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【J1:第33節 広島 vs 大宮】レポート:これぞ、サンフレッチェ。魅惑的な超攻撃的サッカーで大宮を粉砕、ホームラストマッチの寂寥感をフェスティバルに変える。(11.11.27)

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11月26日(土) 2011 J1リーグ戦 第33節
広島 4 - 2 大宮 (17:34/広島ビ/16,779人)
得点者:41' トミッチ(広島)、45'+1 佐藤寿人(広島)、56' 金澤慎(大宮)、64' 李忠成(広島)、71' 青山敏弘(広島)、88' 李天秀(大宮)
スカパー!再放送 Ch184 11/28(月)深02:30〜
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THIS IS SANFRECCE FESTIVAL!!
この日、ビッグアーチで表現したサッカーには、この賛辞こそ、ふさわしい。「ミハイロ・ペトロヴィッチとその子供たち」が5年半、追求してきた哲学に満ちていた。繰り返されるパス&ラン。リスクを恐れない攻撃参加。1点をとれば2点、2点をとれば3点。どん欲にゴールを狙う姿勢。カウンターから失点しても「失点しても得点すればいいんだ」という意志。ペトロヴィッチ監督が「いつも攻撃的だったが、今日はさらに超攻撃的だったね」と笑顔を見せるほど、選手たちは今まで培ってきたものを実践し、そして大宮の堅陣を粉砕した。
ラファエルと東慶悟がいない大宮は、4-2-3-1の布陣を展開。古巣・広島を相手に燃える藤本主税をトップ下に置いた。「後半にパワーアップするため、石原直樹を(ベンチに)とっておきたかった」と大宮・鈴木淳監督。前半はしっかりとブロックを固めてモチベーションの高い広島をやりすごし、後半勝負の思惑だ。
だがそんな大宮のプランなど、広島には関係ない。ミキッチがいない右サイドでは森脇良太が激しい上下動を繰り返し、負傷のため先発できない森崎浩司不在の中盤では、トミッチが圧倒的な迫力を見せつける。11分、そのトミッチのパスから佐藤寿人が決定的なシュート。主導権を握ったのは広島だ。
ただ、大宮のカウンターがはまりそうなシーンもあった。21分、佐藤からボールを奪い、森崎和幸が攻撃参加した右サイドのスペースを李天秀が鋭くつく。西川と1対1か。だがここでトミッチが186センチの巨体を猛然と揺らして戻り、スーパークリア!今季限りでクラブを離れる大型ボランチが、決壊を防いだ。
そして彼は再び、大仕事を見せる。41分、ペナルティアーク付近でのFK。佐藤のアドバイスどおり壁の下を狙ったトミッチの鋭いボールは、ジャンプした壁の下を通ってネットに収まった。
J初得点を決めたトミッチが猛然とベンチに走り、指揮官と抱擁。そのヒーローを佐藤が呼び寄せ、ベンチ入りメンバーも含めた選手全員、さらにコーチングスタッフもベンチ前に飛び出し、過去最高人数を誇る弓矢パフォーマンス。その中心には、なんとペトロヴィッチ監督まで参加していた。過去、様々なゴールパフォーマンスを見てきたが、指揮官が参加した「作品」など見たことがない。
さらにアディショナルタイム、佐藤の右からの突破。入れ替わられた片岡が後ろからつかんでPK。エースが見せたキレキレのドリブルが、41分のシーン同様に片岡に警告を与え、退場に追い込んだ。8年連続二桁得点(J2含む)を達成した佐藤が切り掛かる選手たちをなで切り、逃げる中島を弓でしとめる過去の「名作パフォーマンス」のアレンジ。自由でおおらかな広島カラーを、存分に発揮した。
ただ56分、藤本のスルーパスを金沢慎が流し込み、大宮が1点を返す。今季、3点差を逆転された経験を持つ広島だけに、サポーターにも不安がよぎった。だが、選手たちは決して下を向かない。64分、前半から何度も決定機をつくっていた青山敏弘からのスルーパス。佐藤が反転。DFが対応したこぼれを李忠成が落ち着いて決めた。さらに青山は、71分にトミッチのスルーパスからゴール前に抜け出し、自分を「発見」してくれた指揮官に捧げる得点を決めた。3点差をつけているのにさらに攻撃を仕掛け、カウンターから失点するのもこのチームらしさ。もう1度、書いておこう。「THIS IS SANFRECCE FESTIVAL」と。
大宮が悔やまれるのは、前半40分まで我慢できていたにも関わらず、佐藤の仕掛けに片岡が耐えきれず警告を重ねて退場、そこから2点を失ってしまったことだ。0-1で前半を終えていれば、試合展開はどうなっていたか。だが、完敗した現実をしっかりと受け止め、最終戦のホームゲームではサポーターの期待に応えねばならない。

「サヨナラは言いません。また会いましょう」
涙を流しながら言葉を絞り出したミハイロ・ペトロヴィッチに、「ミシャ!ミシャ!」とサポーターから何度もコールが飛び交う。さらに服部公太・盛田剛平・高柳一誠・ムジリ・トミッチと、クラブ史上初めて契約満了選手全員が別れの挨拶を行うセレモニーに、数多くのサポーターが目を赤くする。「ありがとう、ミシャ」と書かれたTシャツを着た選手たちによる監督と契約満了選手たちの胴上げ。日本中に誇れる楽しさ、美しさ、伸びやかさ、気持ちの暖かさ。これが、サンフレッチェ広島だ。
5年前の12月8日、J2降格が決定した時は怒号に包まれた広島ビッグアーチ。あの屈辱の夜と同じくらい、昨夜の空気も冷たかったはずだ。だが、何故だろう。気持ちの内側から熱が吹き出し、ちっとも寒くはなかった。ただ、その暖かさの後に押し寄せる寂しさの波には、抗うことはできなかった。

以上

2011.11.27 Reported by 中野和也
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