11月3日(木) 2011 J1リーグ戦 第31節
福岡 2 - 2 清水 (17:03/レベスタ/12,632人)
得点者:61' 岩下敬輔(清水)、64' ボスナー(清水)、66' ハマゾッチ(福岡)、68' 中町公祐(福岡)
スカパー!再放送 Ch184 11/4(金)後04:00〜
☆totoリーグ第4ターン開催中!
----------
湧きあがる歓声。心地よいリズムを刻む手拍子。12,632人の気持ちがひとつになって大きな力を産む。その力を背に受けて、11人の選手たちがピッチの上で躍動する。チームとしてのポテンシャルを比較すれば、清水の方が上だったかも知れない。しかし、サッカーは、それだけで勝負は決まらない。ピッチに立つ思い。ボールを追いかける気持ち。チームを支える力。サッカーに対する思いの総合力が勝負を分ける。そして、この日、福岡は自分たちの思いのすべてをピッチの上で表現した。
「自分たちが主導権を握って攻撃的に行きたい」(浅野哲也監督)。それが、この日の福岡のテーマだった。布陣は4−2−3−1。右SBに田中佑昌、左SBにキム ミンジェを置いたのは、後ろの選手の推進力を活かして両サイドの主導権を握ることが狙い。そして、2人が駆け上がる時間を作るために、2列目に成岡翔、中町公祐、松浦拓弥の3人を並べた。守備面で重責を与えられたのは鈴木惇と末吉隼也。清水の2列目で試合を作るフレドリック ユングベリ、アレックスの2人のプレーを制限するとともに、両サイドの高い位置に張り出す高木俊幸と大前元紀を最終ラインと連携して抑え込むことを指揮官は求めた。
立ち上がりは清水にボールを握られて自陣の低い位置に押し込まれる展開が続いた。しかし、福岡は決して受けに回らない。素早くブロックを形成して清水からボールを奪うと、清水のワンボランチのカルフィン ヨン ア ピンの両側に出来るスペースに入り込んで攻撃の起点を作る。我慢をしながら、自分たちの狙いどころを活かす福岡は、やがて試合の主導権を手繰り寄せる。前半のスコアは0−0。しかし、福岡のシュート8本に対し、清水の1本という数字が試合内容を物語る。
勝負のかかった後半。足が止まり始めた清水に対し、福岡が一方的に攻める展開で試合が進む。48分、50分、52分、54分、福岡が決定機を作り出す。ピッチの上で躍動するのは松浦。鋭い出足と一瞬のスピードで最終ラインの裏を取り、清水の守備陣を慌てさせる。しかし、ゴールを奪ったのは清水。61分に岩下敬輔がPKを決め、その3分後には、ボスナーの強烈なFKがゴールネットを揺らす。狙い通りの形で試合を進めながら、ちょっとしたことで失点を喫する。それは、今シーズンの福岡の姿を象徴するかのような出来事だった。しかし、浅野監督は振り返る。「奪ってから前へ出ていく推進力があった。今日は絶対にチャンスが来るという予感がしていた」。
福岡が反撃の狼煙を上げたのは66分。後半途中から出場したハマゾッチのヘディングシュートがゴールネットを揺らした。「あのゴールで福岡のファンが生き返り、盛り上がった」(アフシン ゴトビ監督・清水)。そして68分、松浦の突破から生まれたペナルティエリア内のこぼれ球を中町が拾って左足を一閃。ゴール右隅の、ここしかないところを捉える。そして、その後もゴールを求めて攻め続けた。最終的には、後一歩が足りずにドローに終わったが、この日、福岡は、支えてくれる人たちへの感謝、プロ選手としての意地、勝負の世界に生きる者の気持ちなど、自分たちにとって譲れない思いを表現して見せた。
さて、「2−0から引き分けるなど絶対にやってはいけないこと。非常にもったいない試合になった。どこかに勝てるだろうという気持ちがあったのかもしれない」と悔しそうに試合を振り返ったのは先制点を決めた岩下。福岡にとって勝たなければいけなかった試合であったのと同様に、ACL出場を目指す清水にとっても勝点3を取らなければいけなかった。しかし、この日は、運動量、スピード、そしてキレ味という点で福岡に劣り、個の能力の高さを活かしきれなかった。
そして「選手たちがすごく活き活きとプレーしたくれた」と試合を振り返ったのは浅野監督。久しぶりに笑顔がこぼれた。しかし、「勝点3を取らなければいけない試合で、勝点2を落としてしまった。我々は、山形を抜いて順位を1つ上げるために残り3試合を戦っていくと同時に、戦う気持ちを前に出した試合をしていかなければならない」とも。J2降格というひとつの結果は出たが、まだシーズンの途中。福岡にはやらなければいけないことが残っている。あと3試合。福岡の戦いはまだまだ続く。
以上
2011.11.04 Reported by 中倉一志













