5月28日(土) 2011 J2リーグ戦 第14節
横浜FC 1 - 2 熊本 (16:03/ニッパ球/1,853人)
得点者:5' 吉井孝輔(熊本)、21' ファビーニョ(横浜FC)、41' エジミウソン(熊本)
スカパー!再放送 Ch182 5/29(日)深01:00〜
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上手い選手を揃えてボールを繋ぐことを攻撃の柱とする横浜FCと、安定した守備をベースに相手の隙を利用するスタイルの熊本の対戦。横浜FCから見れば、先に得点すれば熊本が攻撃に移らざるを得ずその長所を消すことが出来る一方、先に失点すれば熊本の術中にはまってしまう。そういう互いの長所が対応するだけに、お互いに先制点が重要となる試合であることは、両チームとも十分に理解していたに違いない。実際の試合自体は、先制された横浜FCが一度は追いついて、熊本が突き放す展開だったが、熊本の先制点によってメンタル的には熊本が横浜FCを上回り続け、そのことが試合結果に直結した試合となった。
その先制点は、早い時間に熊本にもたらされた。5分、柳沢将之のクリアボールを、吉井孝輔がカット。そのボールを、空いてしまったバイタルエリアに走り込んだファビオが受けると再び吉井に渡し仲間隼斗に展開。ファビーニョが一度はカットするが、バイタルエリアにこぼれたボールに、再び吉井が走り込みミドルシュートをたたき込む。2度のクリアボールの処理で、ダブルボランチがバイタルを空けて出来た隙を熊本が見逃さなかった。この試合が初めてとなる八角剛史とファビーニョのコンビネーションの甘さが失点に繋がった。
先制点が熊本に入ると、勝ちから見放されている横浜FCの動きは停滞するが、今季初出場となる八角が、時に前線に走り込むなどフリーランニングを何度も見せると、徐々にファビーニョにボールが集まるようになる。そして、21分に得たCKの流れからファビーニョが来日初ゴールを挙げて同点に。これで、ニッパツ三ツ沢球技場を覆っていた重苦しい雰囲気は一変。横浜FCは前からのプレスを活性化させ、ボランチを中心にボールが回るようになり、ようやくリズムを掴む。ここで、高木琢也監督は、仲間に代えて武富孝介を投入。横浜FCのダブルボランチを押さえ込むべく、フォーメーションも4-1-4-1に変更する。この交代が後に大きな意味を持つようになる。
41分、再び横浜FCが隙を見せてしまう。熊本のFKのクリアボール。熊本のDFラインに戻ったボールに横浜FCが5人という人数を掛けた強烈なプレッシングで相手をはめ込む。ボールを取れれば、逆転のビッグチャンスとなる勝負どころ。しかし、ボールを取りきることが出来ず、逆にカウンターを受けると、5人を掛けた分後手を踏むこととなり、最後エジミウソンにゴールを決められる。前半終盤、相手のフォーメーション変更でリスクマネジメントを考える必要がある時間での、勝負どころで見せたミスでの失点となった。
岸野靖之監督はハーフタイムにフォーメーション変更への対応を指示して選手を送り出すが、高木監督の交代が効果を発揮し、横浜FCのダブルボランチと周囲の関係が寸断される。その結果、再び横浜FCの各選手が孤立する場面ばかりに。熊本から見れば、思い通りに横浜FCの攻撃のスピードを落とし、時間を掛けることに成功。横浜FCは、選手交代でもこの状況を打開することはできず、後半に放ったシュートはカイオの1本だけ。試合を通して3本と、完全に高木監督の術中にはまる形となった。熊本は、前半に先手の取り合いで競り勝ち、後半はリードを背景に時間を有効に消費するという、ゲームプランに添った戦いぶりで、勝点3をしっかり手にした。
横浜FCにとっては、八角の復帰でファビーニョが活きる場面が増えたことは光明ではあるが、一度リードされてしまうとチームの連携が極端に悪くなる呪縛を解き放つことはできなかった。先制された試合は5敗1分で、岸野監督就任後1回も逆転勝ちはない。逆に第9節の湘南戦のように、先制すれば守りきれる力は持っている。逆転ができるチームになることは簡単ではない。まずは、ゲーム展開においても、精神的にも先手を取っていく試合運びができるようになることが、上昇への第一歩となる。メンタルの重しを取り除き、まずは出来ることから一歩一歩高めていくことが最優先課題だ。
熊本にとっては、狙い通りの展開でアウェイ初勝利と、満足できる展開となった。試合展開に対する自信という点でも横浜FCを圧倒。先制点のミドルは素晴らしいゴールだが、「このゲームに向けた彼のトレーニングの中の1シーンが、あのゴールとして出た」と指揮官が述べるように、必然のゴール。このような必然を、今後も積み重ねられれば、勝ち続けられるチームになるだろう。
先制点の行方で試合結果が決まるという点では、事前の予想の範囲内に収まったゲーム。台風接近の雨の中にもかかわらず駆けつけた1,853人のファンにサプライズを見せることはできなかった。偶然性のあるサッカーというスポーツの中で起きる必然を確実に多くすることがチームを強くするということであれば、その差を見せつけられる試合となった。
以上
2011.05.29 Reported by 松尾真一郎













