11月23日(火) 2010 J1リーグ戦 第32節
名古屋 0 - 1 F東京 (14:04/豊田ス/33,655人)
得点者:27' 大黒将志(F東京)
スカパー!再放送 Ch183 11/24(水)後07:00〜
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「彼らには、今日来てくれたサポーターたちに謝ってほしいと思います」
敗戦の将は、不甲斐ないプレーを見せた自軍の選手たちをこう言って断罪した。前節で悲願の初優勝を決めた“王者”の凱旋を迎えたのは、今季ホームで2番目に多い33,655人の大観衆。サポーターはあるチャントの歌詞を「恐れることないさ、さあ前を向いていこう」から「この誇りを胸に、さらなる高みへ」と変え、頂点に立ったチームのさらなる進撃に期待を寄せていた。だが、残念ながら名古屋が見せたパフォーマンスは、周りが期待するほどのものにはならなかった。優勝の余韻からくる気の緩みか、連戦の疲労か、理由は定かではない。とにかく言えるのは、低調なプレーに終始した2010Jリーグチャンピオンが、残留を争う15位のチームに完封で負けたということだ。
名古屋は万全の体制を持ってホームでの一戦に臨んでいた。出場停止の田中隼磨と前節で負傷したダニルソンは欠場となったが、それぞれ竹内彬、吉村圭司と実力者がその穴を埋め、さらには田中マルクス闘莉王がスタメンに復帰していた。優勝の瞬間をピッチ外で迎えた最大の功労者は復帰への調整を急ピッチで進め、凱旋試合に間に合わせてきたのである。闘将の戦列復帰は名古屋にとって、攻守両面において何よりの朗報。彼がいるといないとでは、チームの迫力が段違いに変わるのが今季の名古屋だ。
一方のF東京は前線の起点となる平山相太を出場停止で欠き、布陣に手を入れてきた。フォーメーションは主将の徳永悠平によれば「3トップ気味の」4−2−3−1。大黒将志を1トップに据え、その下に右から石川直宏、梶山陽平、リカルジーニョが並ぶ。ボランチには徳永と米本拓司が入り、前節で徳永が務めた右サイドバックには椋原健太が起用された。高さではなく技術とスピードで攻撃を形成するメンバーは、堅守速攻をメインとする現在の戦い方にはむしろ好都合ともいえる。
果たして、試合を優位に進めたのはF東京のほうだった。名古屋はキックオフ直後に闘莉王が縦へのロングフィードでまず起点を作ると、直後のセットプレーで早くもゴール前へ。背番号4の並々ならぬ意欲にチームが引っ張られていくかと思ったが、その後はF東京のプレッシングと堅い守備組織に行く手を阻まれた。大黒のスペースへの飛び出しや梶山のキープ力が威力を発揮し、F東京は7分のチャンスメイクから10分まで立て続けにコーナーキックを3本奪うなど攻勢に出る。パスミスが目立ち、アバウトなビルドアップで大味な攻撃が続く名古屋はF東京の守備ブロックに対し有効な展開を作れず、中途半端な攻撃を繰り返しては逆襲を食らう悪循環に陥っていった。
23分にはパスコースを見つけられない闘莉王がペナルティエリア内で立ち止まってしまうなど、ついに名古屋の攻撃はバラバラに。その隙を突くように、F東京が先制に成功する。27分、CKのこぼれ球を梶山が奪い返すと、ドリブルでDF3人を置き去りにして中央へ。そこから裏をかく縦パスをゴール前にいた森重真人に通すと、森重は絶妙のタッチで寄せてきたDFの横にボールを落とした。これを大黒が狭いスペースながらGK楢崎正剛の位置を冷静に見極め、ループシュートでゴールネットを揺らしてみせた。梶山、森重、大黒という高い技術を持つプレーヤーたちの共鳴によって生まれた美しいコンビネーションは、美しいサッカーを標榜する名古屋のお株を奪うかのようだった。
その後反撃に出た名古屋は32分、35分、41分、43分、49分とケネディの高さを起点に決定機を作るも得点はならず。普段の決定力が鳴りを潜め、スタンドからは溜息ばかりがこぼれた。F東京も得点後に2つの決定機を作ったがこちらもノーゴール。打ち合いとなった前半だったが、結局大黒の1点のみで終了。勝負は後半に持ち込まれた。
後半は一転して名古屋が攻勢に出たが、ここでもやはりいつもの決定力が発揮されない。さらには布陣を4−3−3から4−2−3−1にすることでF東京の前線にスペースを与えないよう対策を施したが、「今度は下がりすぎてスペースを与えてしまった」(吉村)ことで状況は好転せず。試合の支配力が強まったのは相手がリードを守ることに重点をおいてきたからであり、迫力を欠く攻撃が散発的に繰り出されるばかりだった。名古屋は6分に阿部翔平が三都主アレサンドロに交代したのを手始めに、15分に前節の殊勲・杉本恵太を、23分にはマギヌンに代えて千代反田充を入れ、闘莉王を前線に上げるパワープレーまで仕掛けたが、それでも成果は実らず。王者らしい戦いはついにできないままに、ホームでの凱旋試合を黒星で飾ることになった。
この試合で何より際立ったのは、モチベーションの差だ。優勝を決めた名古屋にとって、残り試合はいわば消化試合。年間最多勝点72の更新やケネディの得点王争いなど記録の面での挑戦はあるものの、チームとして優勝が決まった後の戦いをいかに締めていくかは心情的に難しいものがある。一方でF東京は残留へ向けて勝点3がどうしても欲しい状況であり、この一戦に対する意欲の差は歴然としている。セカンドボールへの反応、競り合いの厳しさ、守備組織の緊密さなど、意識の違いが大きな差となって現れる部分において、この日のF東京は名古屋を上回っていた。
チャンピオンとなった以上、名古屋はその称号に値する戦いを見せる義務がある。実力伯仲のリーグ戦であるJリーグにおいて簡単な試合などないが、それでも順位にこれほど隔たりのある相手に完封負けを喫するというのはあってはならないこと。厳しい言葉で選手に猛省を促したストイコビッチ監督は、その点で正しい。残すところ2試合となった今季のリーグ戦で名古屋は“王者らしさ”を見せつけることが必要になってくる。
「優勝しても負けるとすごく悔しいですね。残り2試合、勝って締めます」
悔しさで紅潮した顔で話した選手会長・竹内の言葉は頼もしい限り。中3日で迎える次節のアウェー・磐田戦では、強い名古屋の再来に期待したい。
以上
2010.11.24 Reported by 今井雄一朗
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