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【J1:第25節 川崎F vs 神戸】レポート:必勝を期して試合に臨むも神戸の厳しいプレスによってミスを誘発。大量3失点で完敗を喫する。(11.09.12)

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9月11日(日) 2011 J1リーグ戦 第25節
川崎F 0 - 3 神戸 (19:04/等々力/14,918人)
得点者:39' 吉田孝行(神戸)、51' 朴康造(神戸)、88' 大久保嘉人(神戸)
スカパー!再放送 Ch181 9/13(火)深01:30〜
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変な違和感を感じながら、試合を見ていた。神戸の選手たちの素晴らしく献身的なプレスは賞賛に値するものではあるのだか、それにしてもそのプレスを受け過ぎているように感じた。川崎Fは厳しい守備を真正面から受け過ぎて、簡単にボールをロストしていた。
見ていて気になったのは、ちょっとした局面での振る舞いだった。ボールを受けた際に、体の向きに素直にパスを出せばいいのに無理にターンして囲まれたり。サイドを駆け上がったチームメイトを使わずに、中に無理に切れ込んでみたりしてボールをロストしたり。
ちぐはぐして見えたそうした戦いについて柴崎晃誠に尋ねてみると、「サポートも連動も今日は少なかった。一人が行った時に、遅れてしまっていた」のだとの答えを返してくれた。そんな柴崎の言葉を聞きながら、守備面の改善をテーマにして来た事がチームにちょっとした混乱をもたらしているのではないのかと、考えた。

今季の川崎Fは、どんな場面でも前からプレスに行く事を徹底し、常に主導権を握る事を主眼に置いて戦いを進めてきた。そうした戦いは、これまで何年もかけて積み重ねてきた攻撃サッカーとの親和性も高く、それにより点は取れていた。ただし、そうした戦いによって失点も増えてしまっていたのも事実だった。今季の川崎Fは得点は奪えるが、と同時に失点も喫するという出入りの激しい戦いを見せてしまっていた。この神戸戦を前にした4試合で連続逆転負けという不名誉な記録を作ってしまっていたのも、まさにそうした、追加点を奪うのだという姿勢によるありがたくない副産物であり、チームの問題点として浮上してきていたものだった。

だからこそ、この試合では縦に早くボールを動かし、迅速に相手ゴールに近づくというこれまでの戦いと同時に、守備面での安定感をどのように出すのかに注目して見ていた。ところが川崎Fは、攻撃時に、局面で孤立する場面が多く見られ、神戸の献身的な守備によって簡単にボールを失い続けていた。

柴崎はそうしたチーム状況を、ボールを保持する選手に対してのフォローの遅さであると端的に表現している。つまりそれは、速攻のタイミングなのか、それとも遅攻なのかの共通認識のなさが故にもたらされたものであると考えられる。メリハリを付けようと試みた戦術のアレンジ、もしくは新しいオプションの導入が、結果的にチームに混乱をもたらしてしまったという状況にあるのだろう。

チーム内の相互の連携が少ない状況の中、前半39分の1失点目。そして後半51分の2失点目は共に連携のミスによるもの。あまりにあっさりとした失点であり、直接的にミスをした選手はもちろんだが、チームの混乱に遠因を求めるのが妥当であろう。

2点を追いかける川崎Fに対し、神戸は和田昌裕監督が「必ずカウンターでもう一つ取れると思っていましたので、そういう意味では3点目が理想的な試合運びの中から奪えた得点だったと思います」と述べたような見事なカウンターで3点目を奪い、川崎Fの息の根を止めた。そしてそんな試合について相馬直樹監督は「今季一番悪いであろう試合」であると表現している。川崎Fがここからチームを立て直すのは簡単ではないだろう。ただ、だからと言って彼らには簡単に諦めてもらっても困る。

この神戸戦を前に、川崎Fを応援して来たサポーターからメールをもらった。川崎Fはその時点で7連敗中とドン底に沈んでいたにも関わらず、2週間のインターバルすら耐えきれず「神戸戦待ちわびました」との言葉が綴られていた。

出口の見えないトンネルの中でもがく川崎Fに対し、8連敗後の選手たちにサポーターからは珍しくブーイングが浴びせられていた。そしてそのブーイングをかきけさんばかりに声援が飛んでいたのも事実だった。負け続けるという苦境の中、悔しさをそのまま表に出すサポーターが現れてしかるべきだろう。彼らにはその権利がある。ただ、それでも一部のサポーターは声援を送り続ける事を止めずにいた。怒れるサポーターも、声援を止めないサポーターも、望む結果は同じ。その両者を笑顔にしたくて選手たちは戦い続けている。ただ、もしかしたら、選手たちはそうしたサポーターの思いを真摯に受け止め過ぎていたのかもしれない。1万数千人の思いは重い。それを背負って戦う姿は、間違いなく絵になる。ただ、重すぎる思いに押しつぶされかねないのも事実。だからこそ、そうした思いから一度自由になって、自分たちのために戦ってみてはどうだろうか。笑顔で躍動する事ができれば、結果もついてくるはず。結果がいいものであれば、サポーターも笑顔になる。サポーターのために苦しむ姿は、見るに忍びない。だからこそ、楽しんでサッカーをして、笑顔で試合を終えてほしいと思う。具体的な提案がひとつもないのは心苦しいところだが。

ここで神戸の林佳祐の事を少し。プロ初先発となった林は、スローインではあるが、神戸にとって貴重な先制点をアシストし、後半60分まで左サイドバックとして神戸の最終ラインで戦い続けていた。そんな林が試合を終えて多くの記者に囲まれる中、問わず語りに父親のことを口にした。

「実はお父さんが1週間前に亡くなって」と話す林は、気持ちの切り替えの難しさについて述べつつ「お葬式にたくさんの選手が来てくれて、神戸というチームの絆を感じました。サッカーをしている時はお父さんの事を忘れられましたし、チャンスがない中で、お父さんが亡くなって、すぐにチャンスが来た。お父さんがくれたのかなと思いました」と話していた。

林がサッカーを始めた事で、初めてサッカーを勉強し、チラシの裏に課題を書いて渡してくれていたという父親が与えてくれたチャンスで林はきちんと結果を出した。

和田監督はその林について「両サイドバックがいつもとメンバーが代わりました。すこし不安がありながらも、彼らに非常に期待している所がありまして、特に林(佳祐)は今季初出場というところで(ありながら)、本当に落ち着いてプレーをしてくれたんじゃないかと思います」と評価するコメントを残している。

川崎Fは8連敗を喫したが、その裏で神戸には肉親に対する強い思いを持つ選手がいて、試合を大きく動かす先制点をアシストしている。そんな林のアシストで得点を決めた吉田孝行は、新しい家族を授かった田中英雄のためにゆりかごダンスを踊る。その隣で林は父親の事を思って天を指差す。敗戦は悔しいが、客観的に見てサッカーが持ついい光景だった。

失った試合は仕方ない。そしてその川崎Fの敗戦の裏で、笑顔の家族ができた。05年に目の前でG大阪のリーグ初優勝を見せつけられて、関塚隆元監督は「お人好しではいけない」と選手たちを諭した。そして今日の川崎Fはお人好しだった。ただ、そういうこともある。お人好しは今日までで終わり。切り替えて上を向こう。上を向き続けている限り、可能性は続く。下を向いたって仕方ない。ダメならダメでも、一歩ずつ前に進めばいい。這いつくばってでも、前に進むしかない。

以上

2011.09.12 Reported by 江藤高志
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