8月1日(日) 2010 J1リーグ戦 第16節
湘南 3 - 6 清水 (19:03/平塚/13,316人)
得点者:4' ヨンセン(清水)、10' 兵働昭弘(清水)、12' 岡崎慎司(清水)、26' ヨンセン(清水)、41' エメルソン(湘南)、43' 中村祐也(湘南)、51' ヨンセン(清水)、54' 藤本淳吾(清水)、86' エメルソン(湘南)
スカパー!再放送 Ch183 8/3(火)前10:30〜
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記者席の前方から大きな声援が飛んでくる。張り裂けるような子どもの声。ピッチに届けと、ありったけの力を振り絞っている。表情は見えなくとも、切実な思いがその声から伝わってくる。スコアは2−6、声援の先でホームの湘南は劣勢に立たされている。
序盤の攻防が撃ち合いの勝負へと舵を切らせた。前への推進力を示す湘南を、清水はより以上のスピードと圧力でねじ伏せる。小野伸二の遠目からのポスト直撃弾で機先を制すと、その直後にヨンセンが、10分には兵働昭弘、12分には岡崎慎司がシュートを決めた。瞬く間の3得点。圧倒的な立ち上がりである。
ヨンセンによる4分の先制点が湘南に後手を踏ませ、ディフェンスの歯車を狂わせたのかもしれない。ただ、ポストに救われた小野のファーストシュートの時点でボールに寄せ切れていなかった。ペナルティエリアの外から放たれた兵働のファインシュートも然りだ。岩下敬輔からヨンセンを経て、市川大祐のクロスの先で岡崎が詰めた3点目も、清水はダイレクトパスを小気味よく繋ぎ、湘南のプレスに先んじていた。「裏への飛び出しに対する警戒などもあり、前半はラインが下がり、その結果バイタルを使われてしまった」と、坂本紘司は自戒を込めて振り返っている。26分には、湘南が人数をかけてゴール前を塞ぐなか、針の穴を通すようにヨンセンが4点目をねじ込んだ。
ハーフタイム、長谷川健太監督は、「前節と同じ過ちを繰り返すのか」と、選手たちを叱咤したという。前節のホームC大阪戦で3−0と圧倒しながら終盤に2点を奪われた彼らは、今節もまた4点をリードして以降、前半のうちに2点を返されていた。
41分、村松大輔のフィードを中村祐也が前で収め、左サイドを駆け上がった島村毅に渡す。島村はドリブルでペナルティエリアに侵入し、なかへと折り返した。駆け込んだエメルソンの目の前にはスペースがぽっかりと空いている。狙いを定めたミドルは、ゴール右隅に吸い込まれた。さらにエメルソンの移籍後初ゴールから2分後、相手のコーナーキックを凌いだ湘南はカウンターに転じる。敵を巧みに振り切り左サイドへと展開した永木亮太のラストパスに反応したのは、序盤から積極的にシュートを狙っていた中村だ。DFとGKのあいだに走り込み、追加点を挙げた。
しかし2点差に詰め寄られた清水の再反撃は素早い。後半開始間もない51分、右サイドを駆け上がった市川のクロスに、ヨンセンがニアで頭を合わせ、この日の自身3点目を記録した。さらに54分には、兵働のパスを受けた藤本淳吾が鮮やかなループシュートを決めてみせた。
2−6となってからも一進一退の攻防は続く。清水は岡崎がゴール前に走り込み、あるいはキープしてシュートを狙った。また出場停止の本田拓也に代わりアンカーに入った山本真希が強烈なフリーキックを放ちもした。かたや湘南も、中村が、途中出場の田原豊が枠を狙い、あるいは裏へ抜け出した。弛まずゴールを目指す姿勢にサポーターの声援は途切れない。記者席前方から届く子どもたちの声も嗄れている。
86分だった。左サイドの馬場賢治からのパスを田原が落とし、永木が受ける。永木のパスは、ゴール前に上がった寺川能人と中村を抜け、エメルソンに通る。そしてフリーで受けたエメルソンがふたたび枠を捉えた。夏の夜の熱戦はこうして、3−6で幕を閉じた。
清水はクラブ史上最多タイの6ゴールをマークした。快勝を手土産に、次節はホームで首位鹿島に挑む。「現状の持てる力をすべてぶつけて、うちらしいゲームをしていきたい」と長谷川監督いわく。湘南に喫した3失点が大量得点の陰に埋もれてしまわぬよう、しっかり準備して王者を迎えたい。
逆に湘南はクラブワーストタイの6失点を喫した。「ディフェンスのリズムができず、相手にイニシアチブを握られてしまう。なにも恐れる必要はないのに腰が引け、自分で自分の首を絞めている。攻撃の積極性があるにもかかわらず、ディフェンスの積極性が足りなかった」。ゲームを振り返る指揮官の表情には、忸怩たる思いが浮かんでいた。
清水の攻撃に圧倒された一方で、3ゴールは今季最多である。大量得点によって相手が隙を見せたという側面はあろうが、「攻撃のクオリティはよくなっていると思う」と反町監督が語ったように、2ゴールの活躍を見せたエメルソンのフィットとあわせて、攻撃面の向上は着実に見られている。次節はアウェイで大宮に挑む。受け止め、向き合い、立ちはだかる壁に挑んでいかねばならない。挑み続ける者へ、声援は送られる。嗄らした声が教えてくれたことだ。
以上
2010.08.02 Reported by 隈元大吾
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