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【AFCチャンピオンズリーグ2012 柏 vs 広州】レポート:グループ2位と3位の直接対決は勝点1を分け合うスコアレスドロー。柏は攻撃面に課題を残すも、依然としてグループ2位の座はキープ(12.04.05)

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序盤の広州の攻撃には怒涛の迫力があった。クレオ、ムリキ、ダリオ コンカの外国籍選手は3人とも高いテクニックを有し、右サイドのガオ リンを含め、ボールが収まり、前線の高い位置で起点を作れる。彼らによる一連の攻撃は、まるで試合前日の暴風雨のごとく柏に襲いかかり、さらにセカンドボールを広州が支配したため、柏がクリアしても立て続けに攻撃を繰り返す。試合開始から15分過ぎまで、柏は防戦を強いられた。

「ムリキやコンカへのマークをハッキリして、徐々にうちのペースに持っていけた」。栗澤僚一はそう振り返る。クレオには近藤直也と増嶋竜也、ムリキには酒井宏樹、ガオ リンには福井諒司、そしてトップ下のコンカには大谷秀和と栗澤と、それぞれキーマンに対しタイトなディフェンスを行うことで、徐々に守備が安定していく。しかも広州の左サイドに張るムリキは守備には戻らないため、レアンドロ ドミンゲスはフリーの状態が多くなる。そこに田中順也が絡む、あるいはムリキへのマーキングによって回数こそ多くなかったものの、酒井がオーバーラップを仕掛けて右サイドに厚みを加えると、高い位置を突破してようやく柏もチャンスを生み出した。

しかし、さすがは中国王者の広州。後半に入ると、その綻びをしっかりと修正し、柏の攻撃に対応した。左右のアタッカーを入れ替え、ガオ リンがマンマークのような形でレアンドロに密着。前半ほどレアンドロがフリーでプレーする機会がなくなり、前半から通じて2トップにボールが収まらず、高い位置でタメや起点が作れない柏は、守備意識の高まった広州のブロック攻略に手を焼いた。

守備的になったとはいえ、広州は前線の外国籍選手の迫力は相変わらず。フィールドプレーヤー7人で守り、攻撃に人数はかけないがコンカ、ムリキ、クレオの3人による怒涛のカウンターには、柏の守備ラインを押し込むのには十分過ぎる破壊力を備えていた。アタッキングサードでワンツーなどを駆使したテンポの良い攻撃を奏で、ペナルティエリア内で前を向いてシュートを放つという柏にとっては目を覆いたくなるようなシーンも何度か訪れたが、絶体絶命と思われたピンチは近藤、増嶋、大谷らが体を張って死守した。
広州が柏の右サイドへの警戒を強めたことにより、逆にジョルジ ワグネルと福井の左サイドへの対応は緩くなり、後半の柏は左サイドからの攻撃頻度が増加。しかしジョルジと福井の連携で左サイドを突破して、クロスを上げるというシーンは増えたのだが、ゴール前には工藤壮人1人と枚数的に足りていない状況が多く、「中に人がいない場面で上げても、ピンポイントじゃないと得点にはなりにくい」(大谷)と、その言葉が示す通り、クロスは相手DFに弾き返されるか、ゴール前を大きく越えてしまい、日立台に詰めかけた約1500人の広州サポーターの声援が沸き上がるのみ。そこで65分には、「ボールを受けてリンクマンとして働いてもらう」(ネルシーニョ監督)という意図から田中に代えて茨田陽生を投入し、システムを4−2−3−1へ変更。さらに指揮官は、73分にリカルド ロボをピッチに送り込んだ。

ラスト15分間は、柏の攻撃が活性化する。ロボはクサビの縦パスを収めてサイドにさばくか、あるいはDFラインの動きを見てオフサイドに掛からず裏へ抜け出すなど、この日の前線に足りていなかった動きを見せ、また茨田も潤滑油としての役割を果たし、パスの流れをスムーズにした。81分、ジョルジのシュート気味のグラウンダークロスにロボが飛び込んだシーン、87分にペナルティエリア内で福井がシュートを狙ったシーン、この2つがこの試合で日立台が大いに沸いた場面だった。だが、どちらも得点には至らず、試合はスコアレスドローに終わる。

先日のJ1第4節の磐田戦もそうだったように、2トップにはもっと工夫した攻撃を求めたい。クサビの縦パスを入れても、前線で収まらないため、逆に奪われてカウンターの餌食となる。また、裏へのパスに対しても、DFとの駆け引きがなく、飛び出しは全てオフサイドの判定に。2トップに“ゴールの気配”を全く感じられなかった点は、AFCチャンピオンズリーグに限らず、Jリーグの試合を含めて、柏にまとわりつく大きな難問だ。広州戦に限って言えば、前半は相手がレアンドロを放してくれる場面も多く、そこをうまく活用できていれば打開策は見出せたはずである。
ただ、大谷と増嶋が試合後に話していた通り、ちばぎんカップ以来の無失点は評価に値する。広州の強力攻撃陣の圧力にさらされた苦しい時間帯でも、守備陣が体を張って失点を防ぐ場面などは、昨シーズンの良い頃の戦いぶりを彷彿とさせた。だからこそ、攻撃面の課題さえクリアできれば、柏は上昇気流に乗れると思うのだが。
中国メディアも、広州の前線の選手たちがブリーラム戦に続いて無得点に終わったことに懸念を抱いているようだから、ネルシーニョ監督の「勝点2を落としたのではなく、両チームが勝点1を勝ち取って、グループリーグ突破の可能性を残した」という言葉が、このスコアレスドローの意味を的確に表しているのかもしれない。何にせよ、グループ2位と3位の直接対決の決着は、4月17日の再戦に持ち越しとなった。

以上


2012.04.05 Reported by 鈴木潤
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