恭平の手をかすめて、ゴールの左下隅へ吸い込まれる。
 前節は同点ゴールのため喜びは控えめだったが、時間的にも今回は決勝ゴールでほぼ間違いない。クールな中原が、何度も飛び上がって喜びながら、ハーフウェイライン付近まで歓喜のランニング。試合の残りわずかの時間を経て、仙台は勝点3、そして冒頭の光景へと何とかたどり着いた。

以上
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