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【J1:第13節 甲府 vs 山形】レポート:お互いに勝てたと思う内容で引分け、残ったのは虚無感と危機感か。(11.05.29)

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5月28日(土) 2011 J1リーグ戦 第13節
甲府 1 - 1 山形 (16:03/中銀スタ/7,582人)
得点者:21' ハーフナーマイク(甲府)、26' 伊東俊(山形)
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山形との対戦は08年のJ2リーグ以来3年ぶり。執拗にボールにプレスをかけてくることは分かっていたがその粘り強さが後半になっても衰えないことにJ1リーグ3シーズン目の理由を感じた。前半は乳酸も溜まっていないし気力充分だから甲府の選手はガツガツやられながらも、12分にはそれまではクサビのボールを足元でトラップしていたハーフナー マイクがワンタッチで捌き、17分にはワンタッチパスを3本連続して後手を踏ませて期待を持たせてくれた。21分のゴールはボランチの犬塚友輔がインターセプトしたボールが起点になって左サイドから吉田豊が入れたクロスがゴールに繋がった。決めたマイクは「(永里)源気のシュートの跳ね返りを入れただけ」と言ったが、いい流れのゴールだった。甲府の選手が自分たちのアイディアで山形のガツガツ・プレスに対応して創造した素晴らしいゴール。山形・小林伸二監督は「ミスがらみからの失点」と会見で話したから許せないミスがあったのかもしれないが、ミス無しで失点することなんてないから甲府贔屓の記者席からは山形のミスというより甲府の攻撃がよかったと感じていた。

問題はその5分後。先制ゴールの甘い味をまだ口の中で転がして楽しんでいるときだった。ミルキーを食べていたら奥歯の詰め物が取れたような気分になる失点だった。「スローインに逃げる」と言うが、いつも逃がしてくれるとは限らない。昔、多々良学園高(現・高川学園高)の白井三津雄監督(現・宇部鴻城高監督)がスローインからの攻撃の練習をずっとやっているのを見たことがあるが、勝つための執着心が凄い名監督がそれをやるだけの理由を嫌でも思い出すことになってしまった。それまでは甲府にリードを許した山形に焦りがあるように見えて内心ほくそ笑んでいたのだが、甲府は失点しそうな雰囲気はなかったのにスローインからのボールをクリアしきれずに、こぼれ球を伊東俊に決められてしまった。スローインは怖い…。そして、伊東にとって素晴らしいJ1初ゴール。このゴールで山形の気力や活力やガツガツ・プレスも完全復活。今度は山形の圧力で甲府が前線にボールを収めることが出来なくなり、どっちに転ぶか分からない展開になった。

甲府は後半開始から片桐淳至を投入。当然、片桐・マイクのホットラインに期待する展開となる。しかし、後半開始直後に犬塚が足首を痛めて不安要素があるままゲームが進み、お互いにロングボールを入れてそのこぼれ球を狙うような場面が多かった。雨のなか踏ん張りが利かずに滑って転ぶ選手が少なくなかったが、ホームの甲府は芝生の特徴が分かっているだけにスパイクの選択などもう少し対応できてもよかったのではないだろうか。60分には自陣ゴールエリアでそこだけ芝生ではなく昆布でも敷いてあるかのように守備陣が滑ってしまい中途半端なタックルしか出来ずに長谷川に決定的なシュートを許してしまう。ファーサイドに飛んだボールを見て失点を覚悟したが、そこに白馬に乗った山本英臣が猛烈に駆け戻ってきて大陸間弾道ミサイルを迎撃するほどの難しい確率のヘディングクリアをやってのけた。この神懸りクリアで甲府は助けられたのだが、その後もお互いにシュートで終わることが出来ない攻撃を繰り返して中盤戦に突入。甲府は67分に片桐からマイクに必殺のロングパスが通るがトラップミスでシュートを打てなかった。2分後には吉田・永里・マイクのコンビネーションで左サイドハイウェイを甲府ボールが駆け上がるが山形ゴールの手前が工事中でシュートには至らない。

中盤から終盤にかけて甲府はサイドからクロスを入れて決定的な場面を何度か作ったもののあと一歩、あと1メートルの精度を詰めきれずにシュートチャンスを逃がし、シュートがゴールから逸れた。山形も最後まで粘り強く戦い甲府のパスミスを誘って決定機を作り出すが、山形も最後の精度不足でゴールを決められなかった。降格候補と目され、それなりに危険な順位・勝点状況にあるチーム同士の対決が「勝てたのに…」という印象で引分けに終わると試合後に残るのは虚無感と危機感だけ。山形は3連敗から少し右肩上がりを感じることが出来るのかもしれないが、甲府に感じるのは停滞。第11節に名古屋に勝ったときのドキドキやワクワクは消え去り、星取表が去年の降格チームと同じような図柄になっていることを意識してしまう。マイクをずっとマークしていた山形の園田拓也は、「マンツーマンのつもりで戦った。マイクは競る前に身体をぶつけてくるので少し距離をとってから身体を入れて競るようにした。やっているうちに競り勝つやり方がわかってきた。マイクのように長身の選手が一旦足元にボールを収めると、ワンタッチではパスを出せないことが多いから守備のやりようはあった。一番嫌だったのはワンタッチではたかれること。後半は片桐さんが入ってきてタメを作られてマイクに合わせてくるのが嫌だったし、永里がダイアゴナルに走ってマイクがファーに逃げられると対応が難しかった」と話している。このコメントの中に甲府の攻撃面のストロングポイントと修正点が入っている。

「もう8試合」ではなく、「まだ8試合」だと思っているが早めに改善していかないと危機感ばかりが成長してしまう。これは甲府も山形も同じだと思う。J2からJ1に昇格し、J1サロンに何年座っていたら「残留した」ではなく「定着した」とガンバ兄さんや鹿島の兄貴から言ってもらえるようになるのかは分からないが、山形に追いつきたい甲府、4年目を迎えたい山形、ともに頑張りどころ。そろそろ厳しい目でチームを見守り、プレッシャーをかける時期になってきたのかもしれない。

以上

2011.05.29 Reported by 松尾潤
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