9月2日（水）J2 第37節 甲府 vs 愛媛（19:00KICK OFF/小瀬）
スカパー！生中継 Ch185 18:50〜（解説：横森巧、実況：前田真宏、リポーター：石河茉美）
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今節の小瀬は小型連勝対決。徳島戦（第35節、1-0）、富山戦（第36節、1-0）と、前線からのプレスと細かいパス回しの融合で原点回帰を果たした甲府は2連勝中。対して、11試合勝ち無しのトンネルを抜けて3連勝中の愛媛は、8月にドドーと大量に選手を補強した効果がこれから出始める時期に来ていると言っていいだろう。システムは甲府の4-3-3、愛媛の4-4-2とスタート位置の違いはあるが、前線からしっかり守備に入るなどJ2リーグのトレンドでは重なる部分が少なくない。

愛媛との第1クールの対戦（第12節）はアウェイで立ち上がりにDFとGKの連携や判断のミスで失点し、その後もいいところを見せることが出来ずに0-2で敗れ、第2クールの対戦（第19節）はホームで3-0と勝っている甲府。シーズンの積み重ねでは4位と14位の差がついているが、1試合という刹那単位では五分の間柄。しかし、成熟の第3クールは刹那単位でも勝たなければならない。上位4チームが勝点1差の中にひしめきあっている状態では、ポロポロこぼすわけにはいかない。しかし、J2のチームで「こぼす」なんて表現を使っていいチームは1つもない。結局は先のことを考えずに、目の前の愛媛に全力で挑戦して戦った結果、「さて順位はどうなるでしょうか」、ということをまだまだ続けるしかない。

甲府はケガ人が予想以上に出たことで、多くの選手が入れ替わり立ち替わりチャンスを奪い、それを手放してきた。第3クールに入った今は、ケガ人の多くが戻ってきて全員揃ってのガチンコ・レギュラー＆ベンチ争いが始まっている。そのなかで今節注目したい選手のひとりが美尾敦。6月3日の第19節にベンチに入って以来、スタンドで試合を見ることに耐えてきた。しかし、今節は出場の可能性がある。
「ベンチを外れても腐らずにやってきたつもり。どんな状況でチャンスをもらえるか分からないけれど、チャンスをもらったときのゲーム状況を尊重してやるだけ。これまで試合に出てきた選手で今節のベンチに入れない選手もいる。そういう状況でチャンスをもらえれば、出る選手は責任を果たさないと駄目」
ベンチから外れてしばらくは、「（出場給と勝利給で）子供のミルク代を稼がないとね」なんて冗談を言っていたが、本音は「自分の生き残りのために活躍しないと駄目」ということだろう。それでも、「國吉（貴博）みたいに、俺にいろいろ聞きに来てくれた選手が活躍していることは嬉しい」と言う。安間貴義監督は「自分のプレーのリズムを出している」という点を評価してベンチ入りのチャンスを与えた。今節、美尾にどんなチャンスが巡ってくるのか分からないが、どんなに短い時間でもいいから美尾がやり続けてきた気持ちを発揮する姿を見たい。

美尾だけではない。ケガから復活した池端陽介も7月8日（第26節）以来の出場の可能性のある選手。「自分が出ていなくてもチームが昇格圏内を射程に入れていると、『俺は必要ないのか』なんて不安にならない？」と聞くと、「若い頃ならそうなったかもしれないけれど、年を取ったせいかチームがいい状態なら関係ないです」と答える。FWとDFの両方で彼を起用してきた安間監督に言わせると、「FWをやりたくて、やりたくて仕方がないDF」という立場にいるが、（FWで起用される）パワープレーではジャンプした後に空中でもう一歩踏み切ることが出来るという、人類の運動神経を超越した跳躍力でクロスボールに合わせる必殺のストライカーでもある。真打の座を國吉だけには独占させない脅威の運動神経が魅力。また、第2クールは殆ど出場のチャンスがなかった松橋優も2試合連続の先発のチャンスに賭ける。「甲府でJ1に昇格するのが目標の原点」と、移籍してきた初心に返って走り回る。2回目のチャンスを掴んだ選手、ケガから復帰した選手の貪欲さがチームにどんどん活力をもたらしてくれる第3クール。ここからが甲府を本当に熟成させる面白さを味わうことが出来る季節。

愛媛にもチアゴや内田健太ら移籍でチャンスを掴もうとする選手が少なくないし、甲府に在籍していた田森大己、ジョジマール、アライールもチャンスを掴むために愛媛にいる。不動のレギュラーとして活躍している選手ではない、生き残りを賭けた選手の戦いにも注目して今節を楽しんで欲しい。

以上

2009.09.01 Reported by 松尾潤