10月16日(土) 2010 J1リーグ戦 第26節
広島 1 - 1 磐田 (15:04/広島ビ/13,887人)
得点者:5' 李忠成(広島)、58' 前田遼一(磐田)
スカパー!再放送 Ch183 10/18(月)前11:00〜
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「時間が止まった。周りの全てが、止まって見えた」
李忠成が体験した感覚が本物ならば、その時彼は、「ゾーン」の領域に入っていたと言っていいだろう。
「ゾーン」とは、選手が極度の集中状態に入り、プレーに没頭している状態のこと。心身ともに絶好調で、無理なく自然にその能力を完璧に引き出された結果、その選手が感じる特別な状態。プロ野球では、川上哲治の「ボールが止まって見えた」や、稲尾和久の「投げる前に自分のピッチングフォームが全て脳裏に浮かんだ」という状態が知られているが、これも「ゾーン」状態を独特の表現で言葉にしたもの。この瞬間の李は、この領域に入っていたのか。
李忠成がボールを前向きに持った瞬間、まずイ・ガンジンが強引にボールを奪いにくる。冷静に切り返し、難なくかわす。さらにスピードに乗る。山本脩斗が対応するが、足先でチョンとボールを出して入れ替わり、ペナルティエリアに入った。古賀正紘が寄せてくる。左足アウトサイドで切り返し。その瞬間、古賀はボールに触れるも、李は力強くそのままキープ。山本脩も戻ってきて挟み込むが、李はさらにボールを持ち出して彼の突進をかわした。
この時、右から古賀、正面にはイ・ガンジンと山本康裕が待ち構え、その後ろには川口能活がいた。シュートコースは皆無に近かった。だが李忠成にだけは、見えていた。それは、上空である。強烈なDFのプレッシャーの中、スピードに乗ったドリブルのさなか、彼はそこを見ていた。
左足でひっかけるように放たれたシュート。美しいループ状の軌跡を描いたボールは追いすがる川口の想いを突き放し、ネットに沈んだ。
李忠成、リーグ戦4試合連続ゴール。J2からJ1にかけては、佐藤寿人が2008-2010に記録した6試合連続という記録があるが、J1では4試合連続が広島にとってのベスト。1994年にハシェック、1997年に高木琢也(現熊本監督)が記録して以来、クラブ史上3人目。21世紀では初となる4試合連続弾によって、広島は大きく勝利に近づけるはずだった。
だが後半、磐田の至宝が牙を剥く。前半は前からのプレスに力を使い、シュートゼロに終わっていた前田遼一だ。
確かに2トップがゴールキーパーまでスプリントしてボールを追いかけるシーンは、見た目には効いていたように感じるかもしれない。だが、「前から来てくれたからスペースがあった」(森崎和幸)「僕らの速いプレーが活きるからやりやすい」(横竹翔)と広島の選手たちは語る。プレスをかわしたことで生じる自由なスペースを使い、前半のペースは広島が握った。
だが後半、磐田がプレスの起点を後ろに下げ、リトリートしてブロックをつくる戦術に切り替えた。このことによって磐田の中盤でのボール奪取率があがり、次々とカウンターをくり出し始めた。前田も守備ではなく攻撃に力を使えるようになり、前半よりも遥かに「脅威」が増した。
58分、高萩洋次郎のパスが山岸智とタイミングがあわず、磐田がボールをキープする。この瞬間、山岸のあがったスペースにいた菅沼実がフリーだ。那須大亮、縦パス。ボールは正確に右サイドのスピードスターのもとへ。
この時、前田は逆サイドにいた。しかし、チャンスの予感を感じた前田は、瞬間ファーサイドにいく動きを見せてDFを幻惑し、強烈なスピードでニアへ。そこに菅沼のクロスが正確に入ってくる。完璧なタイミングで飛び込んだ前田のダイビングヘッドは、「これがストライカーだ」というプライドの具現化だ。
両チームのストライカーが結果を出した。そして試合終盤には、日本を代表する2人のGKが真価を見せる。89分、ゴール近くでの広島のパスミスをさらった成岡翔がフリーで放った強烈なシュートを、先日の韓国戦で完封という結果を出した西川周作がジャガーのような反応で防ぐ。その西川と南アフリカの切符を争い、4大会連続のワールドカップ日本代表となった川口能活が、90+3分に槙野が撃った至近距離からのシュートを、円熟の技で弾き出す。
ヤマザキナビスコカップ決勝の前哨戦となったこの試合は、痛み分けに終わった。両チームが抱えるタレントの質の高さを感じさせると同時に、組織としての闘い方には共に課題が見えたゲームとなった。この試合で得た材料を元に、11月3日に勝利をつかむため、互いに綿密な対策を練り上げる。さらにその試合では、磐田はジウシーニョ、広島は佐藤寿人が戻っているはず。FINALでの熱戦の予感を強く感じさせるビッグアーチ決戦だった。
以上
2010.10.17 Reported by 中野和也













