11月20日(土) 2010 J2リーグ戦 第35節
鳥栖 1 - 1 柏 (12:04/ベアスタ/5,254人)
得点者:40' ホジェル(柏)、86' 豊田陽平(鳥栖)
スカパー!再放送 Ch183 11/21(日)後03:00〜
試合速報一覧 | クラブサポーター対抗totoリーグ | Jリーグ中継に関するアンケート実施中
☆J2シーズン表彰 投票受付中!!
----------
キックオフを迎える瞬間、ピッチに立っている選手たちの心理状態は、高揚と緊張の極限にある。これから起こる様々な状況に対応するプレッシャーは、スタンドから観る者の想像をはるかに超えるものに違いない。
しかし、それを選手たちは求めてピッチに立ち、22人しかその瞬間を味わえないのである。
今節のベストアメニティスタジアムでは、片方は優勝がかかるチームとしてその瞬間を迎え、もう片方はシーズンの目標を失ってはいたが、プロとしてのプライドを持ってその瞬間を迎えたチームの戦いだった。
「昇格を決めた相手に自分たちのサッカーで何ができるのか、何ができないのかを見極める」と試合前にMF早坂良太は話してくれた。彼だけでなく、鳥栖の選手誰もがそう感じながらピッチに足を踏み入れたに違いない。
彼らは、「クラブ史上最強のチーム」(松本育夫監督/鳥栖)のメンバーであり、「J1を狙えるチーム」(同)のメンバーでもある。だからこそ、前節、昇格を決めた柏相手に今季の戦績の不甲斐なさをぶつけるつもりだったはずだ。
今季加入したルーキーの早坂良太が思うのだから、これまで鳥栖のサッカーを実践してきた選手や、Jリーグの歴史創設の一端を担ってきた関係者もそう思うに違いない。そして、今節の結果次第では、柏のJ2優勝が決まる可能性もあった。でも、鳥栖の選手たちは自分たちの力でそれを阻止することができた。
キックオフ時間の関係で、この試合に柏が勝利してもすぐにはJ2優勝とはならないことを選手もサポーターも知っていた。それでも、その可能性があるこの試合に、前日からの野宿組がでるほど柏のサポーターは熱かった。実際に今節のベストアメニティスタジアムの両陣営のゴール裏は、黄色いレプリカユニフォームを来た柏サポーターのほうが多かったのではないだろうか。試合前からの盛り上がりは、1年でのJ1復帰を決めたチームへの愛情とこの試合に賭ける想いの表れだったのだろう。その想いを選手たちは十分に感じ取ってキックオフの瞬間を迎えた。
第90回天皇杯全日本サッカー選手権大会4回戦との関係で、柏は中2日で今節を迎えた。あわせて、第16回アジア競技大会2010広州大会も重なって、この日のメンバーには試合経験が少ない若い選手の名前が多かった。これまで11得点のMFレアンドロ ドミンゲス、10得点のFW工藤壮人の名前はこの日のメンバーには入っていない。DFから多くの攻撃の起点を作った近藤直也の名前も無かった。9得点のFW林陵平もベンチからのスタートだった。それでも、今季の柏の戦いで試合を運ぶ力を彼らは持っていた。
決してあわてず、DFでボールを回しているときも前線は絶えずスペースとDF裏を狙い続け、ボールの出てくる瞬間を待ち続けていた。鳥栖がプレスをかけると横にいなして逆サイドのスペースを使って、狙いどころを絞らせなかった。鳥栖にシュートを打たれても、自分たちの形になる瞬間まで耐える巧者振りを見せていた。
そして、その瞬間が40分に訪れた。センターライン近くでボールを受けたFWホジェルが、前にいたMF茨田陽生にボールを渡し猛然と鳥栖のゴール前に駆け出した。
「FWとして当然のごとく走り出しただけ」と淡々と試合後に語ったホジェルだったが、彼の動きに鳥栖の対応が遅れた。茨田からのパスを胸で落とすと右足でゴール左隅に蹴りこんだ。「距離もあったし、枠に行くことだけを考えた」と振り返ったゴールだったが、「ゴールは嬉しいが、残念な結果だった」とも言葉が続いた。
その残念な結果を裏返すと、鳥栖が1点のビハインドを跳ね返し、柏の今節での優勝を阻止したことになる。後半に入ると鳥栖も持ち前の早いプレスが利きはじめ柏を押し込むシーンが増えた。後半だけでシュート10本を柏相手に放つ勢いを見せていた。勢いが結果につながったのが86分のシーンであった。
72分にピッチにたったMF衛藤裕が左サイドに流れボールを受けた。彼の視界には、サガンブルーとレイソルイエローのコントラストが映っていたに違いない。そのコントラストの一番遠くにサガンブルーの選手が見えていた。
「柏のDFが中に入っていたので外で待っていた」とはFW豊田陽平の言葉である。「あの得点は衛藤さんに聞いてください」と彼に言わしめるほど、衛藤からのクロスの精度は高かった。後は、「落ち着いてゴールに決めるだけ」(豊田)だけだった。このゴールで鳥栖は追いつき、J1昇格を決めた柏相手に意地を見せることができた。
90分を通して両チームとも随所にその持ち味を出した。鳥栖のCB飯尾和也は、柏の決定的なシュートを3本も身体で止めた。柏の渡部博文は、Jリーグデビュー戦にもかかわらず落ち着いてラインをコントロールし続けた。得点シーンだけが注目されそうな試合ではあったが、両サイドDFの果敢な攻撃参加も、中盤での激しいボールの奪い合いも90分間通して両チームが見せてくれた試合だった。その中でも、昨季まで柏に在籍していたMF柳澤準は、元同僚と柏サポーターに健在振りを示した。終了間際のボレーシュートがGK菅野孝憲の正面を突いたのは悔やまれるところだが、これからの活躍に期待を持たせるプレーを出し続けてくれた。互いに死力を尽くした90分間は、次節につながる試合だったといえるだろう。
選手は色々なものを背負って試合に臨む。選手の想いとは関係なしに、応援している人の期待もかかっている。相当なプレシャーを受けているだろう。スタジアムに訪れる人が多ければ多いほど、そのプレッシャーは増えていく。
それでも、選手たちは試合に出るために日々の努力を怠らない。出るためではなく、出たいために自らを追い込んでいるのである。選手をそこまでさせる魅力がサッカーにはある。
リーグ戦なので、試合結果には多くの記録やドラマがついてくるのだが、キックオフの瞬間には一切そこを感じていないはずである。その証拠にキックオフのホイッスルを待つ瞬間は、1点の迷いもなくその目はボールを見ているからである。そして、90分間追い続けている。そこには邪推などの入り込む余地は無い。
サッカーは、ボールが動けば動くほど、選手も観ている人をも惹きつけてしまうスポーツなのである。
以上
2010.11.21 Reported by サカクラゲン
J’s GOALニュース
一覧へ【J2:第35節 鳥栖 vs 柏】レポート:決めるべき人が決めたゴールで引き分けに終わる。「最後まであきらめない」鳥栖は86分に追いつき、試合巧者の柏は終了間際に力つく。柏の優勝は次節に持ち越し。(10.11.21)
- 終盤戦特集2025
- アウォーズ2025
- 明治安田J1昇格プレーオフ2025
- 明治安田J2昇格プレーオフ2025
- J3・JFL入れ替え戦
- AFCチャンピオンズリーグエリート2024/25
- AFCチャンピオンズリーグ2 2024/25
- はじめてのJリーグ
- Jリーグ×小野伸二 スマイルフットボールツアーfor a Sustainable Future supported by 明治安田
- 明治安田Jリーグ百年構想リーグ
- 2025 月間表彰
- 2025 移籍情報
- 2025 大会概要
- J.LEAGUE FANTASY CARD
- 2025 Jリーグインターナショナルユースカップ
- シャレン Jリーグ社会連携
- Jリーグ気候アクション
- Jリーグ公式試合での写真・動画のSNS投稿ガイドライン
- J.LEAGUE CORPORATE SITE













