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【J1:第31節 浦和 vs G大阪】レポート:浦和、「大人」のG大阪に屈す。パスサッカーの先輩が教えてくれた課題を克服し、次は成長した姿を見せたい。(10.11.21)

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11月20日(土) 2010 J1リーグ戦 第31節
浦和 0 - 2 G大阪 (14:03/埼玉/40,071人)
得点者:53' 遠藤保仁(G大阪)、83' ルーカス(G大阪)
スカパー!再放送 Ch181 11/21(日)後00:30〜
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「私たちよりも経験を積んでいる選手が豊富で、とても効率的なプレーができて、とてもクレバーな選手たちが多かったチームが勝利を収めた」(フォルカーフィンケ監督)

「選手がよくゲームプランを考えて、うまく勝つためのアプローチを全員で構築していたと思う」(西野朗監督)

両指揮官は同じことを言っている。つまり、サッカーを知っているチームが勝った、と。

前半は浦和が優勢だった。立ち上がりから激しく動き、G大阪に主導権を握らせなかった。特に20分過ぎからは35分あたりまでは完全に浦和の時間帯だった。

そんな浦和に前半最大のビッグチャンスが訪れたのは31分。高橋峻希がエジミウソンとのワンツーからゴール前に飛び込みシュートを放つが、ボールは惜しくもバーに直撃。このプレーの数分後、高橋は左足の痛みを訴えて途中交代となり、好調の高橋の離脱とともに浦和の勢いも落ちてしまっただけに、このシーンで決めておきたかった。

一方、G大阪はなかなかチャンスを作ることができなかった。前半の決定機と言えば、11分にCKから中澤聡太がフリーでヘディングを狙った場面、あとは37分に加地亮のクロスが少し高くてイ・グノに合わなかったシーンくらいだった。

ただ、G大阪はリズムをつかめないと見ると、全体的にディフェンシブな戦いにシフトし、我慢しながらカウンターで様子を探る戦い方をしていた。「前半我慢すれば後半にチャンスが来ると思っていた」とは遠藤保仁の言葉だが、実際に思惑通りの展開になった。

試合が動いたのは53分、見事なコンビネーションプレーからG大阪が先制点を奪う。宇佐美貴史とのワンツーでボールを持ち直した橋本英郎が逆サイドの裏にボールを送ると、鋭く飛び出していた遠藤が左足アウトでの息をのむ美しいトラップから冷静にゴールネットを揺らした。

この得点シーン、遠藤は橋本が宇佐美にボールを出した時から裏を狙うために動き出していた。「ハシ(橋本)にボールが渡りそうになった時に準備できていた」。そして、橋本にリターンが戻ると同時に全力疾走。そこに橋本からダイレクトでパスが送られると、「トラップで決まった」と本人も自画自賛のファーストタッチで勝負アリだった。得点が決まった瞬間、記者席で試合を見ていた浦和の選手も「これがサッカー」と絶賛するビューティフルゴールだった。

「後半に入ってから、1つの場面で裏を突かれ、それによってゴールを奪われてしまった。このワンチャンスをものにしたG大阪がリードした」とフィンケ監督は振り返っているが、これは半分正解で半分間違っている。G大阪が「ワンチャンス」で決めたことは確かだが、「1つの場面で裏を突かれ」たわけではない。

G大阪は前半から何度も裏を狙っていた。「つなごうとする選手と、裏に抜けようとする選手の連携が合っていない」と橋本が語ったように、タイミングがうまく合わずにチャンスにはならなかったが、浦和のDFラインが中盤にプレッシャーがかかっていなときでもラインをキープすることを見抜いていた。得点シーンの直前にも裏へのパスをイ・グノが受け、あわやという局面を作っている。「ワンチャンス」はたまたま生まれたわけではなく、相手の動きを理解したなかで作り出された。そういう意味では“必然”のゴールだったと言える。

この1点で試合の流れは決まった。前がかりに攻勢を強める浦和と、カウンターで追加点を狙うG大阪。浦和はサイドを起点にゴール前までは押し込むものの、攻撃がワンパターンでG大阪の牙城を崩せない。逆にG大阪は相手が作ったスペースをうまく使って何度も決定機を築き、83分には遠藤のCKから途中出場のルーカスがトドメの追加点。これで勝負は決まった。

「1点を先に決められていればだいぶ違った展開になったと思う」と遠藤が指摘したように、先制点の行方次第では試合展開ががらりと変わっていたかもしれないが、試合全体を通したゲーム運びの面でG大阪は一枚も二枚も上手だった。浦和はGK山岸範宏のファインセーブがなければ、大差で負けていてもおかしくなかった。

浦和は優勢だった前半から問題点が見え隠れしていた。確かに浦和はいい形を作れていたが、その多くが個の能力に依存したものだった。具体的には、ポンテの卓越したキープ力とチャンスメイクの才、エジミウソンのポストプレーの質、サヌのスピードを頼りに局面で相手を凌駕することが多かったが、攻撃に関与するのは出し手と受け手の2人だけで「3人目の動き」が乏しかった。

この点に関しては、橋本が的を射た指摘をしてくれている。「エジミウソンのところにボールが入るまではすごくいいと思うけど、それ以上のことがなかった。エジミウソンが1人でずっとキープして、そこで長い時間をかけないと、次につながらない。あれだけペナルティエリアのなかでキープできるなら、反転させてあげるくらいのチャンスを周りが動いて作ってあげないといけない。たぶん、広島とかもそうだと思うけど、あそこでもう1人が絡んでいかないといけない。パスサッカーを目指すのなら、そういうやり方がいいんじゃないかなと思う」

浦和にも課題を理解している選手はいる。「そういったところ(3人目の動き)がパスサッカーを完成させるために一番大事かな」とはエスクデロ セルヒオだ。「長年やっているだけのことはあるし、ここって時にスイッチをオンにするのが本当にうまい」とG大阪の3人目の動きが絡んだ攻撃を目の当たりにし、「完成度が違う」と“先輩”との差を痛感していた。

「大人のサッカーをすると感じた」(柏木陽介)。この日は試合運びでも、パスサッカーの成熟度でも大人と子どもの差を見せつけられた。浦和は3年越しの勝利を誓って挑んだが、またしてもG大阪に勝てなかった。この悔しさは12月25日の天皇杯で晴らすしかない。

以上

2010.11.21 Reported by 神谷正明
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