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【J2:第7節 鳥栖 vs 千葉】レポート:気をつけていたセットプレーに沈んだ千葉。確実に決めるべきところで決めた鳥栖が昇格に一歩前進(11.10.27)

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10月26日(水) 2011 J2リーグ戦 第7節
鳥栖 1 - 0 千葉 (19:03/ベアスタ/6,924人)
得点者:69' 豊田陽平(鳥栖)
スカパー!再放送 Ch180 10/27(木)後05:00〜
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サッカーの試合は、シュート数やFK・CKの多さで勝敗を決めるものではないことは周知の事実。相手のゴールに決めたゴール数の多さで決するものである。どんなに多くの決定機を迎えても、ボールが完全にゴールに入っていなければ得点とはならない。そんな分かり切ったことであるが、そのゴールに入った数が1回きりなら、そのゴールの持つ意味は重みを増す。
今節の鳥栖対千葉の放ったシュートは、鳥栖の7本に対し千葉は5本であった。勝たないといけない状況にある両チームにとって、この数値は多いとはいえない。その要因は、そこに至るまでの過程にあった。

前半、お互いのシュート数は2本ずつ。ゴールに向かって必死にボールを運んだ結果なので、守備での健闘がそうさせたとも言える。確かに、鳥栖は全員でよく守り、争点(ボールのある地点)には人数を割いて千葉の自由を奪っていたので、必然的に千葉のシュート数は減る。千葉も、ピッチ幅を有効に使い高い位置でボールを回していたために、鳥栖はロングボールを多用することになり、得意とするサイドからの攻撃が減ってシュートまで簡単には持っていけなかった。
後半に入ると、その状況が顕著になってお互いに決定機を作るのに苦労していた。しかし、スコアには差がついた。鳥栖が1点を入れ、千葉はゴールを奪えなかったので、1−0で鳥栖が勝点を上積みすることになる。

この最少得点での結果に、両チームの今節での戦いの姿を見ることができる。
「本来ならもっとポゼッションできただろうし、もっとつなげるだろう」とMF早坂良太は振り返った。FW池田圭も、「俺たち走りまくっているよなぁ…。(中略)シュートを本当は打ちたいけど…」と表現こそ違うが、サッカーの内容よりも結果を求めていることがうかがえる。連戦の中で鳥栖は、全員で守り奪ったボールをシンプルに展開するのが目立つ。手数をかけずにボールを動かすシンプルな攻撃を心がけ、時にはDFから前線を狙いロングボールを用いた。中盤でもダイレクトパスやサイドチェンジを多用した。得意とするサイド攻撃や長短のパスを用いた崩しなどは今節は少なかったが、その効果が69分の決勝点につながった。

FKを得たのは、千葉ゴールまで約40mの地点。蹴ったのはMF藤田直之で、狙ったところはゴール正面に飛び込んでくるFW豊田陽平の頭である。その狙い通りに豊田陽平がヘディングでゴール右隅にボールをコントロールして決勝点が生まれた。少ないチャンスを、正確なキックと高い打点でキッチリと決めて千葉を沈めた。
「リスクなくやっているし、連戦なので仕方がない部分もある。結果を今は求められているので、こういう試合運びになる」と早坂良太は、前述の言葉の後に続けた。

「やっている事は間違っていないし、変える必要はない」と敗れた千葉のMF佐藤勇人は振り返った。同様に神戸清雄監督も「徐々に我々が狙っている戦い方になってきているし、これを続けていかないといけないと思う」と会見でコメントした。
確かに千葉は狙っているサッカーを行えた。前述したようにピッチ幅をうまく使い、高い位置でボールを回すこともできていた。しかし、シュートまでが遠かった。これには、ボールタッチ数の影響が出ていたように筆者には感じた。もっとパススピードを上げて、少ない手数でボールを動かせていたら、あそこまで鳥栖の選手が守備に回れていただろうか。一人ひとりの選手のタッチ数を1回ずつ減らせば、鳥栖の選手が自陣に戻る時間を与えずに済んだかもしれない。ボールをポゼッションしようとするあまりに、鳥栖の選手に自陣に戻る時間を与えてしまったのではないだろうか。
狙うサッカーはできていただけに、「もっとボールを動かしたり、スピードを上げたり」(佐藤勇人)することと、「もう少し、ゴール前で勇気を持ってペナルティーボックスに入ったり、クロスもいいタイミングで入れたり…(後略)」(神戸清雄監督)することができていれば結果は違ったことになっていたかもしれない。

形にこだわらず結果を求めて戦った鳥栖と目指すサッカーをやり抜いた千葉。どちらもやるべきことを出し尽くした一戦だった。間を置かずして次の戦いが迫っている。お互いに昇格に向けて落としてはいけない試合が続く。

少しだけ、鳥栖の選手をほめさせていただきたい。
木谷公亮は10試合、岡本知剛は13試合、早坂良太にいたっては17試合。この数値が何を指しているか、お気づきになる方がどれくらいいるだろうか。この試合数は、最後に警告を得てからの経過試合数である。彼らは、あと1枚の警告を受けると次節が出場停止になるので、必要以上に気を使っているだろう。言葉に発することはないが、意識して身体を張って戦っている。
豊田陽平も、直近の4試合で2度の警告を受けたが、それまでの28試合では警告を受けずに身体を張って試合に出場し続けてきた。磯崎敬太は出場停止明けから8試合で1枚も警告を得ていない。警告を受けないことは当たり前のことかもしれないが、13試合負けなしの陰に隠れた“健闘”も覚えていてほしい。悲願の達成のために、出場停止と紙一重で身体を張って戦っているプレッシャーには、我々の想像を絶するものがある。

近代サッカーでは、相手からボールを奪って得点したシュートまでの時間が短くなっている。
これは、じっくりとポゼッションして相手を崩すだけでなく、奪ったボールをシンプルにつないでシュートまで持っていく戦術が増えていることを証明している。カウンターでゴールを狙うことも、ロングフィードで狙うことも、今のサッカーでは勝つために重要なことである。だからといって、つなぐ事を捨てているのではない。攻撃のバリエーションが増えたのであって、ロングボール一辺倒では観ている人を魅了することも、相手に勝つこともできない。
逆から見ると、守備の人や攻撃の人という分け方はナンセンスに近くなっているかもしれない。誰がシュートを打っても良いサッカーは、誰がボールを相手から奪っても良いわけで、まさに全員でサッカーなのである。得点を奪いあう。ボールを奪い合う。優位な場所を奪い合う。これこそがサッカーの面白さであり、原点なのである。
サッカーはシンプルだからこそ面白いのである。

以上


2011.10.27 Reported by サカクラゲン
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