5月22日(土) 2010 J2リーグ戦 第14節
岐阜 1 - 0 水戸 (13:04/長良川球/2,473人)
得点者:50' 嶋田正吾(岐阜)
スカパー!再放送 Ch185 5/24(月)後07:00〜
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ゴールを奪って、失点をしない。このシンプルなことが出来たからこそ、岐阜は連敗を3で止める勝利を掴むことが出来た。
この試合、明らかに選手の気持ち、リスクのかけ方が、これまでの試合と一線を画した。岐阜は立ち上がりから、積極的な守備を見せた。吉本一謙、冨成慎司の出場停止を受けて、岐阜はルーキーのFW阪本一仁を右サイドバックに起用し、田中秀人と秋田英義を2センターバックに置き、ボランチには永芳卓磨が入る。守備構成自体にリスクはあったが、この日の岐阜にはそのリスクをカバーできるリスクマネジメントも十分であった。
まず立ち上がり硬さが目立った阪本に対しては、同サイドのMF西川優大が阪本をケアする抜群のポジショニングで攻守のバランスを整える。永芳はセントラルMFとして本来のボールキープ力を披露し、同じくボールキープ力のある左サイドハーフの橋本卓と、近い距離をキープし、ここが岐阜の攻撃のタメを作り出した。
こうなると生きてくるのが、MF菅和範とFW嶋田正吾の豊富な運動量だ。西川がバランスを支え、永芳と橋本がタメを作る。これにより菅と嶋田は、ボールポジション、周囲のポジションを念頭に入れながら、バイタルエリアやその付近を動き回ることが出来る。時間と距離感という時空が、岐阜の本来の良さを引き出し、DFからボランチへのパス、ボランチからサイドハーフへのパス、ボランチからFW、サイドハーフからFWへのパスと、3ライン間でのボール移動が活発化し、攻撃にダイナミズムを加えた。
先制点はまさにその形から生まれた。「MF間のパスが1、2本入ると、僕らFWも裏へ飛び出すのか、足元に受けるべきなのかタイミングを図れる」と語った嶋田が、長良川メドウに歓喜をもたらした。
50分、秋田から永芳に繋ぐと、永芳が前線をルックアップ。水戸の高いディフェンスラインを見た永芳は、裏へのスペースを見つけ出すと、嶋田も瞬時にそのスペースを見つけ出す。絶妙のタイミングで永芳のロングパスと、嶋田の飛び出しが合致し、ペナルティエリア外まで飛び出してきたGK本間幸司より一瞬早くボールに触れた嶋田が技ありループを叩き込んだ。
このプレーの裏には、もう一人の男の動きがあった。この日、ピッチ上では目立たないが一番重要なプレーを繰り返していた男がいる。それが西川だ。前述したように、彼はバランサーとして機能していたが、阪本がしり上がりに調子を上げていくに連れて、彼自身も前目の位置へポジション修正。彼がボールのないところで、常に相手のボランチ、ボランチとDFライン、センターバックとサイドバックのギャップに立ち続け、相手の意識を常に自分に引き寄せていた。だからこそ、相手のファーストアプローチが遅れ、嶋田や永芳、橋本、菅らがある程度余裕を持ってプレーすることが出来た。このゴールのシーンでも、彼が地味にプルアウェイの動きや、ギャップに顔を出したことで、水戸が西川のいる(岐阜から見て)右サイドに意識が行き、だからこそ逆サイドの左が空いた。
「西川が相手にとって、非常に嫌なポジションを取ってくれたので、すごくやりやすかった」と、嶋田も語ったように、彼の目立ちはしないが、その献身的なプレーは、チームの潤滑油になっていた。橋本の存在も光った。彼は遠くまで見える選手。前述したキープ力はもちろん、彼の繰り出すロングパスは、時間と距離を一気に縮め、攻撃のスイッチとなった。
こうした要素が絡まって、岐阜はゴールを決めて、無失点に抑えるという、勝利するためにシンプルなことをやってのけることが出来た。
「3連敗は内容が伴わない3連敗だったので、ここで勝って流れを掴んだのは大きい」と倉田安治監督も語ったように、岐阜にとって大きな勝ち点3を手にすることが出来た。
だが、手放しで喜んではいられない。「まだ1勝したにすぎない」(嶋田)。それだけではない、この試合、岐阜が失点をする危険性はたくさんあった。攻撃が一度ストップした後、岐阜は中盤のスペースがぽっかりと空く。水戸はそこを狙っていた。
「問題点はディテールの面が出ましたね。GKのキックに対して、しっかり上げてから蹴るだとか、スローインの守備だとか。相手のFKのときに、一人がボール前に立とうとか、コンセプトというかディテールですね。細かい部分で問題が出た」(倉田監督)。確かにプレーが切れた後に、ふとした集中力の欠如も目立った。それ以上に、攻撃から守に切り替わるスイッチが遅いことが気になる。一瞬だけ、全員がボールウオッチャーになってしまっている。意識が低いわけではない。攻撃に意識に行ったときのリスクマネジメント。勢いで攻めるチームによくある落とし穴だ。
この試合、水戸は守備時にボランチとFWを中央の位置に1人残し、ボールを奪ったらそこを起点にカウンターを仕掛ける意図を見せた。だが、そこにパスは行くが、相手がそこでトラップミスをしたり、もたついてくれたおかげで、何とか事なきを得たに過ぎなかった。もしそこでワンタッチで前を向かれていたら。そこに対するファーストディフェンダーが遅れ、その裏にスペースが出来る。そのスペースを埋めに、誰かが動けば、DFラインが乱れ、そこに裏への飛び出しを得意とするFWがいれば、ボールを受けた選手が簡単に決定的なスルーパスを供給し、決定的なシーンを作ることが出来る。
裏を返せば、水戸・木山隆之監督の狙いは明確であった。しかし、「やりたいことが出来ていたが、アタッキングサードで力を出せなかった。点が取れないと、こういうゲームになる」と、まさに岐阜同様にディテール面で問題が浮上し、水戸は岐阜が見せた隙を突けなかった。
岐阜としては、この形で徳島や鳥栖に失点を喫したことを忘れてはならない。この試合ではディテールな部分だったが、相手によってはディテールどころか致命傷になることは、これまでの試合が物語っている。
単純にまだ1勝と気を引き締めるだけではなく、細かい部分を見つめなおす必要がある。この勝利は、それをするためにサッカーの神様がようやく岐阜に与えてくれた浮上のチャンスなのだから。
もちろん、選手監督のコメントを聞いていると、十分に理解できるだけに、この勝利で差し込んだ光は、本物で、さらに強い光を放ってくれることを、いまは強く願っている。
以上
2010.05.23 Reported by 安藤隆人
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