11月20日（土） 2010 J2リーグ戦 第35節
水戸 0 - 2 徳島　（12:04／Ｋｓスタ／2,286人）
得点者：47' ペスンジン（徳島）、83' 柿谷曜一朗（徳島）
スカパー！再放送 Ch185 11/22（月）前08:00〜
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「先制点がすべてだった」。藤川祐司は肩を落とした。9試合ぶりの勝利を目指すべく、水戸は意気揚々と試合に臨んだはずであったが、終わってみれば、0対2の完敗。先制点を奪われてから水戸が見せた覇気のない戦いは、悔しさを通り越して悲しくなるものがあった。

前半は「比較的自分たち（水戸）のペース」（木山隆之監督）であった。2トップが幅広い動きを見せてボールを引き出し、2列目の選手が素早くサポートすることで切れのある攻撃を見せていた。ゴール前に侵入することはできなかったが、ペナルティエリアの外から果敢にシュートを放ち、リズムをつかんでいった。「ペナルティエリア内に入ってからの圧力に欠けていた。そこを修正すれば、ゴールを取れると思っていた」と木山監督は手ごたえをつかみながら、前半を終えた。

しかし、後半開始とともに水戸は“戦う集団”ではなくなっていた。47分にCKから失点を喫すると「みんな下を向いてしまった」（藤川）。1人1人がバラバラな動きをしだしたことで、チームの連動性が失われ、間延びした中盤のスペースを徳島に突かれて防戦一方の展開を招いた。屈辱的だったのは、これまで水戸が最も重要視してきた運動量と球際の争いで徳島に圧倒されたことだ。セカンドボールの競り合いでもことごとく敗れ、なすすべないまま耐える時間が続いた。そして83分、自陣で不用意なパスミスを犯し、柿谷曜一朗に豪快にゴールを決められ、追加点を許すことに。終盤、反撃を仕掛けるパワーもなく、そのまま最後まで立ち上がることができずに試合を終えることとなった。

こんな水戸は見たくなかった。今季の水戸は下位に低迷しながらも、未来に向けての光明を見出そうと木山監督の下、チーム一丸となって戦ってきたはず。若い選手たちが自分たちの未来を切り開こうと奮闘する姿こそが今季の水戸の最大の魅力であった。しかし、この日の水戸からはそれが微塵も感じられなかった。それが痛恨なのである。藤川は危機感を募らせながらこう語った。「今日はただサッカーをやっているだけだった。それでは何も残らない。次の試合につながるようなサッカーをやらないとこのまま終わってしまう」。

残り3試合、水戸は立ち上がることなく終わってしまうのか。選手たちはこう声をそろえる。「とにかく勝ちたい」と。だが、言葉にするだけでは結果はついてこない。たとえ先制を許しても、たとえ2点差がついても、たとえ3点差がついても、最後まで諦めずに歯を食いしばって戦う姿を見せなければ、勝利は訪れない。失点して肩を落としているチームには今後も光は射さないだろう。試合後、スタンドから出ようとしたとき、観客からこのような声が聞こえた。「こんな試合をするなら、もう見に来ない」。信頼を失うことは簡単だ。だが、取り戻すことは難しい。この日失った信頼を取り戻すためには、残りのすべての試合、試合終了の笛が鳴るまで勝利を諦めずに戦い抜くしかない。絶対にこんな状態でシーズンを終わってはいけない。

徳島にとっては会心の勝利であった。前半こそ押し込まれる時間が長かったが、後半に入ると、1人1人の運動量で水戸を圧倒。47分に先制すると、一気に勢いに乗り、リズミカルなパスワークで水戸を翻弄してみせた。前節横浜FC戦では先制後、徹底的にゴール前を固めて逃げ切って勝利を得たが、今節は「もう1点取る意識があった」（ペ・スンジン）。DFラインを高く保ち、攻撃的な姿勢を貫いた。そして83分に追加点を奪い、見事な快勝。「これぞ徳島」と言わんばかりの充実した内容で、水戸を一蹴し、チームとして大きな勝利を手にすることとなった。
佐藤晃大が前線で巧みなポストワークをこなし、ボランチを組んだ青山隼と六車拓也が絶妙なコンビネーションで中盤を制圧、さらに柿谷と島田裕介の攻撃的MFがゴールに絡む仕事をこなすなど、個々が持ち味を最大限に発揮したことも大きな収穫と言えるだろう。今季の戦いを来季につなげるためにも、残り3試合この調子を維持して、いい形でシーズンを締めくくることが重要だ。この勢いを中2日の次節札幌戦でぶつけたい。

以上

2010.11.21 Reported by 佐藤拓也