名古屋の快進撃がいよいよ始まる。そう予感させるに十分なパフォーマンスだった。4日前のAFCチャンピオンズリーグ・天津泰達戦における名古屋は本領発揮といえるアグレッシブかつ落ち着いた試合運びで中国リーグの難敵を一蹴。シーズン開幕から調整不足の感を漂わせていたチームに、活力と迫力が戻ってきたことを知らしめた。帰国してすぐに迎えるホームゲームの相手は今季J1初昇格にして、現在5位と好調の鳥栖。かつては苦手としていた“初物”との対戦だが、何ら心配の種がないほどにチームは充実している。
その一因として選手のコンディションの良さが挙げられる。Jクラブで最も遅く始動した影響か、開幕戦を迎えても名古屋のコンディションは十分といえない状態が続いていた。しかしリーグ4試合、ACL3試合を消化したいま、選手たちのフィジカルは確実にフィットしてきている。その間の成績も悪くなかったことも踏まえると、公式戦すら調整の場として使ったかのようなストイコビッチ監督のチームマネジメントには驚くばかり。持病の腰痛を悪化させ、中国遠征を回避した田中マルクス闘莉王の状態は気がかりだが、この週末に合わせて大事を取った感が強い。開幕戦で負傷した中村直志の復帰も予想される今節は、ついに主力のフルメンバーが揃う可能性も出てきた。
鳥栖もまた充実のチームだ。ここまでリーグ4戦で2勝1敗1分と勝ち星を先行させており、昇格組が最初にぶつかる勝点獲得という壁をすでに越えている。それどころか前に出る守備と縦に速い攻撃で能動的な試合展開に持ち込む強さも見せており、神戸とのリーグ4節では3得点を挙げるなど決定力という点でも申し分はない。古巣対決となるエースの豊田陽平と、前線でコンビを組む池田圭は高い身体能力をJ1でも発揮し、それぞれ2得点、1得点と結果も上々。彼らを筆頭にアグレッシブなボールへのアプローチが尹晶煥監督のサッカーの最大の特徴である。動きを止めることなく前に出続ける果敢なスタイルは、アウェイでも変えることはないだろう。
試合は互いのアグレッシブな守備がひとつの焦点になってくる。名古屋が天津で見せたハイパフォーマンスの軸となっていたのは、奇しくも鳥栖同様の激しいプレッシングだった。永井謙佑、金崎夢生、ダニルソンというJ屈指の俊足を誇る選手たちがボールを追い回し、奪ってはカウンターに持ち込み、奪えなくても相手のミスを誘って味方のボール奪取につなげた。相手の自由を奪うアグレッシブなサッカーは、いまだ本調子とならないケネディのプレーを補ってあまりある効果を発揮。玉田圭司と藤本淳吾のゲームメイクがそこに加わった時、実にスピード感あふれる魅力的な攻撃が展開されることになった。同じスタイルのぶつかり合いになれば、個人能力に勝る名古屋が優位である。
そうなれば鳥栖が光を見出したいのは豊田の空中戦だろうが、ここもやや分が悪い。俊足で空中戦にも強い豊田がロングボールを確保あるいは少なくとも触ることで、鳥栖は攻撃の足がかりを作ってきた。しかし今回の相手は田中マルクス闘莉王と増川隆洋である。Jの制空権を握る屈強のDFたちに対し、競り勝てる確率は下がるだろう。競り負ければ名古屋の多重攻撃にさらされることになり、布陣は押し込まれる。その時、鳥栖が名古屋のプレッシャーにどこまで耐えきれるかは未知数だ。
優勝候補と昇格組の対戦だけに、優位に立つと予想されるのはやはり名古屋だ。その下馬評が現実になるか、ひっくり返されるかは、サッカーの根源であるボールの奪い合いである。名古屋と鳥栖の選手が繰り広げる熾烈な争いが、この一戦における最大の見どころとなる。
以上
2012.04.06 Reported by 今井雄一朗
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