6月15日(水) 2011 J1リーグ戦 第15節
清水 2 - 1 山形 (19:04/アウスタ/10,745人)
得点者:68' 高原直泰(清水)、88' 大久保哲哉(山形)、90'+4 アレックス(清水)
スカパー!再放送 Ch185 6/16(木)後10:00〜
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「自分たちのサッカーの内容には満足していないけど、このチームは勝っていくことが大事なので、結果を出せたのは良かった」。ヒーローインタビューで高原直泰がそう語ったのは、この試合の内容と価値を端的に表わしていた。
この試合で清水は、ひとつだけ新たな形にトライした。村松大輔が五輪代表でチームを抜けたため、本来センターバックの平岡康裕を初めて1ボランチ(アンカー)として先発起用したことだ。その働きがチームのカギを握ると見られていた中、平岡は多少ポジションが後ろ寄りになる傾向はあったが、攻撃では判断の速さとシンプルで確実なパスを見せ、無難に仕事をこなした。
だが、チームとしては、前半はまったく精彩を欠いていた。全体的にパスミスが目立ち、イージーなボールロストも多く、なかなか自分たちのリズムが作れない。「前半は1人1人の距離が広かった」(平岡)という、内容の良くないゲームでつねに見られる現象が、今回も顔をのぞかせていた。
ただ、そうなったのは山形の狙い通りでもある。ケガ人が続出したため、若い選手を多く起用し、これまでとは大きく異なるスタメンで臨んだ山形。だが、運動量と出足の鋭さでは完全に清水を上回り、球際やルーズボールの競り合いで優位に立つ。さらに190cm、84kgの1トップ・大久保哲哉に入れたロングボールに、2列目の3人がよく絡んでセカンドボールを拾い、清水のDFラインを押し下げていく。
また、アタッキングサードでのパスも清水よりしっかりとつながり、2列目の選手が斜めに走って裏に飛び出していくパターンから、何度も清水ゴールに迫った。それによって清水のDF陣はラインを強気に上げることができなくなり、前の5人と後ろの5人との距離がさらに開いてしまう。これでセカンドボールもますます拾いやすくなった山形は、清水のリズムを攻守ともに分断し、自分たちの流れを作っていった。
つまり、清水にとってはまったく思惑とは異なるゲーム展開。これで先制点を奪われてしまえば、本当に苦しくなるところだった。しかし、前半のアディショナルタイムに与えてしまったPKでは、一度は船山祐二に決められたが、山形の選手が早くボックス内に入って無効になるという幸運に恵まれた。そして蹴り直しの2本目では、GK碓井健平が同じ方向に蹴ってくることを読み切って、見事にストップ。この試合でようやくプロA契約の権利(公式戦450分以上出場)を獲得した若き守護神のビッグセーブは、本当に大きな一仕事だった。
ただし、後半に入っても試合の流れはなかなか変わらない。それでも後半13分に負傷を抱える大前元紀に代えて小林大悟を入れたあたりから、清水の攻撃が少しずつ圧力を増していく。そして決定的に流れを変えたのが、後半23分の枝村匠馬の投入(小野伸二と交代)だった。
その直後の攻撃で、ボスナーの縦パスが左の太田宏介に入った瞬間、すでに枝村は自陣から長い距離を走って、ここしかないというスペースに顔を出していた。そこに太田がワンタッチでパスを送り、そのまま縦に突っ走る太田に枝村がリターン。きれいに抜け出した太田がグラウンダーのクロスを斜めに入れると、ファーポストまで通り抜けたボールに高原が滑り込み、本当に大きな先制点を奪うことに成功した。
太田の思いきりの良さと正確なクロス、点を取れる位置にきっちりと入っていく高原の嗅覚も見事だったが、それ以上に印象的だったのが、枝村の動きだ。「ああいう動きをしてくる選手がピッチ上にいなかった」という枝村本人の言葉通り、清水の攻撃にもっとも欠けていた部分を彼がいきなりピッチ上で表現したため、高い集中力を保っていた山形の守備陣もまったく付いていくことができなかった。
このシーンだけは、それまでのゲーム内容とは別次元の素晴らしい攻撃であり、清水の可能性を見せつけた一瞬だった。
だが、その後完全に流れを取り返しながら追加点を奪えなかったことと、後半42分に不用意な守備から2度目のPKを与えてしまったことは、まだまだ清水の課題となるところ。このPKは大久保に決められて、土壇場で同点に追いつかれてしまう。
しかし、そこからあきらめることなく全員で攻め続けた清水は、アディショナルタイムを3分近く経過したところでFKから今度は自分たちのPKを獲得。チーム全体とサポーターの執念でつかんだチャンスを、アレックスが両親の見守る中できっちりと決め、最後まで何が起こるかわからなかった混戦にピリオドを打った。
スコアを別にすれば、自分たちがやりたいサッカーができていたのは、明らかに山形のほうだった。だが、何度か良いチャンスを作った中で、最後のフィニッシュの部分だけは、選手たちの経験不足が表われていたと言えるかもしれない。
逆に清水のほうは、試合内容には課題が多かったが、ホームで久しぶりの勝利をつかみ、勝敗を3勝4分3敗の五分に戻したことは、今後の試合日程を考えると本当に大きい。サポーターが待ちに待った今季初めての“勝ちロコ”も素晴らしい雰囲気だった。これからホームでの勝ち星を重ね、サッカーの質とゴトビ監督のぎこちないダンスを洗練させていくことが、今後の清水に求められる最大のミッションだ。
以上
2011.06.16 Reported by 前島芳雄















