5月28日(土) 2011 J2リーグ戦 第14節
水戸 0 - 5 鳥栖 (13:05/Ksスタ/1,794人)
得点者:26' 早坂良太(鳥栖)、55' 早坂良太(鳥栖)、60' 豊田陽平(鳥栖)、75' 野田隆之介(鳥栖)、90'+3 豊田陽平(鳥栖)
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若さゆえの大敗と言おうか。これまでの水戸は「若さ」を勢いとして出すことができていた。しかし、この日の水戸は一度崩れると、そのまま立て直すことができないままどん底まで落ちいってしまった。「若さ」が生んだもろさ。それが如実に表れたのが、3失点目の場面。自陣左サイドでオフサイドのセルフジャッジをしてしまい、足を止めた隙を突かれて失点を喫したのである。「完全な気の緩み。自分たちの責任」と塩谷司は肩を落とした。
両チームともFWにボールを当て、そこから展開してスピーディーな攻撃を仕掛けることが攻撃面の狙いであった。スリッピーかつぬかるんだピッチというボールコントロールが難しい状況だからこそ、質の差が顕著に出ることとなった。鳥栖はボランチの岡本知剛が左右に効果的にボールをさばき、水戸の陣形を崩してクサビのボールを入れることができていた。しかし、水戸は「相手のパワフルなアプローチに対して、ボールを散らすことができなかった。ポイントはそこにあった」(柱谷哲二監督)。水戸のボランチの村田翔と西岡謙太は鳥栖の強烈なプレスを前にパスミスを繰り返し、自らストレスを溜める展開を招いてしまったのだ。
守備でも後手を踏んだ。26分に右サイドからのクロスを受けた早坂良太に対して、塩谷が簡単に振り切られて先制点を許すと、55分にはセンターサークル内からのFK、ゴール前に送られたロングボールに対し、水戸DFが競り負け、こぼれたボールを押し込まれて追加点を許してしまう。攻守において見せつけられた「個」の力の差。2点差を返すためにも、組織で立ち向かわなければならなかった。
だが、そこからの水戸は無惨であった。集中力の欠如からの3失点目、マークの受け渡しができずにフリーでクロスを上げられて喫した4失点目、そして、DF裏を簡単に突かれて決められた5失点目。「組織で守らないといけないのに、全体がバラバラになってしまった」と塩谷が言うように、苦しい状況に陥るほど、チームの和が乱れていってしまったのである。
「水戸は今まで大量失点をしているチームではなかった。でも、こういう展開になって、歯がゆくなって、プレー以前の問題が出ていたんだと思う。チーム内で聞き苦しい言葉を言い合っていた」。そう語るのは、鳥栖の豊田陽平。相手チームの和が乱れれば乱れるほど、「もっと点を取れる」と思っていたという。それらの言葉が、水戸の「若さゆえのもろさ」を証明していると言えるだろう。「苦しい時にまとめる人がいなかった。声を掛け合って立て直すことができなかった。水戸のモットーは『明るく元気に』。でも、今日は暗くて、つまらないゲームをしてしまった」と塩谷は唇を噛んだ。
長いシーズン、いい時ばかりではない。悪い時にどれだけ踏ん張ることができるか。それがリーグ戦を戦うにおいて重要なことである。今季の水戸は大卒ルーキーが多く、それ以外も年間通して主力として戦ったことのない選手ばかり。様々な波にぶち当たるのは当然のことと言えよう。ただ、大切なのは、この経験をどう生かすかだ。「この負けから学ばないといけない」。岡田佑樹は若いチームにそう語りかける。もう同じ過ちを犯してはいけない。強いチームとは、苦しい時に助け合えるチームである。水戸はそんなチームに近づいていかなければいけない。次節、栃木との北関東ダービーで真価が問われることとなる。「次が本当に大切。そこでやれない選手はこのチームにはいらない」。本間幸司はそう言い放った。厳しい言葉だが、水戸が前進するためには必要な言葉。この痛みを無駄にしないことが、次への一歩となる。
「まさかこんなに点を取れるとは」と岡本は苦笑いを浮かべた。だが、それだけの力の差を見せたことは確かである。フィジカル、技術、戦術、すべてで水戸を上回っていたからこその大量得点。その強さの秘訣を水戸の柱谷監督は「松本育夫(前監督)が作った伝統」だという。
04年に鳥栖の監督に就任し、07年からはGMとしてクラブの強化に尽力してきた(昨季は監督を務め、今年はアドバイザーを務めたが、5月に退任した)。そして、7年かけて鳥栖に「みんながハードワークして、個を強くしていって、しつこく90分走りきる」(柱谷監督)というコンセプトを植え付けた。監督が替わっても、その部分にブレはなく、クラブとして進歩を続けている。それが現状の好調ぶりにつながっているのだと柱谷監督は言う。「我々のチームもそうしていきたい」と語る柱谷監督の気持ちが分かるほどの、強さを見せつけた鳥栖。この日の結果により、暫定首位に立った。
2得点を決め、勝利に大きく貢献した豊田は強い口調でこう口にした。
「僕たちの手でチームの歴史を変えたい」。
豊田の目には“夢”ではなく、確かな“目標”として、栄光を勝ち取る姿が映し出されていた。
以上
2011.05.29 Reported by 佐藤拓也













