9月2日（水）ヤマザキナビスコカップ 川崎Ｆ vs 横浜FM（19:00KICK OFF/等々力）
★ヤマザキナビスコカップ特集
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　ヤマザキナビスコカップで2度の準優勝を経験する川崎Ｆの、前回の決勝進出は07年の事。そのときの準決勝での対戦相手は今季と同じ横浜FMだった。07年10月10日にアウェイで行われた初戦を川崎Ｆは2-1で勝利。有利な状況の中、3日後の等々力での第2戦で川崎Ｆは、いきなり先制点を奪われてしまう。試合内容も押されぎみで、0-2で試合を終えれば逆転できる横浜FMが猛攻を仕掛けていた。そんな時間帯にチームを救ったのが伊藤宏樹だった。誰もが想像だにしなかった強烈なミドルシュートは試合の流れを一変させ、勢いづいた川崎Ｆは4ゴールを積み重ねて快勝。決勝進出を決めるのである。

　あの試合からまだ2年。しかし、選手にとってはもう2年という言い方もできそうである。「そういえばそういう事もありましたね」と話すのは伊藤。自身がJ1で初めて決めたメモリアルゴールであり、川崎Ｆを決勝進出へと導くきっかけとなった貴重なゴールだったにも関わらず、あのゴールは伊藤の記憶からは完全に消えていたという。過去の栄光にすがっていても今現在の結果を手にする事はできないという事なのか、それともこのわずか2年間という期間で経験した出来事が大きすぎるのか。

　いずれにしても、悲願の初戴冠に向け、準決勝の舞台がやってきた。対戦相手は、前述の通り07年と同じ横浜FM。伊藤のエピソードでも明らかな通り、川崎Ｆの選手たちの2年前のヤマザキナビスコカップ準決勝の記憶はそう深くはない。それはおそらく「すばらしかった」と寺田周平が回想する決勝の舞台を経験しているからであろう。川崎Ｆにとっての2年前のヤマザキナビスコカップという物語は準決勝後も続いていた。そしてその「すばらしい」物語の舞台で味わった挫折の記憶は強烈だった。それは鮮烈なゴールを決め、チームを勢いづかせた選手自身が、そのゴールを忘却の彼方へ追いやった事実から明らかである。そして、だからこそ、川崎Ｆにとってのヤマザキナビスコカップ決勝は技術、体力、知力、そして気力を総動員してでもたどり着かなければならない場所なのである。悲願となったタイトルへの思いとは別次元の想いがそこにはあるのである。

　そんな川崎Ｆにとっての不安材料を挙げるとすれば、攻守の要である中村憲剛と川島永嗣の不在であろう。彼らは日本代表のオランダ遠征メンバーとして招集されており、準決勝の2試合は彼ら抜きでの戦いとなる。大きすぎる中村の影響については誰もが認めるところであり、また清水戦の活躍を見るまでもなく川島の存在が放つ安定感はチームの戦いの基盤となっている。チームの屋台骨とも言えるこの両選手の不在によって川崎Ｆのサッカーはどうなるのか。特に中盤での組み立てがどのような影響を受けるのかには注目しなければならないだろう。

　ただ、日本代表2選手の不在のチームを預かる選手たちは強い気持ちを持っている。たとえば寺田は「彼らがいない間に負ける訳にはいかないですし、決勝で一緒に戦いたいという気持ちはあります」と必勝を期していた。あの「すばらしい」舞台で共に戦いたい、という気持ちを強く持っていた。

　川崎Ｆは第9節の横浜FMとのアウェイマッチで敗戦しており、その反省をベースにしたゲームプランを練ってくるはず。特に山瀬功治、坂田大輔の両選手のスピードでやられた失点については修正されるはずである。そこにチーム内得点王の渡邉千真や狩野健太といった選手が絡む攻撃には注意が必要であろう。その一方で、中村、川島らと共に代表招集された中澤佑二の穴をどのように埋めるのかが注目される。良くも悪くも中澤は川崎Ｆ戦で目立つ事が少なくなく、試合に大きな影響を及ぼしてきている。中澤不在が試合にどのように変化するのかには注目したいところだ。

　ホーム＆アウェイ方式のヤマザキナビスコカップ準決勝は、まずは川崎Ｆの本拠地である等々力で第1戦が行われる。横浜FMにアウェイゴールは生まれるのか、それとも川崎Ｆがそれを阻止するのか。奇しくも2年前と同一のカードとなったこの準決勝はどのような結末を見るのであろうか。

以上

2009.09.01 Reported by 江藤高志