8月1日(日) 2010 J1リーグ戦 第16節
広島 3 - 0 京都 (18:04/広島ビ/16,193人)
得点者:50' 槙野智章(広島)、65' 佐藤寿人(広島)、81' 佐藤寿人(広島)
スカパー!再放送 Ch183 8/3(火)前04:30〜
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秋田豊新監督が表現しようとした京都のサッカーは、広島・ペトロヴィッチ監督の予想とほぼ変わらなかった。後ろに人数をかけてブロックをつくり、ボールを奪った瞬間にボールを蹴りだして、前線のタレントにカウンター攻撃を託す。その考え方は、広島の攻撃に対する一つの回答でもあった。
13分、青山敏弘の縦パスを森崎浩司が落とし、山崎雅人がペナルティエリア内にフリーで持ち出したが、5試合ぶりの先発復帰となった水谷雄一が勇気ある飛び出しでセーブ。だが、前半の広島の決定機はこれくらい。あとは京都のブロックと集中力の前に、シュートの1歩手前の段階で跳ね返されていた。
ただ、単発のカウンターとドリブル突破だけに頼った京都の攻撃もまた、決定機をなかなか創れない。23分、広島の縦パスを水本裕貴がカットした後のカウンターをのぞいて。
このシーンは、単純な裏への縦パスではなく、京都はボールを素早くつないで攻撃に人数をかけた。ボールをキープしたディエゴがオーバーラップした水本にパス、そして加藤へとつながる。この時、彼には水本・ディエゴ・柳沢と3つのパスコースがあり、ドリブルで仕掛けてシュートを狙う選択肢もあった。
京都にとって最大の決定機だったこの場面、加藤が選んだのは、右サイドに開いた柳沢敦だ。ここで、柳沢と槙野智章との1対1の場面が生まれる。
決めるか、止めるか。
ゲームの流れを大きく左右する場面だったが、結果は槙野の勝利。経験値の高いベテランに相対した若武者はしっかりと我慢し、コンマ数秒の駆け引きを闘わせながら、シュートコースをしっかりと読み切ってブロックしたのだ。
もし広島がここで失点していれば、京都の守備ブロックはさらに強固なものとなったはず。槙野のこのブロックはまさに1点もの重さがあったのだが、後半は本当に点をとってしまうのだから、槙野智章という男は恐ろしい。
50分、「30mくらいは、ありましたかね」(槙野)という場所からのFK。ボールの近くには森崎浩と槙野が立っていた。選択肢としては、森崎浩の左足でゴール前にあげてヘッドに合わせるパターンと槙野が直接狙う形がある。
「距離があったし、合わせにいこうかな、と思っていた。ただ、マキ(槙野)が自信を持って『蹴りたい』と言ってきたので、その意見を尊重した」と言う森崎浩がボールをチョンと動かし、槙野が豪快に右足を振り抜く。
もちろん、このプレーは京都も予測していたはず。ただ、壁に入った選手たちのブロックに出るスタートが遅れ、さらに動いたことで出来た隙間を槙野のシュートが突き破るという結果になった。
とはいえ、約30mの距離を強烈なスピードでゴール右隅に叩き込んだ槙野のシュートの素晴らしさは、何ら色あせない。彼はオーストリアキャンプでも、同じような距離から無回転FKを叩き込んでいる。ユースの頃から攻撃的なDFではあったが、まさかFKのキッカーとして得点源になろうとは、当時はまったく想像できなかった。
ゴール後に見せた「釣り」パフォーマンスなど、「ネタ」ばかりが強調されがちな男だが、槙野はこのFKを身につけるために毎日居残り練習でひたすらシュート練習を重ねるなど、サッカーに対する姿勢は「ストイック」。攻守にわたる絶大な存在感。チームやサポーターを引っ張る明るい個性と、不断の努力。試合後のインタビューで佐藤寿人が語ったように、槙野智章は名実共にミスター・サンフレッチェの座についたと言っていい。
その後、セットプレーから佐藤寿人に2失点を喫し、京都は4連敗。「内容は悪くない」と言う秋田豊監督だが、誰よりも結果が欲しいのもやはり、この若き新指揮官だろう。この試合で「チームに変化が見えた」と語る秋田監督が、勝利への処方箋をどう書きあげるのか。次節の対新潟戦までの1週間は、新監督にとってもチームにとっても、非常に重要な意味を持つ。
京都の守備的戦術に苦しみながらも勝利をつかんだ広島だが、次節の相手は強敵・G大阪だ。ミキッチの負傷や中島浩司の出場停止も重なり、主力不在の状況は深刻度を増してしまった。「そのことを考えると頭が痛くなる」とペトロヴィッチ監督は苦笑いを浮かべるが、一方で横竹や桑田慎一朗、丸谷拓也ら若者たちの成長にも自信を見せる。京都戦という「上位進出への試験」に「ギリギリながら、合格した」(ペトロヴィッチ監督)広島は、チーム全体の力を結集し、2001年セカンドステージ以来の対G大阪リーグ戦勝利に挑戦する。
以上
2010.08.02 Reported by 中野和也
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