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【J1:第10節 広島 vs 甲府】レポート:広島・甲府共に勝点1を分け合った熱戦だったが、両チームで4人もの負傷退場者が続出してしまった。(11.05.08)

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5月7日(土) 2011 J1リーグ戦 第10節
広島 1 - 1 甲府 (13:04/広島ビ/12,481人)
得点者:10' ハーフナーマイク(甲府)、73' 佐藤寿人(広島)
スカパー!再放送 Ch186 5/8(日)深02:00〜
totoリーグ
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正直に言えば、試合レポートを書く気持ちになれない。
試合のストーリーを語れば、10分、2列目から飛び出した永里源気のクロスからハーフナー・マイクのヘディングで甲府が先制。73分にはミキッチのスピードがPKを奪い、佐藤寿人が決めて広島が追いつく。前からの守備を甲府が仕掛け、広島に混乱を与えて得点に結びつけた。一方、広島は決定機を量産したが得点を奪えず、PKによって引き分けに持ち込んだ。どちらも「勝てた試合」だったし、どちらも「勝点1を奪った」と思える試合だった。

だが、両チームに与えられた勝点1の重さなど、水本裕貴という一人の男の生命と比較できるはずもない。
試合後、彼が病院に搬送され、緊急手術を受けたと聞いた時から、もう何も手がつかなかった。だから21時31分、サンフレッチェから水本の状況に関するリリースが出た時、その内容を見ることが怖かった。

診断名=頭蓋骨骨折。急性硬膜外血腫。
手術名=開頭血腫除去術。
全治=4ヶ月程度の見込み。

ほっとした。生命に別状はなかった。だが頭蓋骨が骨折し、脳を包む硬膜との間に血腫ができ、その除去のために開頭手術が必要だったことも現実だ。「全治4ヶ月程度」だから、脳に損傷はなかったのだろう。だが、もし硬膜の奥まで損傷していたら……。想像するのも恐ろしい。
広島の背番号4が負傷したのは、前半7分のこと。森崎浩司のコーナーキックが甲府陣内の上空を舞う。フワリとした軌道のボールに、ゴールを狙った水本は勢い良く飛び込む。その時に「事故」は起こった。ボールをクリアしようと両腕を上げて飛んだDFの左肘が、水本の右側頭部を直撃したのである。
主審と寿人、そして甲府DFも心配そうに駆け寄る。水本、頭を抑えながら動かない。ピッチ横には広島のドクターとトレーナーが待機するも、主審は「待て」のサイン。後にVTRで確認すると、吉田寿光主審は何度か水本に声をかけ、意識を確認している。「外に出ますか」と治療を促しているようにも見える。だが彼は約50秒後に立ち上がり、ゆっくりとではあるが立ち上がってボジションに戻った。おそらく、主審には「大丈夫です」と言ったのだろう。まさかこの時、彼が頭蓋骨を骨折しているとは、誰もわからなかった。

10分に広島が先制を許した時、実は広島には二人の負傷者が存在していた。1人は、水本。もう1人は、青山敏弘だった。8分、ハイボールを競り合って着地した瞬間、紫の背番号6の左膝が悲鳴をあげる。彼の左膝は一昨年から昨年にかけて、半月板の手術をした箇所。6年前には前十字じん帯を断裂した部位でもある。
この後、青山はほとんど走れなくなった。それでも、彼は足を引きずりながら、必死にもがいた。だが、ハーフナーのゴール直後、青山は座り込んで動けなくなってしまう。4分、転倒した時に左腕を負傷(脱臼という情報もあるが、詳細は発表されていない)した甲府の主軸・石原克哉も含め、8分間で二人の選手が負傷のためピッチを去った。さらに前半終了間際には中島浩司が左足首の負傷で交代。水本も56分に交代しており、ケガで4人もの選手がピッチを去るという異常事態に陥った。

それにしても凄まじかったのは、水本裕貴のプレーだ。
13分、負傷した時と同じようなCKに、彼は同様の勢いで飛び込んだ。16分、甲府のパスをカットした水本は、そのまま前線に走ってコンビネーションに参加し、李忠成のポスト直撃シュートを演出した。22分・32分、いずれもCKに対して果敢に飛び込み、再び右側頭部に相手の肘がぶつかった。それでも彼は立ち上がり、凄みすら感じさせる守備を随所に見せた。50分すぎ、永里やハーフナーとの1対1にさらされても、頭脳的な位置取りで相手のプレーを限定させ、完璧にボールを奪って見せた。
なんという勇気。なんというプロ意識。
彼は頭蓋骨を折りながら、プロフェッショナルにふさわしいプレーを見せつけたのである。
だがもう、そこまでが限界だった。吐き気と頭痛に襲われた誇り高きDFは交代を要請。そのまま救急車で病院に搬送され、緊急手術を受けたのである。
サッカーは、身体と身体を激しくぶつけあう球技だ。気持ちが入っていればいるほど、ボールに対する激しさはさらに増していく。それが、サッカーの魅力の一つであることは疑いないし、水本の負傷も気持ちが入った激しさの中で起きた、不幸な事故だ。誰が悪いというわけではない。

今は、水本・青山・中島・石原の負傷が一日も早く回復することを、心から祈りたい。そして、このような負傷者続出の試合が、Jリーグから消滅することを願ってやまない。もう二度と、こんな不幸な試合のレポートを、皆さんにお届けしたくない。

以上

2011.05.08 Reported by 中野和也
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