★2011 Jユースカップ特集ページ
■第1試合
新潟 6-0 トリプレッタ/日産フ
得点者:26'渡邉新太(新潟)、32'齋藤恭志(新潟)、65'早川史哉(新潟)、71'渡邉新太(新潟)、88'五十田航輝(新潟)、90+2'依田隆希(新潟)
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試合前、高揚感たっぷりのアップをするFCトリプレッタユースの選手の表情にJユースカップに出場できた喜びが溢れていた。米原隆幸監督らスタッフの表情にも全国大会でJクラブを驚かせるという意気込みが満タン。約550人の選手を擁する東京都渋谷区の大クラブだけに日産フィールドの2ブロックに分かれているアウェイ側のスタンドは父兄と第2試合で浦和と対戦する盟友・横河武蔵野FCの選手らで満席。メインスタンドでは鳴り物が禁止のために、バックスタンドに相当する向かい側の土手にはトリプレッタのジュニアやジュニアユースの選手が100人以上集まって大応援団を形成して高校サッカーのような応援で盛り上がっていた。
対戦相手が決まってからは人脈を駆使してアルビレックス新潟ユースのビデオを何本か取り寄せ、徹底的に分析して臨んだトリプレッタ。狙いは新潟のサイド、特に右サイドに高い位置を取らせないことにあった。キックオフのボールを取ったトリプレッタは、ワンタッチパス、引き球の上手さを使ったパスワークでプレッシャーをかわして、緊張と情報不足で対応しきれない新潟を押し捲り立ち上がりから主導権を掴んだ。スタンドで観戦する新潟の父兄からは「意外と打ち合いになるかなぁ」、「(トリプレッタの)右サイドの選手上手いよね」などと声が出始めた。今年は立ち上がりの内容が結果と正比例することが多い新潟をトリプレッタは仕留めるチャンスだった。しかし、トリプレッタの選手も肩に力が入っていたかもしれない。FKの場面では明らかに気負いすぎてボールを浮かせていた。肩の力を抜く余裕があれば「もう1本パスが通れば」、「もう一人かわせれば」、という場面でタメたり逆を突いたりと、もう一つの選択肢が見えたかもしれない。
「北信越のプリンスリーグのチームにはない技術の高さだった」と新潟のCB・西村竜馬が話したが、20分過ぎからは新潟もトリプレッタのパスワークに慣れてきたのか守備が安定し始めた。攻撃では走力を活かし、トリプレッタの裏を狙ったクロスが効果を発揮し始めた。お互いに右サイドが攻撃の起点となった攻防が続いたが、26分に新潟の1年生ストライカー・渡邉新太がサイドをドリブルで突破して打ったシュートがディフェンダーに当たってコースを変えてゴール。この先制点で新潟は受身ではなくなり、主導権を完全に奪い返す。32分にはディフェンスラインとゴールキーパーの連携ミスを突いて齋藤恭志が追加点を決めた。2点のリードを許したトリプレッタは焦りが出たのか攻撃が中途半端になり、ボールを奪われて自陣に向かって走りながらの守備が増えた。それでも、ゴールキーパー中心によく防いで2失点で前半を凌いだ。勝負は「次の1点」というギリギリのところで踏みとどまった。
後半は「次の1点」が勝負の趨勢を決める状況だけにトリプレッタはこの1点をモノにしようと挑んだが、主導権は新潟に傾いたまま。ボールの出所になかなかプレッシャーをかけられないトリプレッタは何度もショートカウンターでディフェンスラインの裏を突かれた。フィジカルの強さ・速さというアドバンテージがある新潟は「次の1点」を決めるまで時間がかかったが、65分に早川史哉が決めるとシーソーは一気に傾いた。その後も3点を追加して合計6ゴールでJCY関東チャンピオンを押し切った。
過去3回のJユースカップ出場で勝利もゴールもなかったトリプレッタだが、狭いエリアでのパス回しではその育成力を充分に見せたし、点差が大きくなってからも最後まで挑み続けた姿は素晴らしかった。心残りは、土手で応援し続けたジュニアやジュニアユースの選手たちにゴールで盛り上がる機会をプレゼントできなかった点。しかし、6人の1年生と4人の2年生がJユースカップを経験することができている。彼らがこの経験を今日からどう活かすかという希望は繋がった。トリプレッタの5回目のJユースカップに期待したい。
一方、新潟も西村、伊藤航希、斎藤、早川という軸を中心にすればサブメンバーが充分に戦えることを証明することが出来た。U-17、U-18代表を掛け持ちする川口尚紀はケガからの復帰途中ということで温存したが、23日の2回戦・鹿島戦に向け、温存という賭けに勝った片渕浩一郎監督は多くの選択肢を持って臨むことができる。過去最高成績のベスト16を更新するための鹿島戦に注目したい。
■第2試合
浦和 3-0 横河/日産フ
得点者:24'高田拓弥(浦和)、79'高田拓弥(浦和)、90+1'中村駿介(浦和)
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盟友クラブ・トリプレッタの試合を観戦した横河武蔵野FCユースの増本浩平監督。「浦和は矢島(慎也)がベンチだし、少しメンバー落としてますかね。ウチにとっては助かるけど、まぁ誰が出ても浦和は浦和だからレベルは高いでしょうね。でも、やりますよ」と、試合前に会った29歳の若い監督の眼には強気の光が宿っていた。
一方、浦和レッズユースの渡辺隆正監督は飄々としていて、邪心を知らないまま大人になった永遠のサッカー少年・富山の安間貴義監督と似た雰囲気。両者は立ち上がりこそ押し込もうとしたが徐々にじっくり仕留める大人のサッカーへ移行。横河は4−2−3−1の3−1の4枚が石川乾悟と岡庭裕貴の早生まれ3・2年生コンビを中心にパスを繋いでいくが、決定的チャンスまでもう1本足りない。浦和はバランスを保ちながら4−1−4−1のワントップ・高田拓弥の突破力を活かして横河の壁にギリギリと穴を開けようとする。24分に高田が貰ったPKを決めて浦和がリードするが大人サッカーの横河は慌てることなく試合はチャンスとピンチが交互に来る展開のまま膠着。終盤には、喰いつかせて後手を踏ませるパスワークの上手さを活かした横河タイムがやってくるが、シュートはことごとく浦和ディフェンダーの足に当たる。結果論だが、横河はこの時間帯に決めなければならなかった。
先制を許してから中盤をダイヤモンドに変えた横河。後半はお互いに交代カードを切りながらゴールを狙うが両チームとも組み合ったまま。横河の応援団は「ム』を強調した「ム、サシノ」コールや「ヘビーローテーション」の替え歌で盛り上げる。トリプレッタは高校サッカーの雰囲気だったが、横河はJリーグのサポーターのノリ。浦和サポーターは旗と横断幕を掲げるが声ではなく、静かに気持ちを送り込む応援。日が翳り始めたピッチでは徐々に浦和が決定機の数を増やし始め、79分に横河のディフェンスラインがロングボールか繋ぐか判断に迷っている中途半端な場面でボールを奪った高田が2点目を決めた。同点に追いつくチャンスがあった横河にとって痛い失点。残り時間が少なく、メインスタンドの横川OBやチームメイトからは「ヨコカワ、やるぞ」、「意地見せろ」、「やり切れ」と悲痛な声が出始めた。2点差をつけて楽になった浦和は余裕が出て、90+1分に2年の中村駿介が、本家・中村俊輔も絶賛しそうなループシュートを決めて3−0。両チームには得点差ほどの実力差はないと思うが、決定力の差が勝敗を分けた。
横河の増本監督は「Jクラブと個で戦う展開になると不利。町クラブは組織力で戦わないと勝機を見出しにくい。Jクラブは個が育っているしフィジカルの力も上。Jクラブの選手は落ち着いていて相手の状況をよく見てプレーしている」と話した。横河はJクラブに準じる大きな組織のクラブだが、グラウンドはラグビー部とも共用でユースの練習は平日が火木金の3日間だけで、時間も60〜90間分と限られている。どこの町クラブも同じだが、選手が通う学校がバラバラで学校行事もバラバラ。全員が揃って練習できないことも多い。教育方針も家庭によって学業優先、サッカー優先、文武両道と様々。難しいことも多いが、この条件を受け入れているからこそ町クラブが幅広くサッカー選手の受け皿になることができている。存在意義は物凄く大きい。そのなかで高い技術を持つ選手を多く輩出する意欲とノウハウは素晴らしい。多くの選手が一般受験を経て大学に進んでサッカー続けることができるのも強み。
「全国大会っていいですね」
増本監督が試合後、最初に口にした言葉は「悔しいです…」だったが、別れ際には晴れやかな表情でこう言った。話をしているうちに来年に向けて気持ちが整理されたのかもしれない。「これ以上は無理だ」とは絶対に思っていない。与えられた環境で来年、増本監督と横河武蔵野ユースがどんな発展を見せるのか楽しみだ。
一浪して筑波大学に入った渡辺隆正監督も町クラブの環境には理解があるだろう。
「人としての成長がなければサッカーは上手くならない」
この考え方の下で育成に携わってきた。今年の夏にはユースの選手を連れて宮城で瓦礫拾いのボランティア作業も行っているし、有志のコーチで何度もサッカー教室も開いている。浦和育成の人作りがいい方向に向かっていることは選手と接すれば感じる。サッカーではコーチが全てを判断してしまうのではなく、試合の中で選手自身が状況判断をして問題を解決する余地を残している。次の2回戦・清水戦は選手の判断力がより厳しく試される内容になりそうだが、ここが注目点でもある。
以上
2011.11.21 Reported by 松尾潤
J’s GOALニュース
一覧へ【2011Jユースカップ1回戦:新潟vsTRP/浦和vs横河】レポート:Jクラブがフィジカル面の優位を起点に特徴を活かして連勝。町クラブの課題は個ではなく組織で90分間戦い抜くしたたかさ。(11.11.21)
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