10月３日に行われた第29節・千葉戦の後半24分。選手交代を告げられた富山のＦＷ平野甲斐選手は、相手ペナルティーエリア近くから勢いよく駆けてきた。そして、代わって入るＦＷ関原凌河選手を両腕で強く抱きしめてピッチを後にした。
「僕よりもゴールを挙げる可能性があるからこその交代。少しでも長くプレーしてほしいと思いました。凌河は初出場。彼の出場を僕も待ちわびていたので勇気づけたかった」。試合後にこう話した。

元気者のルーキー平野選手らしいふるまいだった。しかし私事になるが、この交代の場面を見て、胸にこみ上げてくるものがあった。チームは８月１日（第20節）を最後に勝利から遠ざかり、４日前には突然の監督交代があった。どん底の状態から抜け出すために、新任の安間貴義監督のもと、選手たちは奮い立ち、強豪と互角に渡り合っていた。チームから伝わってくる情熱を象徴するシーンのように感じたのだと思う。
勝利への思い、純粋さ、清々しさ、思いやり…。感じたものを正確に表現するのは難しいが、「こういうのが見たかったんだ」と思った。

安間監督は「選手たちは失点後も下を向くことなく、挑んでいく姿勢を見せてくれた。次に繋がる」。試合には敗れたが、チームは息を吹き返したとみてよいだろう。残り８試合から目が離せない。

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2010.10.07 Reported by 赤壁逸朗