今日の試合速報

開幕招待
開幕招待

チケット購入はこちら

J’s GOALニュース

一覧へ

【第91回天皇杯 2回戦 甲府 vs 町田】レポート:前後半でまったく違った展開に。J1甲府がJFL町田にカテゴリーの違いの差を見せつけ、かつ自信もプレゼントして逃げ切った(11.10.09)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
10月8日(土) 第91回天皇杯 2回戦
甲府 2 - 1 町田 (15:01/中銀スタ/3,421人)
得点者:6' 内山 俊彦(甲府)、36' パウリーニョ(甲府)、51' 鈴木 崇文(町田)
★第91回天皇杯特集
----------

町田の選手が乗ったバスが山梨中銀スタジアムに到着すると待ち構えていた100人くらいの町田サポーターは「町田、ゼルビア、町田、ゼルビア」と大コールで迎えた。それを30メートルくらい離れた公園で食べ物と飲み物を持ち寄って試合前の雰囲気を楽しんでいた一団が、「この違い、何なんですかね」と自虐と羨望をアルコールで割ったような表情で見ていた。
甲府は降格圏内にいて厳しい状況だけど、天皇杯2回戦はJFLの挑戦を受ける立場。Jリーグ参入をシーズンの大目標にし、「J1撃沈」を天皇杯の目標にする町田のように熱くなる雰囲気はない。でも、これは甲府がクラブ消滅の危機から立ち上がって2回のJ1昇格を果たして県内で一定以上のステータスを手にした結果の現象。リーグ戦とカップ戦の位置づけで共通認識が出来るほどにサッカーが浸透している。

天皇杯は元日に国立競技場で決勝戦を行う権威と歴史ある大会だし、ACLの出場権を手に出来るものすごい大会。でも、甲府ボランティアの人々にとって特別なのは天皇杯のホームゲームは唯一、山梨中銀スタジアムのスタンドで座って試合を見ることが出来る大会という意味で特別。リーグ戦は入場ゲートや案内所などでボランティア活動をしていて試合を見ることが出来ないが、山梨県サッカー協会が仕切る天皇杯は協会関係者や学生が運営を担うので、ボランティアの一団は試合前の11時から14時ごろまで仲間とビールなどを飲みながら盛り上がり、それからスタンドに移動する。大抵の人は座ってさらにビールを消費しながらゆっくり見るが、なかには医者は勧めないだろうがゴール裏で飛び跳ねる人もいる。それぞれの楽しみ方がある。

ここ最近の甲府は、天皇杯初戦は苦労しながら何とか勝っているのだが、この日はハーフナー・マイクが日本代表招集で不在、ダニエルはベンチと、先発に攻守の軸を欠いていた。しかし、カテゴリーの差を見せつける立ち上がりには成功。町田が昨年の3回戦・新潟戦同様に萎縮気味になってくれたからでもあるが、それ以上に町田がきちんとフットボールをするチームだったから甲府の良さも出しやすかった。

4分、年齢・性別に関係なくサポーター人気の高いFW・勝又慶典がFKの流れからゴールネットを揺らすが、これはオフサイドで町田は前半に見せ場をほとんど作ることが出来なかった。町田は6分に甲府の内山俊彦のセンタリングがゴールに入るという不運な形で失点したが、それでもGK・吉田宗弘はゴールキックから繋ぎ、フィールドプレーヤーもロングボールで逃げたりごまかしたりすることなく、ボールを繋ごうとしていた。ただ、そのパスの精度やファーストタッチの技術が少し足りずにボールを奪われるシーンが少なくなかった。これがJ1との差かもしれない。今年は上手いこと2連勝出来たが、甲府がG大阪と戦うのと同じようなことを感じるから、世界一のバルサにたどり着くまで上には上がいる。

前半36分にパウリーニョが決めて2−0とした甲府だが、前半から気になることはあった。札幌、名古屋で大活躍したが甲府ではくすぶっているダヴィがなかなか機能しない。片桐淳至はダヴィを使うパスを何度も出すが、それらのボールをダヴィは収めることが出来ない。ボールを収めて1人かわせばシュートチャンスという場面が何度もあったが、全てボールを失った。2〜3回でもシュートで終われていれば「ダヴィだこりゃ」なんて言われないし、チームの疲労も軽減されたはずだが、前線の選手は守備に回ることが増えて疲労は徐々に溜まっていたはず。それが後半に出始めたように見えた。ただ、これには確信は持てない。両監督や選手のコメントに開きがある部分があって、感じた印象に自信が持てず、内容の評価には迷う。

51分に鈴木崇文がサイドバック・内山の股を抜いたゴールを決めてからの町田は思いっきりの良さが出たし、安定感もあった。ポポヴィッチ監督は「ウチが赤と青のユニフォームを着ていればバルサと間違ったのではないでしょうか(笑)」と言うほどだが、外国人監督は自分自身をアピールすることも必要だから話は大きくなりがち。町田の良さも出たが、それを引き出した甲府の停滞も理由にあるのではないだろうか。
66分にダヴィが足を痛めたようでX JAPANのファンの真似をしてベンチに下がると、投入されたのは甲府育成の星・堀米勇輝。しかし、FWはパウリーニョと堀米を縦に配置した実質・零(ゼロ)トップで機能せず。甲府は前線にボールが収まらないから当然町田ペース。ボランチもディフェンスラインもよく守っていたが、だんだんボランチあたりが疲労でガス欠系のミスをする。ベンチを見ると伊東輝悦が準備をしていて交代選手の背番号を示すサインボードには「20」の文字が光っていた。甲府の20番・片桐はボールを失わないし、前線からの守備だって出来る90分間欠かせない選手なのに「なんてことを…」なんて記者席で毒づいていたら、「20」が「10」(パウリーニョ)になっていた。そして、FWは片桐と堀米を縦に並べる配置。そうしても甲府の攻撃は野球で言うと「散発3安打」の貧打でホームランも出そうもなかった。
全員野球の町田ペースは続いて40分のCKでは太田康介のシュートがポストに当たって、甲府はさぁ大変。途中出場で、勝又とは違ってオジサンだけに人気がある酒井良が1分後にペナルティエリア内でターンしてシュートを打つがこれは決まらず。昨年同様に同点→延長→PK戦→終電なくなるの悪夢の連鎖が蘇る。

天皇杯2回戦モードだったように見えた甲府サポーターも40分過ぎからは重い腰を上げて90分で勝てるようにリーグ戦並みに熱を入れて歌い始めた。まさにヤマ場。町田ベンチ前では判定にポポヴィッチ監督が感情を爆発させる場面が増える。ノーネクタイのスーツ姿がカッコいいからアルパチーノのマフィア映画に出られそうなほどの迫力。「LEON」の表紙にもなれそう。
結果論だが、甲府はダヴィを代えるタイミングで加部未蘭を信じて出してほしかった。今回は初のベンチ入りだったが、ダヴィよりは我武者羅にボールに食らいついてプレーすることは出来る選手だし、シュートにパンチ力があるから覚醒の期待もある。48分に吉田豊が倒されて、このゴタゴタで4分間のアディショナルタイムを使い切ることが出来て甲府は90分で勝ったが、最後は逃げ切り。ただ、どんな試合でも勝つことが大事だから満足感はある。特にカップ戦は勝つことが大事。

町田はこれからJリーグの入会審査の結果を待ちながら、JFL優勝に向けて戦うが、残りは11試合。大震災によるスケジュールの変更で中2日の試合もあり、結果に一喜一憂することなく戦いきることが大事になるだろう。甲府戦の前半でやや萎縮してしまった経験はJFLの大一番では絶対にプラスに活きるはずだし、後半の戦いぶりは相手が前掛りになったワンチャンスに自信を持って攻撃する力になるはず。津田和樹は「少しパスがずれるとJ1では寄せられることがJFLとは違った点。ゲームとしては大きな差はない。でも、この小さな差が大きな差になることを意識して差を埋めて、JFL優勝に向かいたい」と言うし、名ブロガー・酒井は「勇気を持ってチャレンジする重要性を感じた」と、今後の糧に出来そうな試合になった。
甲府は来年、町田とJ2で戦いたくはないのでJ1 残留に向けてネジを巻き直すが、洗練された素晴らしいサポーターに支えられている町田にはJリーグから吉報が届くことを願ってやまない。

以上


2011.10.09 Reported by 松尾潤
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

旬のキーワード

最新動画

詳細へ

2025/12/21(日) 10:00 知られざる副審の日常とジャッジの裏側——Jリーグ プロフェッショナルレフェリー・西橋勲に密着