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数字上は降格の可能性が残っているとは言え、浦和は久々にプレッシャーから解放された状態で今季ホーム最終戦に臨める。山田直輝は五輪代表で柏の酒井宏樹に「レッズは残留が決まっていない方が固くなるからありがたい」と言われたことを明かしたが、仮に前節の試合を落としていたとしたら、酒井の言うようにとても平常心では戦えなかっただろう。
だが、実際には勝つことができた。そして重圧と戦わなければいけないのは柏となった。柏は悲願の初優勝を逃さないためには勝利が必須というプレッシャーを背負って戦わなければいけないが、極限の緊張感のなかで戦った経験のある選手がほとんどいない。さらに、真っ赤に染まった埼玉スタジアムは味方を奮い立たせ、敵を威圧する。「久しぶりにノビノビ楽しくやれると思う。優位になれる部分は使って試合ができれば」と山田直が言うように、浦和は地の利を生かして難敵を苦しめたい。
最終戦に向け、山田直、濱田水輝が五輪代表の活動から帰ってきたのも心強い。ただ、その一方で懸念されるのが1トップのポジションだ。このところずっとレギュラーを務めてきたエスクデロ セルヒオが福岡戦で太もも裏を痛めた影響により欠場濃厚なのは大きな痛手だ。彼が負傷交代した直後からリズムを失った福岡戦を見ても、その存在の大きさはわかるだろう。
エスクデロは現有戦力のなかでは最も1トップの適性が高い選手だ。シュート精度に課題を残すものの、敵に背中を向けた状態でのキープ力の高さと相手を吹き飛ばして突き進む重戦車のようなドリブルは“味方の時間を作る”のに非常に効果的だった。
そして、171cmと身長は決して高くないが、空中戦でもある程度戦える能力を持っている。当然、その身長なので純粋にジャンプでは勝てないが、エスクデロは相手をうまく飛ばせない技術を使って競り勝つことができる。漫画『スラムダンク』の桜木花道の得意技として有名になった「スクリーンアウト」と言えばイメージしやすいだろうか。エスクデロは背中で相手をブロックしながら落下点に入らせないのがうまい。時にはジャンプすることすら許さずに胸トラップでボールを収めるという芸当も見せる。
残されたFW陣のなかで、エスクデロと同じような形で1トップをこなせる選手は残念ながら見当たらない。それぞれに特徴を持った選手たちだが、1トップの典型的な仕事を得意とするタイプはいない。誰が出るにしても、エスクデロと全く同じ役割を求めるのは難しい。それよりも、それぞれの武器をどうやってチームにフィットさせるか、あるいは周りの味方がどうやってその特徴を引き出してあげるか、そういうアプローチをしていく方が有益だろう。代役候補としては田中達也の名が挙げられるが、同じく福岡戦のケガで出場が危ぶまれている。田中も欠場となった場合、原一樹がスタメンの最有力候補と見られる。
対戦相手の柏で最も警戒すべきはレアンドロ ドミンゲスとジョルジ ワグネルの強力外国人コンビになる。この2人が突出した攻撃センスを持っていることはもはや説明不要だろう。彼らに気持ち良くプレーさせないことが勝利の条件になる。「一対一よりも常に数的優位を作り、全員で守ってフリーでやらせないことが重要」と平川忠亮は話す。
だが、それは非常に難しいタスクでもある。柏と対戦するチームはみな、この2人をケアしようとしてきたはずだ。両外国人選手、とりわけレアンドロが攻撃の核となっているのは誰が見ても明かだ。しかし、注意していてもなかなか抑えられない。だから、柏は今の順位にいるのだ。
やっかいなのは、柏がコレクティブなカウンターを得意としていることだ。ボールを回して攻めることもできないわけではないが、速攻のキレ味はJ1でトップレベルにある。柏は組織として非常に訓練されており、攻守ともにポジション取りが洗練されていて、だからこそ切り替えが速くてスムーズなのだ。そして、その際に圧倒的な存在感を示すのがレアンドロだ。
レアンドロは味方が守備をしている際に前の方で“浮いている”ことがある。守備はするが、必要以上には下がらない(無論、状況に応じて守備に徹する時もある)。彼はそういうポジション取りをすることで攻守が切り替わった瞬間に味方からも敵からも“孤立”することを狙っており、スペースを一人で謳歌する。
だから柏のコレクティブなカウンターが発動した際に、レアンドロを数的優位な状況で見るのは難しく、ケアするのも簡単ではない。そして、その状況でレアンドロはこれまで何回も決定的な仕事をこなしてきた。柏にそういうシーンを作られたら、どのチームでも抑えるのは厳しい。
浦和が注意すべきは自分たちがボールをつなぐ際に中盤で不用意に奪われないこと。ロストするなら前線のラインで勝負した時か、大きく蹴り出した時に限定しないと痛い目にあうだろう。浦和はボールポゼッションを高めて主導権を握るサッカーを志向しているが、中途半端な形でボールを失うことだけは避けたい。
「目の前で優勝を喜ぶ姿は見たくない」。平川の思いは、チームメート、スタッフ、そしてサポーターの総意だろう。ホームラストマッチを勝利で飾り、最後は笑って閉幕を迎えたい。あるいは、この試合に浦和が勝ち、それでも柏が頂点に立ったのなら、その際には1年の勝者を素直に称えたい。
以上
2011.12.01 Reported by 神谷正明













