11月23日（火） 2010 J1リーグ戦 第32節
鹿島 1 - 2 磐田　（14:04／カシマ／18,575人）
得点者：4' 前田遼一（磐田）、13' ジウシーニョ（磐田）、44' 岩政大樹（鹿島）
スカパー！再放送 Ch183 11/25（木）後10:00〜
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前人未踏とはどういうものなのか。たどり着いた者にしかわからない苦しさがあるのだろう。元横綱朝青龍のダグワドルジ氏は、連勝が63で止まった横綱白鵬に対して「負けた悔しさより、勝ち続けることの苦しみの方が大きいもの。誰もわからない世界ですから」とコメントを寄せたという。
前節で4連覇の夢が絶たれてしまった鹿島のイレブンに、なにが起きたのかは、当人しかわからない。もしかしたら、選手自身にもわからないのかもしれない。誰もが、勝たなければいけないことは十分に認識していた。しかし、心と体はバラバラだった。
「アントラーズの選手たちが目を覚ます前に、我々の選手たちがワンチャンス、ツーチャンスでゴールを決めてゲームを進めることができました」
磐田の柳下正明監督がそう振り返ったとおり、4分、13分と立て続けにゴールを奪った磐田が、リーグ戦ではじつに2002年9月7日以来8年ぶりに鹿島から勝利をあげた。

いずれの失点もミス絡みだった。鹿島の自陣左サイドでジウトンがクリアミス。あっさり相手に拾われてしまうとその左サイドを崩され、カバーに入った伊野波雅彦が足を伸ばすと、クロスボールは伊野波の背中に当たりふわりとゴール前へ。そこに走り込んだ前田遼一が豪快にヘディングを叩きつけると、開始わずか4分、電光石火の先制点が生まれる。
さらに13分には鹿島の右サイドを前田と山本脩斗のコンビネーションで崩される。中央に走り込んだジウシーニョは先にコースに入り込みジウトンを背中でブロック、左足を合わせて難なく2点目を陥れた。
「その2点があったから、自分たちのペースで試合を進めることが出来ました」とジウシーニョが言うように、ここから磐田は落ち着いた試合運びを見せる。自陣で網を張り、ボールを奪ったらカウンターという狙いをハッキリ持つようになる。運動量の少ない鹿島は、攻めのアイデアも少なく、引かれた相手を崩すことは難しそうに見えた。しかし、44分、岩政大樹が左CKに頭から飛び込み1点を返す。攻略の糸口が見えないなかでの貴重な得点となった。
後半、鹿島がようやく目を覚まし始める。が、最後まで完全に目を開けることはなかった。「2点、3点、取れました」と岩政が言うようにチャンスは迎えたがシュートは決まらない。あとは押し込むだけというビッグチャンスも、相手の懸命のブロックにあった佐々木竜太が「入れるところを入れなくちゃ…」と天を仰ぐ。磐田は鹿島の攻撃を凌ぎきった。
　
「今日はなにもないでしょ。前半が悪すぎた」
試合後、中田浩二は吐き捨てるようにそう言った。情けないプレーぶりだったことはどの選手も認識している。伊野波はそれを「自爆でしょ」と端的に表現した。
天皇杯を挟んだ中2日の4連戦。川崎F、C大阪に連勝したものの、3戦目の神戸に引き分け、4戦目では敗戦を喫した。そこから見えてくるものはただ一つ。疲労の蓄積に他ならない。主力選手の年齢が30を超え始めたことで、いままでと同じような戦い方を出来なくなってしまった。
「天皇杯を含めて全部勝ちたいです」
小笠原満男はいつものように勝利への執念を口にしたが、心身が伴わなければ無理がきかなくなっている。オズワルド・オリヴェイラ監督は「ジュビロが持つメリットも讃えなければならない」と相手を持ち上げたが、天皇杯でもう一度連戦がやってくる。リーグ戦の2試合と共に、この天皇杯をどうやって戦うのか、注目度は高い。

以上

2010.11.24 Reported by 田中滋