7月31日（土） 2010 J2リーグ戦 第20節
栃木 2 - 1 横浜FC　（18:03／栃木グ／4,218人）
得点者：4' 寺田紳一（横浜FC）、44' 大久保裕樹（栃木）、90'+2 リカルドロボ（栃木）
スカパー！再放送 Ch186 8/1（日）後03:00〜
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勝負はスコア同様に僅差で決着した。栃木SCも横浜FCも互いに勝点３への強い思いを抱えていた。ただ、この試合に限っては栃木のほうが、正確にはフロント、ファン・サポーターも含めた栃木に関わる全ての人が、「コミットメント（懸ける気持ち）」を発揮したからこそ、勝機を引き寄せられた。だからこそ、松田浩監督はリカルド・ロボの決勝弾について、「ロボのシュートは皆の気持ちが乗っていたので、ゴールの中に入ってくれたと思う」と話した。今季２度目の逆転劇で連敗を４で阻止した意味は、流れが停滞していただけに、計り知れないほど大きい。
　
開場と同時に突然の豪雨。梅雨が明けてもパッとしない天候は、連敗中の栃木の現状を表しているようだった。実際、開始４分に失点を喫する。寺田紳一に直接ＦＫを蹴り込まれ、５試合連続で先制を許した。先手を取られたことで浮足立ち、横浜FCにポゼッションされ、ＦＫから柳沢将之に再びゴールを脅かされる窮地を招きもした。
　
苦しい時間帯が続くも、パウリーニョと本橋卓巳のハードワークが流れを変えた。セカンドボールに食いついては拾い、マイボールを的確に散らした。すると、ボールの循環が良くなり、サイド攻撃が活性化された。流れをたぐり寄せると４４分、お返しとばかりにＦＫから同点弾が生まれた。ロボのヘディングシュートはＧＫに一度は弾かれるも、ルーズボールに大久保裕樹が詰めた。大久保は前節のヴァンフォレー甲府戦に続き２戦連発。
「先制して、少なくとも前半に２回は決定的チャンスがあった（岸野靖之監督）」横浜FCとしては、栃木を仕留め切れなかったことで試合を振り出しに戻されてしまった。３１分に難波宏明、３３分にカイオがチャンスを潰したのは痛かった。
　
「セットプレーから前半に追い付けたことが後半に繋がったと思う」とは高木和正。前半終盤の余勢を駆って栃木が攻勢に出る。両サイドから激しく攻め立て、横浜FCを自陣に釘付けにした。しかし、横浜FCも手をこまねいていたわけではない。交代カードで前線のテコ入れを図り、カウンターに活路を見出す。８１分には寺田の右クロスから高地系治がボックス中でフリーになりシュート。２人をかわすも、利き足ではない右足だったことで、無常にも枠を外れた。
　
命拾いした栃木は林祐征の投入で再び流れを引き戻し、迎えたロスタイム。スローインを林が競り、こぼれたボールをロボが右足一閃。窮屈な体勢、ＤＦが前にいてもお構いなし。ダイレクトボレーはＧＫの手を弾き、ゴールへと吸い込まれた。その瞬間、「グリスタ」は今季最高の熱気に包まれた。栃木はついに、長く暗いトンネルからの脱出に成功した。
　
「点を取ったからこそ、もっともっと次の点を狙えるように改善しないといけない」と八角剛史は唇を噛み、岸野監督も「ゲームを終わらせることができていたのに自ら決定的チャンスを外し、相手に戦う意欲を持ち続けさせた」と、６試合ぶりの敗因を語った。前節のコンサドーレ札幌戦は２−１で逃げ切れたものの、ゴール後に嵩にかかって攻める力強さを見せつけられなかったという前節の課題を今節に持ち越し、栃木に付け入る隙を与えた。
「強いチーム、勝つチームになる。早くそういうところへ持ってきてもらいたいと思う」。岸野監督が求める負けん気に加え、頭を使ったサッカーができなければ今後も苦戦は続くだろう。
　
連敗阻止、これまでにない劇的勝利に松田監督の表情は和らいだが、「焦れて前に行って、逆に点を取られて、昨年ならば負けているパターンだった」と言うように、相手の決定力不足に救われた側面もあり、特にバランスを著しく崩した後半の中盤の試合運びは、反省しなければならない。とはいえ、今は久々の勝利に浸り、好材料に目を向けるべきだ。中断明けから問題だった立ち上がりの緩みは解消され、新戦力のパウリーニョは攻守に及第点のパフォーマンスを披露。無失点のノルマは達成されなかったが、エースのロボは２ゴールに絡む活躍で復調をアピールした。

守備陣が耐えれば、攻撃陣が期待に応える。ようやく歯車が噛み合い始め、「負けない栃木」の雰囲気を取り戻しつつある。後半戦もリーグをかきまわす存在となれるか。次節、ザスパ草津との北関東ダービーで真価が問われる。

以上


2010.08.01 Reported by 大塚秀毅