スカパー!生中継 Ch180 後01:10〜
☆totoリーグ |中断期間を振り返るJ1編
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※浦和側プレビューはこちら
3月11日の震災発生以降、ここ仙台、宮城において、フットボールは存在する場所を失っていた。
社会人、部活動、少年団などすべてのカテゴリーにおいて、少なくない数のクラブが活動自体の危機に立たされたり、施設が被害を受ける、もしくは避難所として提供されているといった理由で、練習場所の確保も難しくなっている。こうした事情もあり宮城県サッカー協会は、傘下の団体に対し、今はサッカーよりも復興を優先させるべきという通達を発表。さらにアマチュアクラブの夢舞台だった天皇杯の、宮城県予選中止も先日伝えられた。
このような状況を踏まえれば、ベガルタ仙台がこうして活動を続けていられるのがいかに幸せなことなのか、県外の皆様にもご理解いただけると思う。もちろん、現場の選手一人一人にもそうした感情は行き届いており、先日の川崎F戦で決勝弾を決めた鎌田次郎は試合後、サポーターへの感謝を語るより先に「(川崎F戦に向けて関東でチームが行った)ミニキャンプでお世話になった方など、この試合を始めてもらう上で、周りの方々の協力も感じたので、これからも感謝の気持ちを持って戦っていきたい」と、サッカーをできる状況を与えてくれた方々への感謝を口にしていた。仙台のサポーターならばチームが置かれていた状況は分かっているだろうから、こちらを先に語った彼の思いも理解できるはずである。
だが、幸せを享受できる立場である彼らは、同時にある種の責任も背負わなくてはならない。責任というか、「役割」といった方が適切か。この地を代表するクラブとしての役割…
それはきっと、この地にフットボールが帰ってきたこと、フットボール自体やその情熱は決して失われていなかったことを、自らの存在を持って世界中に高々と知らしめることなのではないか。
今節に関してはこのように、試合が行われる意義が深すぎるため、正直なところ細かな戦況予想は意味を成さない気もしているが、それではさすがに怒られるので、まずは仙台から。
前節の4-2-3-1に変わり、今節は紅白戦から4-4-2を採用していた。ボランチとDFラインの顔ぶれは変わらないものの、サイドMFは右に太田吉彰、左に梁勇基となり、今週、胃腸炎による体調不良に見舞われていた関口訓充はメンバー外。2トップに赤嶺真吾と中島裕希という組み合わせだ。
ただ、紅白戦の2本目から関口は復帰。同時に松下年宏が加わったことで、2本目は面白い中盤の攻勢となっていた(誰が外れたかは触れないでおこう)。
この戦術変更もそうだが、今季の仙台は試合の状況によって使い分ける様々なオプションが見ていて楽しいし、何より効果を発揮している。前節の川崎F戦も、1点のビハインドを追いつくべく、梁をボランチに下げた攻撃的布陣で相手を揺さぶり、同点に追いつくやいなや、また中盤の構成を変えていた仙台。「ピッチ上の変更に、選手が柔軟に対応できている」(赤嶺)と、選手にも自信が生まれつつあり、この点は注目である。
一方の浦和。開幕こそ神戸にアウェイで完封負けを喫したが、再開初戦の名古屋戦では3-0と快勝。そこで猛威を振るったのが「ショートカウンター」だった。「タレントが揃った中でも、謙虚な戦い方を貫いている」とは、この浦和のサッカーを評した手倉森誠監督の言葉だが、敵陣で奪って素早く縦に持ちこみ、手数をかけずにゴールを陥れるという意志が統一されていることで、浦和の誇る魅惑の攻撃陣がよりその能力を引き出されているように映る。
迎え撃つ仙台としては、彼らの「餌」となるような自陣でのミスは絶対に避けなくてはならない。振り返れば前節の川崎F戦も、失点は自陣からの展開のパスをカットされたのがきっかけだった。ホームでの開催を待ちわびた大観衆を前に、少しばかり気持ちが高ぶるのは致し方ないが、冷静さだけは、頭の中から失われないようにしたい。
そんな一戦、舞台はこの街が誇るフットボールスタジアム、ユアテックスタジアム仙台。相手が浦和ということも含め、この地のフットボールにとって「再生の合図」を打ち上げるのに、これ以上の恵まれたシチュエーションはない。
開催にこぎ着けるにあたり、スタジアムの修繕に全力を尽くしていただいた関係者の尽力を讃えたい。4月7日から応急処置を開始し、その日の夜に最大震度6強の余震が発生するなど困難のスタートとなったが、それでも本来は試合前日の28日までかかると予想されていた作業は、1日早く27日に最終確認を行うまでに進んだ。本来、3月12日のホーム開幕戦にお披露目となるはずだった新設のLEDビジョンも、27日のスタジアム練習時には高精細の映像が輝きを放っていた。またこの試合日に合わせ、仙台市地下鉄も全線開業となる。
こうして復活したスタジアム。そのスタンドに「命」を吹き込むという大役は、選手たちと共に、今回ソールドアウトとなったチケットを手にできた、仙台、そして浦和の両サポーターに託された。
手倉森監督は、この一戦を前に、両サポーターにこう呼びかけてくれた。「ベガルタゴールドと赤が交わって、いい雰囲気をぜひ作ってほしい。我々は埼玉でキャンプをし、浦和のグラウンドも借りた。そうしたフレンドリーな部分と共に、でもピッチの中にはプロとしての激しい戦いがあるというところともバランスよく、その日のゲームが行われる上で、サポーター同士も関わっているんだということを感じてほしいと思います」。
大げさな表現ではなく、世界中が、明日の仙台での一戦を見ている。この日スタジアムにいる全ての人間の協力と奮闘で、最高の光景を作ろうではないか。
宮城に、仙台に、フットボールが帰ってくる。
震災前ならば、何気ない一日だったのかもしれない。だが今となっては、重たい意味を持つことになった、そんな一日が、やってくる。
以上















