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【J2:第36節 柏 vs 横浜FC】レポート:ついに訪れた戴冠の時。戦う姿勢を貫いた横浜FCの挑戦を退け、老獪に勝ち切った柏がJ2優勝のタイトルを手にする(10.11.24)

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11月23日(火) 2010 J2リーグ戦 第36節
柏 2 - 0 横浜FC (19:34//8,415人)
得点者:19' 藏川洋平(柏)、72' 田中順也(柏)
スカパー!再放送 Ch183 11/26(金)前05:00〜
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「優勝して昇格しないといけないとみんなが言っていた。でも最初から先をみていたわけじゃなくて、1試合1試合、最後だというつもりでやってきた」。J2優勝のシャーレを手にした大谷秀和はいかにも彼らしく、冷静に記者の質問に答えた。昨シーズンの降格で痛切に感じた「1試合の重み」。だからこそ目の前の試合を全力で戦うという、柏の全選手に共通した思いがあった。

そういった「1試合の重み」の念は今節も揺らぐことはなかった。残りの3試合で勝点2を獲得すれば優勝が決まる状況だったとはいえ、選手たちには「この試合で決める」という強い気持ちがあり、それが立ち上がりの攻勢を呼び込んだ。
ルーズボールに対するセカンドボールへの対応、あるいは横浜FCの攻守が切り替わった際の縦パスをインターセプトするなど、茨田陽生、栗澤僚一、大谷らが中盤を制し、レアンドロ・ドミンゲスを起点に柏が局面を切り崩していく。ハーフタイムに「ビルドアップは完璧」とネルシーニョ監督に言わしめたほど、横浜FCのプレスをパス交換でいなしながら、小林祐三と藏川洋平の両サイドバックが機を見て攻撃に絡み、低い位置から構築する柏のスタイルが発揮された。

19分、茨田から左サイドへ流れた北嶋秀朗へパスが出る。これを北嶋が落とし、後方からゴール前のスペースへ猛然と走り込んだ藏川がペナルティエリア深くまで侵入。そして振り抜いた左足シュートはブロックに入ったDFのリフレクションとなってコースが変わり、ゴールネットを揺らした。
ところが優勝の懸かった試合であったせいか「今日優勝を決めるという意識があって早く2点目というのがあった」(大谷)と柏が攻め急ぎ、前への比重が大きくなったことで先制後は全体のバランスを欠いてしまう。すると横浜FCは前線のカイオが頻繁に中盤まで降り、またはホベルトがボールサイドに寄りながら、柏の中盤ボックス型のシステムに生じる両サイドのスペースを突き、次第に押し返す。バランスを欠いた柏の守備組織の背後を狙うか、サイドハーフ、サイドバックが高い位置まで入れずともアーリークロスから活路を見出し、36分には柏GK菅野孝憲のファインセーブに阻まれはしたものの、難波宏明のダイビングヘッドで決定機を作り出した。

ハーフタイムのネルシーニョ監督の修正が功を奏し、後半の柏はバランスを取り戻した。「1−0で勝っているので相手が出てくる。そうなるとスペースが空く」(栗澤)。一方、横浜FCはタメを作れるアタッカー寺田紳一を投入。「寺田が入ると変わるし、ボールを持てる時間、崩せる時間ができる」(横浜FC・八角剛史)。両者の一策がしのぎを削り合う。バランスを整え、カウンターから老獪に2点目を狙おうとする柏と、柏の陣形を崩すために攻撃を仕掛ける横浜FCという構図が出来上がった。前述の寺田の投入によって、横浜FCがサイドのスペースで起点を作るケースが増えたために、さらにネルシーニョ監督は一手を投じる。「相手のサイドバックを見ろ」と田中順也を投入し、中盤の並びをサイドハーフを置いたワイドな配置へ変更。蓋をするような形でサイドのスペースを遮断した。
こうなると柏のカウンターがハマりだす。右サイドに開いたレアンドロ・ドミンゲスと横浜FC左サイドバック、阿部巧のマッチアップが数回に渡り火花を散らし、「後半だけでも4回カウンターで対応する場面があって、2回は止められたけど、2回はシュートまで持っていかれた」(阿部)と、レアンドロ・ドミンゲスの突破から迎えた柏の決定機は阿部の対応とGK関憲太郎のセーブでしのぐも、72分、パク・ドンヒョクのフィードに反応した林陵平がマーカーと巧みに入れ替わり、ゴールへ独走。GKとDFが囲い込み、一度はクリアしたかに思えたが、こぼれ球を田中が左足でゴールへ突き刺し、2−0。狙い通りの形で試合を運んだ柏が勝ち切り、J2優勝のタイトルを手にした。

「今日は駒が不足していたので、でも出し切ったと思う」と岸野靖之監督は語った。怪我人続出、累積による出場停止など、ベストメンバーを組めない中にあって、横浜FCは確かに戦う姿勢を貫いていた。それらを踏まえたうえで「頑張るだけでは勝てない。横浜FCのこれから先の大事なことがすごい見えた」と言い、柏のJ2優勝を目の当たりにし、「あれを来年やらないかんのかなと思いました」と強い決意を露わにした。同じくベストメンバーを組めないながらも、時間帯によってサッカーを使い分け、老獪に勝ち切った柏から何かを感じ取った熱き指揮官は、「大事なことなのでペラペラとは言いませんが」と“大事なこと”の核心については言及を避けたが、横浜FCが今シーズン以上に来シーズンの昇格戦線を賑わすことは間違いないと見ていい。

第33節の岐阜戦に続き、柏のホーム日立台には連続して特別な歓喜が訪れた。ネルシーニョ監督自ら先導したビクトリーラン、シャーレを掲げるキャプテンの大谷。開幕前に掲げた「昇格」と「J2優勝」を今ここに達成した選手・監督・スタッフを心から祝福したい。だが、まだシーズンは2試合残されている。気を緩めることなく、「1試合1試合を全力で」という気持ちを最後まで貫き、来シーズンへつなげてほしい。

以上


2010.11.24 Reported by 鈴木潤
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