開始2分の得点は、最下位に沈む苦境からの浮上を意味する、歓喜のゴールだった。しかし、それはあまりに甘美なものだったようだ。3分、5分に立て続けに失点すると、相手の攻撃に翻弄されてしまう。終わってみれば1-3の敗戦。ホーム・カシマスタジアムでは2007年4月29日以来となる勝利を、浦和にプレゼントすることとなった。
試合の入りは、これ以上ないものだった。前節に梅鉢貴秀を抜擢したジョルジーニョ監督は、怪我の柴崎岳の代わりに、彼ら二人と同じ2年目の19歳・土居聖真を起用する。今季から加入した山村和也を合わせると、出場試合数が三桁を越える小笠原満男や曽ヶ端準、新井場徹らに加わって、3人もの選手が一桁の出場数というフレッシュな顔ぶれが揃った。そのなかで、右サイドの深い位置に侵入した梅鉢から逆サイドへクロスが入ると、DFの背後に回り込んだ興梠慎三がヘディングで流し込み、開始わずか2分であっさりとゴールが生まれる。鹿島にとっては喉から手が出るほど欲しかった、今季リーグ戦初得点。ゴールを決めた興梠を中心に歓喜の輪ができた。
しかし、この日の主役は鹿島の選手ではなかった。攻めの時は[4-1-4-1]、守りの時は[5-4-1]と、二つの形を使い分けるペトロヴィッチ監督に率いられた浦和の選手たちが、一気に鹿島のゴールに襲いかかる。鹿島の選手たちが先制点に浮き足立ったのか、不思議なほど高い位置からプレスに行くとそれをいなし、ボールを持った柏木陽介が反転するとすぐにゴール前のスペースへパスを出す。そこに走り込んだのはマルシオ・リシャルデス。完全なフリーでゴール前に侵入し、難無く同点に追い付いて見せた。鹿島の先制点からわずか1分後の出来事だった。そして、5分には、中盤でルーズボールを確保した阿部勇樹がパスをはたいた後、そのままの勢いでゴール前に出ていくと、鹿島の選手は誰もその動きに対応できない。柏木、阿部とパスが渡ると次々にDFがはがされ、ゴール前のポポがまたしてもフリーでシュート。あっという間に逆転して見せた。
その後も、相手の鋭い飛び出しに鹿島の選手たちは対応できない。5人が前線に並ぶ浦和に対し、最終ラインには4人しかいないため、常に枚数が足りない状態だった。ラインを下げてスペースを消すやり方もあっただろうが、ジョルジーニョ監督は高い位置からのプレスを選択。しかし、そこは相手が一枚上手。プレスでボールを奪う回数は少なく、奪っても若い攻撃陣が焦ってしまい、チャンスを潰していた。
そして、25分にも同じような形でマルシオ・リシャルデスにゴール前に飛び込まれ、慌てて対応した新井場が足をかけてしまう。倒したのはペナルティエリアの外に見えたが、木村博之主審の判定はPK。これをマルシオが自ら決め、浦和が1-3とリードを広げた。鹿島も前半の終わり際に反撃。大迫勇也と興梠慎三が次々と得点機を迎えるも、3つの決定機はいずれも枠外だった。
後半になると、前半から猛烈に飛ばした浦和の選手の足も止まり始めた。62分には大迫がゴールネットを揺らしたが、直前のプレーで槙野智章を倒したということでノーゴール。ジョルジーニョ監督はジュニーニョ、ドゥトラ、アレックスといった3人のブラジル人を随時投入し反撃を試みたが、浦和のペトロヴィッチも濱田水輝を中盤に入れて守備の安定を図る。結局、スコアは動かず1-3で浦和が勝利を手にした。
鹿島にとってはいまだリーグ戦で勝利がない厳しい状況が続く。しかし、ジョルジーニョ監督はその苦しさから逃げてはいけないと言った。
「苦しい時期、あるいは負けている時に一番手っ取り早いのは、諦めることです。あるいは誰かに責任を押しつけることが簡単であり、楽な逃げ道です一番下にいるので、あとは上がるしかありません。日々、一生懸命、辛抱強く、努力し続ける。それしかありません。それをやり続けることによって上に行くしか方法はないので、選手と一緒に努力し続けたいと思います」
茨の道を抜け出すには、自らの手で切り拓くしかない。
以上
2012.04.08 Reported by 田中滋













