5月7日(土) 2011 J1リーグ戦 第10節
神戸 1 - 0 川崎F (14:03/ホームズ/10,364人)
得点者:68' 朴康造(神戸)
スカパー!再放送 Ch308 5/9(月)前06:00〜
☆totoリーグ
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ちょっと前の話。神戸の和田昌裕監督は、小柄な彼について「サッカーを知ってるなぁいう感じやったよね」と評した。その日の練習試合で、その男は本来の右サイドからボランチに入っていた。ケガ人の都合で半ば仕方なく……の起用だったにも関わらず、監督も「なかなか面白かったね」と心を揺らす動きだった。この選手は、チーム全体を見て、足りないところを補う能力に長けているのかも知れない。一言でいうとセンスがある。
日常の、いつもの話を加えておく。彼は努力家タイプだ。練習を黙々とこなし、激しくぶつかり、チームを一つ上のレベルへ押し上げようという気迫すら感じる。そして、練習後はさっさと帰路につく。取材陣が「え、もう帰った?」と驚く時もあるほど、行動は速やかだ。同じように、相手チームにとっては、彼の動きを捉えるのは難しいのかもしれない。神出鬼没だ。
5月7日の話をする。神戸は再開後、ドロー、負け、負けと白星なしでこの日を迎えた。一方の川崎Fは前節に磐田に競り勝ち、連敗をストップさせている。中村憲剛、山瀬功治、ジュニーニョら豪華な顔ぶれを見ても、下馬評は川崎Fの優勢だったといえる。
だが、川崎Fの相馬直樹監督が記者会見で「暑さのせいか、選手たちの足が動かず、ボールを保持できず…」と振り返ったように、攻撃陣に迫力は感じられなかった。左サイドバック小宮山尊信のオーバーラップにも本来のキレがない。トップの矢島卓郎もポストはできても突破はできないといった印象だった。
もちろん、暑さやタイトなスケジュールは神戸も同じだ。だが、今日の神戸は気合いが違った。目つきも鋭い。「2連敗中でしたし、もう、いい内容でしたという言い訳は通用しない」(和田監督)という覚悟のようなものを感じた。DFの北本久仁衛によると「みんなでハードワークしようと言って試合に挑んだ」そうだ。
それでも、前半は川崎Fが何度か決定機を作る展開。その時間を凌ぐと、神戸もセカンドボールを拾ってコントロールしようとするが、最後の最後が決まらず、0−0のドローで折り返した。
後半に入っても、しばらくは似たような展開が続いた。動いたのは68分。神戸の朴康造が交代わずか1分ほどで、しかもファーストタッチでゴールネットを揺らした。小柄で、帰りが速やかな、あの男だ。
もう少し、このゴールが生まれた状況を振り返っておこう。すると、より朴康造らしさの出たゴールだということが分かるはずだ。
このゴールが生まれる前、センターサークル付近で川崎Fのジュニーニョが北本との接触プレイで倒れ込み、しばらく試合がストップしていた。アディショナルタイムが6分だったことを考えると、それ相応の時間が流れていたといえる。この間、言い方は悪いが川崎Fの集中力が少し緩んでいたように思われる。連戦の最後でアウェイという疲れもあれば、気温約23℃の暑さもあるだろう。神戸の選手が各自のポジションに戻って準備をしていたのに対し、川崎Fの選手は倒れたジュニーニョの周りにワラワラと集まり、事の成り行きに身を委ねるといった雰囲気だった。
試合再開後、67分に神戸はトップの森岡亮太に代わり、朴が入った。これにより右サイドに朴、トップに大久保嘉人、左サイドにホジェリーニョという布陣に。そしてホジェリーニョがゴールラインをえぐり、中央へ流れた球を朴がゴール右端へ決めた。川崎Fの中村は「(川崎Fの選手が)ボールを外に出すかどうか迷っている間に決められた。本当にもったいない点」と振り返っていることからも、一瞬の隙が生まれたのは確か。あの試合中断が無ければ……という見方もできるだろう。
しかし、違う角度で見れば、朴康造がいたから生まれたゴールとも言える。練習中でも、この男の集中力はほとんど切れない。ましてや試合に彼が集中しないはずがない。この日もベンチで「試合に出たら、どんなプレイをしようか考えていた」と言う。ホジェリーニョが左サイドをドリブルで崩しにかかると、朴はサササッとゴール前へ忍び寄っていたことを考えても、この瞬間、ピッチ上で最も集中していたのは彼かもしれない。
とにかく、このゴールを守りきった神戸は連敗を止め、リーグ再開後初の勝点3を手にした。
試合後の話。各紙ほか神戸の担当記者たちは、監督会見もそこそこに切り上げ、ミックスゾーンへ急ぎ足で集まってきた。そう、朴がいつものように、風のように帰ってしまうかもしれないという不安が頭をよぎったからだ。だが、さすがにこの日はヒーローインタビューなどもあり、現れるのは遅かった。そして囲み取材では様々な質疑応答があり、ある記者が試合後のカズダンスについて質問した。昨季、J1残留を決めた浦和戦以来となる朴康造のカズダンスについて、朴は笑顔でこう答えた。「チャリティマッチでカズさんが決勝点を決めて、踊っていて、改めてすごい選手だと思った。自分も決勝点を決めたら、踊ってやろうと……。カズダンスのフランチャイズ権を持っているのは僕くらいのもんだと思いますからね(笑)」。
そう言い残し、またいつものように、いつの間にか、彼の姿は取材陣の前から消えていた。
以上
2011.05.08 Reported by 白井邦彦
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