3月28日（日） 2010 J2リーグ戦 第4節
東京Ｖ 0 - 2 柏　（16:03／味スタ／4,608人）
得点者：73' レアンドロドミンゲス（柏）、76' 林陵平（柏）
スカパー！再放送 Ch183 3/29（月）22:30〜（解説：柱谷哲二、実況：桑原学、リポーター：大竹七未）
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敗れている以上、決して「良し」とはできないが、東京Ｖは一つ良化は示せたのではないだろうか。

この試合、川勝良一監督が選手たちに最も求めたのは「まずはゲームを戦っているという姿勢を強く見せること」だった。その点については、試合後の会見でも「0−2でゲームを落としましたが、前の2試合とは全く違う」という言葉で、前進を認めている。実際、立ち上がりから全員が攻守にわたってアグレッシブに走り、2連敗の悔しさは前面に表れていた。特に前半は、高木俊幸、河野広貴、飯尾一慶、高木善朗ら攻撃陣の守備意識が非常に高く、柏の中盤にほとんどボールを収めさせなかった。ボランチの柴崎晃誠、菊岡拓朗もタイミング良く出て前でボールが奪えていたため、主導権を握ることができていた。

しかし、後手に回った柏のDFに対し、前半10分土屋征夫のロングパス1本から河野、15分バーに弾かれた菊岡の直接FKなど、早い時間から決定的場面を迎えながらも逸機。さらに後半開始早々の4分、柏にリズムが傾きかけたところで、菊岡のパスに高木善が絶妙な切り返しから放った好シュートも再びクロスバーに嫌われてしまった。こうした、チャンスに決めきれない部分が、東京Ｖが抱える現実的な大きな課題であることもまた改めて浮き彫りになったとも言えよう。

逆に柏は、前半の東京Ｖの激しいプレスに手こずりながらも何とか凌ぐと、ハーフタイムでネルシーニョ監督が早速動く。前節、念願の初ゴールを決め調子の上がっているFW工藤壮人を投入し、左サイドの大津祐樹を1列上げ、ボールが収まらず機能しなかった1トップから2トップへ。そして、中盤をBOX型へと、勝利した前節の福岡戦同様にシステムを変更した。効果はてき面だった。一変してポゼッション率の上がった柏は、前半のハードワークの消耗で東京Ｖのスペースが空いたところを上手く使い、フリーでボールを持って徐々に中盤を支配し始める。

そして後半28分、均衡が破れた。途中出場の林陵平がDFの間のスペースに出したパスにレアンドロ・ドミンゲスが走り込んで柏が先制する。マークについていた、平本一樹は「今季サイドバックをやってきた中で、初めてマークの選手に点を取られてしまってすごく悔しい」と、厳しい表情で振り返った。さらに3分後の同31分には、東京Ｖの中盤のパスをカットした茨田陽生がそのままドリブルで右サイドを突破し、その折り返しへの競り合いでこぼれたボールを林が頭で押し込みリードを広げた。林にとっては嬉しい嬉しい得点だったに違いない。この対戦をずっと楽しみにしており、「絶対に決める」と、宣言して決めた有言実行ゴール。試合前、「もし点を決めても、多分喜びません」と語っていたようだが、実際、決めた瞬間に力強く握ったガッツポーズに喜びの全てが表れていたのではないだろうか。一方、昨季同じチームで戦っていただけに、林のゴールは東京Ｖにとっては非常に悔しいものとなった。

柏は、これで2試合連続の無失点となった。堅守の要因をGK菅野孝憲は「崩されても周りが助けられていますし、みんな体を張っているのはもちろんですが、それプラス 『雰囲気』」だと語る。この試合でも、2本のシュートがバー直撃で失点を免れたが、こうしたわずかな部分の運不運に雰囲気が作用するという。それを感じられるだけの雰囲気を、今の柏は持ち合わせているということだろう。内容以上に『勝利』で力がつくことは言うまでもない。厳しい試合をモノにしながら、柏はチームとして着実に力をつけているようだ。だが、「前からあれだけ激しくプレスをかけられて、バタバタしてしまった。それを2試合続けているのは課題」とも菅野は指摘する。これらの部分は、早急に改善が必要だろう。攻撃面も、監督が会見でも口にしていたが、フランサ不在の影響を周囲に感じさせてしまうあたりは、これからも課題が残る。しかし、前節の工藤、今節は林、さらに澤昌克、茨田など新しい戦力が結果を出しているのは大きなプラス材料だ。彼らの成長こそ、J1昇格のためには必要不可欠な部分に違いない。

東京Ｖは、残念ながらこの試合も1点が遠かった。しかし、ここまで足りなかった「あと一歩」「あと1m」の緩さは改善されていたように思う。前節と違い、試合後の選手を迎えたのがサポーターの大歓声だったことに、『内容の良化』は表れていたのではないだろうか。3連敗という結果は非常に厳しいが、「未熟さを受け止めて前向きにやっていくしかない」というキャプテン富澤清太郎の言葉が、今の東京Ｖにできることの全てだ。

以上

2010.03.29 Reported by 上岡真里江