今日の試合速報

チケット購入はこちら

J’s GOALニュース

一覧へ

【J1:第24節 川崎F vs 清水】レポート:ロスタイムの等々力劇場再び。激しい戦いは両者の痛み分けに終わる。(09.08.31)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

8月30日(日) 2009 J1リーグ戦 第24節
川崎F 1 - 1 清水 (19:03/等々力/20,689人)
得点者:77' 岩下敬輔(清水)、89' 伊藤宏樹(川崎F)
スカパー!再放送 Ch308 8/31(月)16:45〜(解説:水沼貴史、実況: 西岡明彦)
勝敗予想ゲーム | 皆の投稿で作るスタジアム情報
----------
 ロスタイムでのドラマはこれで何度目になるのだろうか。土壇場まで追い詰められた川崎Fが、試合終了間際に執念を見せつけた。

 前日の鹿島の敗戦を受けた2位3位の等々力での直接対決は、清水がペースを握る展開となっていた。清水の原動力は、岡崎慎司とヨンセンとが組む2トップ。森勇介の「相手は前の2枚が良かった」との言葉を皮切りに多くの川崎Fの選手が彼らのプレーに脱帽しており、実際にこの2トップの破壊力は強烈だった。清水はシンプルに前線へクサビのパスを入れると、これをヨンセンと岡崎とが確実にキープして時間を作る。それによって心置きなく中盤の選手が前線へとフォローに入り、分厚い攻撃を実現していたのである。
 ただ、川崎Fも一方的にやられていたということではない。たとえば、試合開始直後の1分に矢島卓郎がスピードを生かした突破を見せ、ジュニーニョに合わせた場面や、9分に右サイドを崩してのクロス。一度は跳ね返されるが、このこぼれ球を田坂祐介がシュートするなど、それなりにチャンスは作れていた。ただ、それでも決定的な形を作っていたのはアウェイの清水であり、その攻撃を組み立てる原動力となっていたのは、前線の2枚のしっかりとしたボールキープだった。

 ハイレベルなプレーをみせていた清水の2トップのほかに、川崎Fの試合運びを難しくしていたのが前半13分の矢島の負傷による交代だった。前半のかなり早い時間帯で交代カードを一枚使わざるを得なかった関塚隆監督は「同じところでカードを引かざるを得ないため、次のオプションを使えなかった」と会見で明らかにしている。さらに言うと、その矢島に代わってピッチに立ったのが、この1週間で4試合目となる鄭大世だったところに川崎Fの試合運びの難しさがあった。鄭大世は、台湾で行われた東アジアサッカー選手権準決勝大会に北朝鮮代表として参加。2試合に先発フル出場している。「高校生以来です」という中1日での3連戦(8/23の山形戦から)を終えての試合出場だったが、泣き言を一切口にする事はなかった。ただ、実際のところ鄭大世にとってタフな試合になっていたのは間違いない。試合内容的にも清水の分厚い攻めの影響でボールタッチの回数はどうしても少なくなっており「ボールに触れる数が減っていた。リズムも出てこなかった。最後までどうすればいいのかわからなかった」と苦悩の試合を振り返っている。

 立ち上がりこそ互角ながら、徐々にペースを奪われ、次々と決定機を作り出した清水の攻撃を止め続けたのが川島永嗣だった。前半22分の右サイドの岡崎からヨンセンに合わせたクロスをはじき出したプレーを皮切りに、24分には太田宏介のミドルシュートをファインセーブするなど、鬼気迫るプレーでゴールを守り続けた。淡々と「流れも良くなかったので、それを断ち切れるようにプレーしていました」と自身のプレーについて振り返っているが、これらのシュートが1本でも決まっていれば清水の優勢は決定的なものとなっていた。それだけに、川島の安定感のあるプレーは試合を振り返る上での重要なポイントとなっていた。

 お互いに先制点がほしい試合は、後半に動く事となる。「前半は特にうちのミスが多かった」と話す伊藤宏樹は「失点のところもミスだった。今日は内容的にダメでした」と頻発したミスがペースを崩す一因だったと指摘。77分の失点の場面も、川崎Fの攻撃時のパスミスが結果的に清水のCKになり、それが岩下敬輔のゴールにつながる事となる。
 アシストした市川大祐は「ファーに3人ほどいたのがわかっていた。そこに入れれば合うと思った」と話しているが、入れたいと思った場所に合わせられるクロスの技術はさすが。ここ数試合の清水の堅い試合運びを考えれば、川崎Fがゴールをこじ開けるのは非常に難しい状況であり、すでに交代カードを3枚使いきっていた事も悲観的な見方を加速させていた。

 しかし、そこで川崎Fの選手は心を折らす事がなかった。鹿島との勝点差を縮める絶好機である事はもちろん、ホームで負ける訳にはいかないという強い思いが彼らを突き動かしていた。公式記録上は89分だが、実際は3分と掲示されたロスタイムが1分経過した後半の91分。左サイドで得たFKの場面を得点に結びつける。「相手のGKの前に蹴ろうと思っていました。選手が入り乱れていたんで、前に入れられればGKはノーチャンスになる。そこを狙っていました」と話す中村憲剛のボールはピンポイントで伊藤の頭へ。「いいボールが出てきました。いつも狙っている形でした」と振り返るシュートがゴールネットを揺らした。俄然勢いづく川崎Fは、ホームサポーターの声援の後押しを受け逆転ゴールを狙うが、そうはさせじと清水も集中。結果的に1-1の痛み分けとなった。

 鹿島追走の一番手である川崎Fの試合後の各選手の表情は複雑なもので、負けなくて良かったという前提の上で「勝ちに等しい引き分けだったと思います」と鄭大世が話す一方、「失点して、最後に点が取れたのは良かった。今日は最低限の結果です」と悔しさをにじませた菊地光将のような反応もあった。総じてディフェンス陣は悔しさを表明しており、攻撃陣の前向きな発言と対極をなしていた。
 鹿島が負けた節で勝ちきれない川崎Fは、同じ轍を踏んでしまった形だが、それでも勝点差を1点縮める事に成功。負け試合でもおかしくはない試合内容だった事を考えれば、良かったと捉えるべきなのかもしれない。

 一方の清水は、土壇場で追いつかれた結果、広島と勝点で並ばれ得点数の差で4位へと後退。決して内容が悪かったわけではないだけに、悔しい引き分けになったと言えそうだ。

以上

2009.08.31 Reported by 江藤高志
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

旬のキーワード

最新動画

詳細へ

2025/12/21(日) 10:00 知られざる副審の日常とジャッジの裏側——Jリーグ プロフェッショナルレフェリー・西橋勲に密着