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【J2:第4節 横浜FC vs 徳島】レポート:完成度とポテンシャルのぶつかり合い。濃密な内容となった「序盤の天王山」は、ゲームプランを完遂した徳島に軍配が上がる。(10.03.29)

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3月28日(日) 2010 J2リーグ戦 第4節
横浜FC 1 - 2 徳島 (16:03/ニッパ球/4,583人)
得点者:11' 津田知宏(徳島)、74' 津田知宏(徳島)、80' 大黒将志(横浜FC)
スカパー!再放送 Ch183 3/29(月)20:00〜(解説:関塚隆、実況:中村義昭、リポーター:三須亜希子)
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横浜FC、徳島ともに3連勝で迎えたこの試合。一部では、少々大げさに「序盤の天王山」という位置づけでも語られていたが、その大げさな前評判に違わぬ濃厚な内容を見せた試合となった。

試合の基本的な流れは、リスクを抑えながら津田知宏、平繁龍一のスピードに賭けた徳島のゲームプランがベースとなっていく。前半の立ち上がりこそ、大黒将志が積極的にボール奪取に加わり寺田紳一がシュートを浴びせる場面を作るが、前半10分に徳島が裏のスペースへロングボールを出すと津田が反応。渡邉将基が対応が遅れたところを津田が入れ替わり、渡邉が津田を倒してPKを献上してしまう。このPKを11分に津田がそのまま決めて、徳島が先制を果たす。この先制点を機に、ロスタイムを含む残りの80分余りは「守備ブロックを作り鋭いカウンターを狙う徳島」を、横浜FCがいかに攻略するか、という展開となる。横浜FCは、大黒を中心に得点の匂いをさせるプレーを繰り出すが、徳島もひとたびボールを奪うと、柿谷曜一朗の個人技を織り交ぜたパスワークで横浜FCのプレッシングをかいくぐってチャンスを演出する。このように、両チームともに長所を生かした仕掛けを行うが、一方で組織的な体を張った守備を見せる息をつかせない展開で前半を終了する。

ハーフタイムに、岸野靖之監督はサーレスと田中輝和の2枚を難波宏明と片山奨典に代え、サイド攻撃の活性化とそれによる中央での決定機の演出を狙う。「アグレッシブなプレーがチームに元気を与えた」(岸野監督)という難波のプレーは、サーレスとは別の形で徳島の守備陣に脅威を与え、片山がビルドアップに参加することで徳島の守備陣の重心を横浜FCの左サイドに傾ける役割を果たした。しかし、後半になっても徳島の中盤でのパスワークが素晴らしく、横浜FCが中盤で狙い通りのボールの奪い方ができない。そのため、横浜FCがボールを奪ってもすでに徳島の守備は整っており、数的優位をなかなか演出するには至らなかった。そして、後半20分、徳島は横浜FCにとっての天敵・島田裕介を投入。すると、その交代が的中する。後半28分、徳島のスローインに対して数的優位を保っているにも関わらず渡邉がファールを与える。そして島田がニアサイドに蹴ったFKに再び津田が飛び込み見事な追加点を挙げる。その後、横浜FCはさらに攻撃を強め、後半35分の大黒のナイスゴールで1点を返すものの、それ以上徳島守備陣を崩すことはかなわず、徳島がゲームプランを完遂する形で逃げ切りに成功した。

ゲーム全体を見れば、開幕から徳島が見せつけている高い完成度、そして横浜FCのポテンシャルがぶつかり合う好ゲームであったことは間違いない。その中で勝負を分けたのは、ゲームプランに対する集中度の差であった。

試合前から、緊迫したぎりぎりの展開となることは予想されていた。その中で、岸野監督が「1つ1つが甘い」と振り返ったように、集中を欠き、失点に繋がる細かなミスを先に見せてしまった部分が、横浜FCの課題として残った。徳島が引いた展開ではあったが、ゲーム終了まで見せ続けた迫力のある攻撃、そして「大黒のニアに飛び込むというのも研究済みですが、やられました」(美濃部直彦監督)というように、大黒の1ランクも2ランクも上のレベルのゴールなど、上位にふさわしいプレーは見せ続けた。しかし「勝たなあかん」を実践しつづけるために、やってはいけないプレーがあることを改めて学んだと言える。元々、今年の横浜FCは勝ちながらチームを作っていかないといけない宿命を負っているだけに、この試合で示された課題を次の富山戦で必ず解消する必要がある。

徳島にとっては、ほぼ完璧なゲームであり、横浜FCのお手本となるような試合運びであった。美濃部監督のスカウティングと、相手に合わせた戦い方に注目が集まっているが、その戦い方に応えられるチームの成熟度の高さは本物であり、この4連勝という結果が偶然でないことは明らかである。3ラインの守備ブロックと、機を見たカウンターを繰り出す姿は、2006年にJ2優勝を果たした横浜FCの戦い方を彷彿とさせるものがある。この試合は、その戦い方にまんまとハマった形だが、強いて心配事を挙げれば、まだリードを許す展開になっていないことか。それでも、この戦い方をどこまで続けられるか、これからが楽しみである。

第4節ながら、シーズン終盤戦の上位対決に匹敵する程の熱い試合。試合後のスタジアムで、両チームのサポーターから拍手が起こったことがその証明となった。ただ、岸野流に言えば「頑張って内容が良くても、勝たないと何も残らない」。次の試合からは、勝利をたたえる拍手でスタジアムが埋め尽くされることを祈りたい。

以上

2010.03.29 Reported by 松尾真一郎
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