10月26日(水) 2011 J2リーグ戦 第7節
岐阜 1 - 3 北九州 (19:04/長良川/2,150人)
得点者:10' 大島康明(北九州)、60' 木村祐志(北九州)、66' 林祐征(北九州)、73' 押谷祐樹(岐阜)
スカパー!再放送 Ch182 10/28(金)前05:30〜
☆totoリーグ第4ターン開催中!
----------
やはり北九州は綿密なスカウティングの下、岐阜の地に乗り込んできた。前半の北九州の狙いは、非常に明確だった。フォーメーションは【4-4-2】のダイヤモンドだが、左MF木村祐志のポジショニングは1ボランチの桑原裕義のすぐ横。つまり中盤の形は、左に偏った平行四辺形の形だ。
これが何を意味するのか。北九州が警戒したのは、岐阜の右からの攻撃だ。右MF嶋田正吾はサイドに張る選手ではなく、果敢にダイアゴナルランからバイタルエリアに侵入してくるし、そのまま裏にも抜け出せる選手。岐阜のポイントゲッターになっている彼に自由を与えないのと、その後方から飛び出してくる右サイドバックの野田明弘のオーバーラップも封じるために、左MFの森村昂太と左サイドバックの多田高行のコンビで岐阜の右サイドに蓋をし、さらにトップ下の安田晃大と桑原、木村でカットインしてくる嶋田をプレスバックして挟み込む。
では、逆サイドはどうなるのか。「岐阜は前回対戦した時も左からの攻撃が多かった。なので、僕はなるべく絞って、逆際にサイドチェンジされても、カバーできる距離くらいのところにいればいいと思っていた」と木村が語ったように、岐阜の左MFの染矢一樹は嶋田とは正反対で、常にワイドに張り出して、縦一辺倒のドリブルを仕掛けてくる。そのため、岐阜の左サイドバックの村上一樹は、頻繁にオーバーラップは仕掛けられない。ということは、染矢に対しては、右サイドバックの関光博を常にマッチアップさせて抑え込み、必要とあれば、少し距離はあるが、木村がカバーに行けば、十分に対応することが出来る。
そして岐阜の攻撃が集中する左サイドでボールを奪ったら、安田と木村、桑原の3人のどれかを経由して、一気に逆の右サイドに展開してショートカウンターを繰り出す。守備から攻撃までを計算に入れた北九州の術中に、岐阜は見事にはまった。
10分、狙い通りの形で北九州に先制点が入る。右サイドでボールを奪うと、落ちてきた中央のFW大島康明に繋ぎ、右サイドを駆け上がったDF宮本亨へ展開。宮本の突破からのクロスを、ゴール前に飛び込んだ大島が綺麗にヘッドで合せた。
ここまでは北九州の狙いは完ぺきだった。だが、連戦の影響か徐々に北九州の選手たちの動きの精度が落ちてくる。マークがずれ始め、岐阜の選手がフリーでボールを受けられるシーンが増えてきた。
15分、村上の右の仕掛けから、中央でFW佐藤洸一が決定的チャンスを迎えるが、肝心のシュートは力なく、DFにストップされた。26分にはロングボールを相手DFがかぶり、FW押谷祐樹がGKと1対1になるが、放ったシュートはGK佐藤優也のファインセーブに阻まれた。
2度の決定機をモノに出来なかった岐阜。ここから試合はお互いミスが絡み、リズムがつかめない状態に陥り、蹴り合いのサッカーになってしまった。
共に決定的なチャンスが作れないまま、前半は1-0の北九州リードで折り返した。後半に入っても、両チームのプレーの精度はなかなか上がらず、共に中盤は間延び。こうなってくると、どちらかがどちらかのミスを突けたときに点は生まれるもの。そのミスを突いたのは、北九州の方だった。
60分、ミスから大島、安田に繋がれると、中央にぽっかり空いたスペースで木村にフリーでボールを受けられ、そのまま独走を許し、2点目。これで勝負は決した。そして66分、間延びしたバイタルエリアに、交代出場のFW林祐征にドリブルで簡単に侵入を許すと、ほぼノープレスの状態で豪快に右足を振り抜かれ、ミドルシュートをライナーでゴール右隅に突き刺された。
岐阜も73分に途中交代のMF地主園秀美の右からのクロスを、ニアでFW押谷祐樹がヘッドで合せるが、一矢報いるのがやっとだった。
北九州は天皇杯を含めて、1か月で岐阜に3連勝。トータルで見ても北九州に完敗だった。
「前半、ペースを握ることを大事にしようとした。サッカーのペースそのものは我々の方にあった。ただ、1失点、クロスから簡単に入れられた。後半、点は取れると思っていた」と、木村孝洋監督は語ったが、この1失点目こそ、完全に相手にしてやられた点数だった。ゆえに、この時点で北九州にペースを奪われたと言っていい。いくらそのあとペースを握り返したと言っても、明確な狙いの下に奪われたゴールの持つ意味は非常に大きく、それを跳ね返すには、相当なパワーがいることを認識しないといけない。
「岐阜に勝つための起用のメンバーや順番を、前節の試合が終わった瞬間に描いていた。なかなか思うようにいかない中で、最初はうまくいったと思う。彼らと生活を共にすることで、彼らの表情、ホテルでの足の運びだったりを見て、メンバーは今日、最終的に決めました」。
三浦泰年監督は前節のタイムアップのホイッスルが鳴った時点で、岐阜との戦いを始めていた。
この試合はその北九州の用意周到さが、素晴らしい先制点に反映され、このスコアに結実したと言っても過言ではないだろう。非常にあっぱれな試合だった。
以上
2011.10.27 Reported by 安藤隆人













