★ヤマザキナビスコカップ特集ページ
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「手が届きそうで、なかなか届かないタイトル」。長谷川健太監督はヤマザキナビスコカップをそのように表現した。しかし、それに続く言葉は「今年こそ……」。長谷川体制6年目で、本当に今度こそ初タイトルをつかむためには、まず予選を突破しなければ何も始まらない。そのためには、ホームで迎えるこの初戦は、何としても勝点3を取らなければならないゲームとなる。
ここまでのリーグ戦では清水は2勝2分、無敗で2位。プレシーズンマッチも含めて、今季は1度も負けていない。攻撃的な4-3-3へとシステム変更を行なったが、その中でわずか1失点(その1失点もPKで、後日誤審と判断されたため、実質的には無失点)と堅守を維持していることが、安定した戦いにつながっている。もちろんそこには、前線の選手が素早い攻守の切り換えを見せ、カウンターをうまく防いでいることも大きく貢献している。
また、メンバーを固定しすぎて終盤に疲弊してしまった昨年の反省を踏まえ、早くから相手に応じて少しずつメンバー変更を行なっていることも、今季のチャレンジのひとつ。それでも大きな破綻はなく、交代で入った選手がよく活躍していることも、今年の選手層の厚さを物語っている。記録上でも、リーグ戦での5得点のうち、途中出場の選手が決めたのが3点。これも、昨年までは見られなかったプラス要素だ。
そうした流れもあって、今季はヤマザキナビスコカップでも大胆な選手起用が示唆されている。もちろん結果が最優先だが、チャンスを得た選手たちが思いきりプレーすることで、新たな力が生まれてくる可能性もある。
たとえば、月曜に行なわれた紅白戦の通りにスタメンが組まれれば、GKは5年目の武田洋平が公式戦初出場を果たすことになる。「キャンプから調子が良いので、自信を持ってやってほしい」と長谷川監督が期待を寄せる武田は、年代別の代表に何度も選ばれてきた逸材。ただでさえ厳しい正GK争いにチャレンジする彼のプレーには、大いに注目したい。
その他にも、3トップは右に永井雄一郎、中央にヨンセン、左に大前元紀という組合せになることが濃厚。そうなれば今季初出場となる永井も、「1対1の形を作れれば、どんどん勝負していきたい」と、持ち味を発揮しやすいポジションで意欲を見せる。トップ下に移動する藤本淳吾も含めて、非常に楽しみな攻撃陣となりそうだ。
一方、湘南のほうは、前節のホームゲームで新潟からJ1で11年ぶりの勝利を挙げ、ムードは非常に良くなっている。ただ、湘南としてはリーグ戦でのJ1残留が今季の最優先課題。そう考えれば、逆にヤマザキナビスコカップではリーグ戦ではできないチャレンジをすることも可能だ。チームの底上げを図る意味でも、こちらもある程度スタメンを変えてくる可能性がある。またリーグ戦では我慢強い戦いを強いられている分、ヤマザキナビスコカップではよりアグレッシブに戦ってくることも十分に考えられる。
少なくとも、「(予選は)ホーム&アウェイではないので、ホームで確実に勝点3を稼ぐことが本当に大事」とキャプションの兵働昭弘が語るように、結果にも大いにこだわらなければならない清水よりも、湘南のほうが精神的には思いきった戦いをしやすいだろう。
そんな中で、清水にとっての大きな課題は、試合への入り方だ。過去2試合では、立ち上がりで慎重さが目立ち、とくに神戸戦では最後まで自分たちのリズムを作りきれなかった。湘南は先制点を取られると非常に苦しくなるということを考えても、勝点3をつかむためには、湘南が自分たちのリズムをつかむ前に攻勢をかけ、先制点を奪うことがもっとも効率的だ。
今年初のナイトゲームで、メンバーも変わる。条件としては入り方が難しい状況だが、それでも慎重になりすぎることなく、キックオフ直後からエンジンをフル回転して目指す攻撃を形にすることができるのか。フレッシュな戦力の思いきったプレーに、大いに期待したい。
以上
2010.03.30 Reported by 前島芳雄













