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【J1:第30節 広島 vs 柏】レポート:美しくて、クリエイティブで、破壊力満点。柏が誇るスーパーレフティが、広島を粉砕。(11.10.23)

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10月22日(土) 2011 J1リーグ戦 第30節
広島 1 - 3 柏 (14:04/広島ビ/14,450人)
得点者:57' 李忠成(広島)、68' ジョルジワグネル(柏)、82' 北嶋秀朗(柏)、87' 北嶋秀朗(柏)
スカパー!再放送 Ch184 10/23(日)深03:30〜
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ああ、どうして引いちゃうんだろう。
李忠成のスーパー・ドライブシュートで先制した後の広島を見て、心の中でつぶやいた。ピッチ上には、ラインがペナルティエリア近くまでおりた広島の布陣があった。自ら引いたのか、1点を取りにきた柏の圧力に押された結果か、そこはわからない。おそらく、どちらも正解なのだろう。世の中は「0か1か」というデジタルに割り切れることはほとんどなく、多くはアナログで動いている。

柏は前半から守備的な布陣で戦った。レアンドロ ドミンゲスを故障で欠いた中での攻撃の切り札と目されたジョルジ ワグネルに、広島の攻撃の基点となるミハエル ミキッチへのマークを柏のネルシーニョ監督は命じた。ダブルボランチにも広島の1トップ2シャドーへのケアを重視させた。広島のストッパーが攻撃参加してくればボランチが対応にあたり、中央は両サイドバックが絞って守る。点をとって勝つというよりも、まず失点しないこと。典型的なアウェイの戦い方を、ネルシーニョ監督は選択した。

守備的な戦術の成果か、広島のチャンスはいつもよりもかなり少なかった。だがそういう「大人の思惑」を壊すのは、ミスかスーパープレーかと相場は決まっている。57分に飛び出した李忠成の強烈なドライブシュートは1度浮き上がってストンと落ちる「魔球」。名手・菅野孝憲に思わず苦笑いを生じさせるほどの一発だった。

広島にもたらされた先制点によってプランを崩された柏は攻撃に重心をシフト。ジョルジ ワグネルもミキッチのマーカーから解放された。一方の広島が選択したやり方は、後に下がって人数をかけて守ること。悪いとは言わない。いつもやっていることでもある。だが、やりきるためには、絶対にシュートレンジでの集中を欠かしてはいけないし、前線の選手から逆算しての守備を構築してボールの奪いどころを明確にしておく必要がある。ゾーンを下げるということはすなわち、自分たちのゴールに相手を近づけることでもあるのだから。

広島にとっての不運は、リスクマネジメント能力にかけてはJトップクラスの存在である森崎和幸が、太もも裏の異常を訴えて交代していたこと。実際この試合でも、中島浩司が田中順也にボールを奪われた後に素晴らしいカバーリングを見せ、シュートすら打たせない完璧な守備を見せていた。そしてビッグアーチに詰めかけた広島サポーターに「カズがいれば」と嘆息させる出来事が、68分に起きる。
きっかけは、水野晃樹のロングスロー。広島がクリアしたボールを大谷秀和がヘッドでつなぐ。そこに鋭い動きだしでフリーになっていたスーパー・レフティがいた。絶対にシュートブロックにいかねばならない場面。だが広島守備陣の動きは鈍く、ジョルジ ワグネルにボレーシュートを放つスペースを与えてしまう。
同点。「あれを決められてしまっては」と山岸智がため息をつくほど華麗であり、創造的な一発。だが、もし森崎和がいれば、シュートブロックにいけたのではないか。そんな想像をかきたてられる場面だ。

さらに82分、CKのこぼれから、またもジョルジ ワグネルの左足が広島を破滅に追いやる。右サイドから狙い澄ましたクロスは、ミリ単位の精度を保って西川周作を襲った。飛び込んだ北嶋秀朗がバックヘッドでそらし、ネットを揺らす。このシーンでも広島の守備陣はボールウオッチャーになり、危険なストライカーをフリーにしてしまった。「カズがいれば」。スタジアムが2度目のため息をつく。

87分、またもジョルジ ワグネルの左足が爆発、強烈なFKが西川の手を弾いて北嶋のゴールを導き出し、広島に引導を渡した。たとえ先制されても、そこから新しい図面を引き直して「勝利」という完成品を創り上げる柏の能力と選手たちのぶれない気持ちは、優勝を争うにふさわしい。残り4試合、史上初のJ2・J1連続制覇も現実的に思えるほど、彼らは強さを感じさせた。

一方の広島は、今年5度目の逆転負け。「先制したら引いて守って、カウンターで追加点を狙う」という「常識」が広島にふさわしいのか、そろそろ疑ってかかる必要があるだろう。確かにJ1復帰以降、2点目・3点目を常に取りにいって、何度も失敗してきた。だが、守りに入ってやられるのと、攻めにいってやられるのと、広島らしいのはどちらか。実際、逆転された時にピッチ上にいた選手のうち守備的なタレントは水本裕貴と西川周作のみで、あとは攻撃に特徴を持つ選手たちばかり。答えは、明白だろう。

残り4試合、広島らしい攻撃性に満ちた、破天荒な戦いぶりを見せてほしい。それが、現実的な目標である7位死守につながっていくはずだ。

以上

2011.10.23 Reported by 中野和也
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