前節、町田を下して勝点を13に伸ばした東京Vだが、その内容は決して芳しくなかった。特に前半に関しては「教訓にもしたくない」と、試合後の会見の席で川勝良一監督がバッサリと切り捨てたほどだった。一番の原因として、同監督は「パスを回してくるのを知っているので、ウチとやる相手はパスが出る前にボールを奪おうと足元を狙って激しくくる。そこで、少し長いボールを使う場合もあっても良いが、それがあまりにも多くて中盤を省く形となってしまった。」と語る。「そんなに激しいプレスが90分間続けられるはずはない。相手が間延びしてきたところで、もっと足元を使った形で崩していかないと」。その確認と整理を、今週のトレーニングでは特に念入りに行っていた。
ただ、今季の東京Vが違うのは、「今までだったらこういう試合を落としていたけど、勝点3にもっていけた(小林祐希)ところだろう。チームとして思い通りのサッカーができなくとも、“勝利”という結果を拾った中で行う課題修正の方が、より建設的であることは間違いない。前節の反省を、今節は内容としてもしっかり示したい。
鍵を握りそうなのが中盤、特にボランチだろう。今節は小林祐希のパートナーを和田拓也が務める模様だ。開幕戦がこのコンビだったことからもわかるように、実は、キャンプ時含め今季チーム作りの段階から最も長く組んでいたのが、このダブルボランチだった。当初から川勝良一監督も「2人は相性が良い」と語っており、積み上げてきた信頼関係とあわせ息はピッタリだろう。
また、今節の相手が徳島だということも踏まえ、GK柴崎貴広もキーパーソンとして和田の名を挙げる。「去年までの徳島は繋いでくるイメージがあったけど、今季は監督が代わって、まず前線にボールを入れて、そこからどう展開するかという印象があるので、今節はいつも以上にセカンドボールがすごく大事になると思います。そういう意味では、ボランチに拓也が入るのは大きい。元々ボールを奪うのが上手いし、何よりもスピードがあるので、こぼれたボールに対しても素早く寄っていけるから、それだけ拾える確率が高くなる」。
前節も、セカンドボールの多くを渡したことが町田に主導権を握られた原因のひとつでもあった。柴崎の語る通り、和田に限らず、この試合はセカンドボールをいかに制すかが大きなテーマとなりそうだ。
もうひとつ、東京Vのサポーターにとって非常に楽しみなのが、新戦力の杉本健勇ではないだろうか。加入後わずか5日で迎えた前節・町田戦で後半から投入されると、さっそく阿部拓馬の先制点を演出。さらに決勝点となる移籍後初ゴールまで挙げてみせる鮮烈の東京Vデビューで、瞬く間に監督、チームメイト、サポーターの信頼とハートをがっつりと掴みとった。だが、杉本健本人は「結果は残しましたけど、大事なのは上位チームと対戦した時に何ができるかだと思います」と、さらに高いところを向く。東京Vはこの試合のあと、京都、湘南、福岡、山形と、J1昇格候補と目される強豪チームとの対戦が次々と続いている。「徳島も強豪の1つだと思いますし、そのあとに続いている昇格候補チームとのやった時に東京Vが勝つために何ができるかが問われると思っています」と、C大阪というJ1チームから武者修行に来た意義を強く意識し、自分へプレッシャーをかける。「前でキープしたり、シュートまでもっていく。自分のやるべきことはしっかりとわかっています。守備でももっと貢献したい」今後約3ヶ月、東京V・杉本健勇として、全力でJ1昇格に貢献することを誓った。
「多少雑に入れてもなんとかしてくれる」と、指揮官も全幅の信頼を置くほどボールがおさまる杉本健が最前戦にいることで、ボランチ含めた中盤、サイドバックは安心して上がれるだろう。そこで、攻撃に厚みをかけられるかがポイントとなるのではないだろうか。とはいえ、「そこに頼って何でもかんでも放りこむのは、ウチが目指していることではない」と、川勝監督。スタイルとするテンポ良いパスワークでの崩しといかにバランス良く使い分けられるか。杉本健には足元の上手さも兼ね備わっているだけに、楽しみなところである。
徳島は、開幕2連勝を果たすも、その後4試合勝ち星なしの状況で今節を迎える。とはいえ、前節の岡山戦では逆転負けを喫するも、前々節・千葉戦で課題として出た「プレスのかけ方だったりスライドの仕方だったりについては、正直言って45分は満足しています」(小林伸二監督)など、目に見えた進歩があるのも事実のようだ。元々、開幕前から小林監督は「メンバーも大幅に変わっているから、まずは個のレベルを把握した上でシーズン通してどういう表現をするのかを導き出したい」と語り、内容と結果がともなうためには多少の時間がかかることを示唆していたことを思えば、結果はもちろん大事だが、課題をクリアさせていくこともまた重要なところと言えるのではないだろうか。
その視点から今節は、前節の敗因となった「状況判断」に着目してみたい。小林監督もアプローチに関して「きちっと出来ている」と及第点を与えているだけに、あとは、「勝気に奪いに行くか行かないか」の判断。「行って外された場合に次のところで誰かに取ってもらう」という、“チーム”としてやるべきプレーの判断力が問われそうだ。
指揮官としては、手応えを感じ始めていただけに、「球際が上手い東京V」に対してベストメンバーで挑みたかったところだろうが、鈴木達也、濱田武の主力2人を出場停止で欠かなければいけないのは非常に残念と言えよう。それでも、「シンプルに付けて走ったりというところをベースに」という、ようやく見え始めたヴィジョンを確かなものにするために、「選手も個人じゃなくてチームでやってるんだよ」(小林監督)の点で改善が見られるのか、注目したい。
以上
2012.04.07 Reported by 上岡真里江
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