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【J2:第37節 F東京 vs 千葉】レポート:用具係のヤマさんがシャーレを掲げた日!F東京が千葉との根競べを制す。(11.11.27)

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11月26日(土) 2011 J2リーグ戦 第37節
F東京 1 - 0 千葉 (17:34/味スタ/24,241人)
得点者:77' ルーカス(F東京)
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試合後、選手たちは、代わる代わるシャーレを回してサポーターの前で掲げた。だが、誰よりも真っ先にその大役を任されたのは今年“も”夜を徹して作業を続けていた、用具係だった。

今季のJ2王者となったF東京は、味の素スタジアムで千葉と対戦し、1−0で凱旋試合を勝利で飾った。77分に、ルーカスが決勝点を挙げて試合を決めた。試合後は、ファン、サポーターに優勝を報告。今季限りで退任する大熊清監督や、選手たちの笑顔が、ホーム最終戦を彩った。千葉は粘り強く戦ったが、ゴールは遠かった。

千葉の重心は、試合開始から徐々に下がっていった。序盤は、最終ラインを高く設定し、F東京を押し返すことができていた。しかし、試合経過とともに、自陣での守備機会が多くなっていった。それでも。失点は水際で阻止していたが、一人退場者を出すと耐え切れず。終盤、FWロベルト セザーと、ルーカスによってゴールをこじ開けられてしまった。

立場を置き換えれば、2つの見方が存在するだろう。F東京側に立てば、開始からパスを回しつつ、その中に相手の背後を突く動きを組み込んだことが勝因となるはずだ。最終ラインのDF森重真人から、一発のパスで背後を射抜こうと、何本もパスが出ていた。また、MF田邉草民は、ボールを足元に収める以上に、背後へと抜け出す駆け引きを続ける時間が普段よりも増えていた。試合開始15分前後から特にそういったプレーが多くなっていった。ボール保持率を一時的に下げるものの、相手のラインを下げさせてパスを回すためのスペースを空けることに成功したと言える。結果、後半に入ると、相手は背後への危機感と、前半からパスで揺さぶられて運動量が落ちてラインを押し上げきれない場面が目立った。相手陣内に押し込むと、セザーとルーカスの高い個人技が光り、ゴールネットを揺らした。

逆に、千葉は、自分たちの時間が作れなかったことに敗因がある。彼らは、特長的なカウンターを持ったチームだ。しかし、カウンターにはやはり脆さがある。どうしても、受け身になってしまう戦術だ。相手が攻めてこなければ、その威力も半減してしまう。主体的に自分たちから仕掛けることなく、カウンター一辺倒ではやはり厳しい。「前半は、FC東京にボールを回される覚悟でやっていた」と、FW深井正樹。個々の頑張りや、守備の粘りは高く評価されるべきだろう。ただ、彼らは、他のJ2クラブと同じく、F東京の強さをはかる前に自分たちを過小評価し過ぎている印象を受けた。前回対戦では、オーロイの高さや、マークミリガンの飛び道具に隠れてしまったが、前線のモビリティを生かした攻撃は脅威だった。千葉は、自ら後半の状況を作り出してしまったという見方もできる。

粘り強くパスを回したF東京と、それを粘り強く凌いだ千葉。能動的に仕掛けたF東京と、受け身に回り続けた千葉との立場の違いが、根競べとなった試合結果にも影響した。

ただ、この日のメインイベントは試合後にあった。笑顔の優勝報告が始まる。誰もが、待ちわびたシャーレが手渡されると、ピッチの真ん中でキャプテン今野泰幸が誇らしく掲げた。そして、平松大志のマイクパフォーマンスに始まり、勇退する大熊清監督は、実直な言葉で「アジア、世界へ」と、サポーターに共闘を呼びかける。その後、選手、スタッフがスタジアムを一周し、ホーム側のゴール裏へとシャーレが運ばれていく。ゴール裏へと差し掛かったところで選手から手荒く促され、シャーレを持たされた人がいる。山川幸則ホペイロだ。彼は、戸惑いながらもサポーターの前に立たされると、照れくさそうに両手で銀の優勝プレートを掴んで高く掲げた。

山川ホペイロは、歴代の選手たちからも「ヤマちゃん」や、「ヤマさん」と呼ばれて慕われてきた。今年も、小平の日が落ちてクラブハウスの記者控え室の扉を開けると、いつも右側から明かりが漏れていた。ヤマさんは空色の洗面台に向かって黙々と作業をしている。照れ屋で前に出るのが苦手。でも、丁寧に用具をそろえ、スパイクを綺麗に磨いてきた。挨拶をすると、いつも気のいい返事を返してくれて、「今日は泊まりなんですよ」と、笑って話すヤマさんの姿を選手たちも見てきた。よりよい環境の中で試合に集中できたのは照れ屋な彼がいたからだ。普段は、舞台袖にいて舞台に上がることのない男にスポットライトが当たった。

確信犯的にヤマさんをサポーターの前に立たせたMF羽生直剛は試合後、「ホペイロのヤマさん(山川幸則)が最後にシャーレを掲げてくれた。僕らも、いつもお世話になっていて、何から何までやってくれている。そういう人が、カメラに映ったり、記事にしてもらえれば嬉しい。それが、今年、東京ファミリーとして戦えた証しでもある。どんどん色んな人をクローズアップしてください」と、喜びのコメントの中にその言葉を忍ばせた。

F東京にとって、ヤマさんは大切な人。選手の誰もがそれを知っている。こっぱずかしくて、改めて言えない感謝の言葉は、この日の少し手荒い抜擢からも伝わってくる。共犯者がいるから、楽しいことや、面白いことができるし、何かを目指せる。だから、F東京は少しだけ強くなれたのかもしれない。

以上

2011.11.27 Reported by 馬場康平
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